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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第十七章 イネイを救うために
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プロローグ ことの始まり

 八月。フォニックスたちは、任務に行っていた。夏休み真っ只中のツーハは、すっかりお気に入りとなった『狭間の世界』シリーズをイネイに読み聞かせしてもらっていた。

「えー、もうはんぶん?」

「はい。それでは、宿題をしましょうか」

「ぶう」

抵抗も虚しく、ツーハ嬢はテーブルへと引きずられていった。嫌そうな顔をしながらも、宿題をしようとした、その時。爆発の音が聞こえ、壁が破壊された。

「誰だ!」

その爆発を起こしたであろう人物は、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

「こんにちは。私はミレイと申します。ブラックスの幹部として、イネイ様を頂きに上がりました」

その笑顔の中に恐ろしさを感じ、イネイさんは後退りした。

「そうやすやすとわたすものか!シャイニングスター!」

しかし、指先だけで粉々に砕かれた。そして、ツーハ嬢を蹴り飛ばした。

「あら、強さは威勢だけのものね。ねえ、どっちがいい?このまま私の足技の餌食になって散々痛めつけられて死ぬか、イネイさんを大人しく渡すか」

ツーハ嬢が怯えているのが分かった。俺はツーハ嬢の前に出て、恐怖を必死で抑えた。

「おい、俺がまだ残ってる。俺と戦え!」

「馬鹿ね。そのまま黙ってたら、見過ごしてあげたのに」

分身を大量に作ったが、次々に消されていき、本体だけになった。

「弱さは悪よ。守りたいものを守れない。その体を無闇に傷つける。自分の弱さを、痛みと共に味わっていなさい」

強烈な足技に、壁に打ち付けられてそのまま動けなかった。

「それじゃ、イネイさんは頂いていくわ。生きていられるだけ、ありがたく思いなさい」

「きゃっ…」

イネイさんの抵抗も虚しく、気絶させられてしまい、そのまま連れ去られてしまった。


 「…ウ、コウ、コウ」

名前を呼ぶ声によって気がついた。どうやら、あのまま気絶していたようだ。目を開けると、ライトの顔があった。

「ライ…イテッ」

「無理すんなって」

「すまん、守れなかった。俺がもう少し強かったら、お前たちが帰って来るまでの時間くらいは稼げたかもしれないのに…」

「過去の事より、未来のことだ。ひとまず、イネイがどこに連れ去られたのか調べるぞ。コウ、お前はエントに運んでもらって病院に行け。俺たちが絶対連れ戻すから」

「ああ。頼んだぞ」

頭の中では、ずっと『弱さは悪よ。守りたいものを守れない』というミレイの声が、繰り返されていた。


 「イネイがどこに連れ去られたのか調べるために、妖気探知機を借りてきたぞ!」

「ありがとう、エント。ツーハ、イネイがいつもいそうな所ってどこだ?」

「図書しつとか?」

ツーハは、幸い大したダメージはなかったので、病院に行かなくて済んだ。ツーハの助言通り、図書室で探知機を作動させると、ツーハのとは別に、残っていたイネイの妖気を感じ取ることができた。その現在地を調べると、狼の国の街の外れにいることが分かった。少々遠いので、ギルド様に瞬間移動させてもらうことにした。ツーハ曰く、敵の特徴はミレイという足技がすごい女だそうだ。俺たちは、イネイ救出のために出かけた。

「ここに、そいつがいるんだな。だけど、きっと他の奴らもいるから、気が抜けないな」

到着後、俺たちは大きな建物を見つけた。迷っていても仕方ないと思い、そっと入ることにした。スインに透明にしてもらいながら、見張りの目を潜り抜けて進んでいくと、最上階にたどり着いた。その部屋の中心のベットにイネイが眠っているのを見つけた。その側にミレイと思われる女が立っていた。ミレイは、こちらの方を向いて、

「それで隠れられてると思ってるの?見張りの目は騙せても、私は騙せないわよ」

なぜバレたのかわからないが、大人しく出て、ミレイを睨んだ。

「そんなに怖い顔しなくたっていいじゃない。この娘は可愛がってあげるし。もし邪魔するって言うなら、私の足技の餌食になるわよ。って言っても、諦めそうにはないわね。いいわ。楽しい時間にしましょ。さっきの草狐よりは、強いだろうしね」

1人で一通り話した後、ミレイは楽しそうな笑みを浮かべて、エントを襲った。エントは蹴りをなんとか防いだが、かなりギリギリだった。

「バラバラじゃだめだ!協力して相手の攻撃を防ぐぞ!」

ミレイはその勢いに乗ってソウマを攻撃した。ソウマは案の定受け止め、耐え切った。

「いいじゃない。もっと遊んであげるわ」

ミレイの猛攻に、ソウマは倒れたが、また立とうとした時に攻撃をし、目だけがそちらを向いているソウマは面白そうに見ていた。

「私、こういう粘り強い子好きよ。たくさん遊びに付き合ってくれるもの。当然、まだまだ行くわよ」

もはや、血に飢えた怪物がいると思った。その目からは人殺しの戸惑いは感じられず、むしろ楽しんでいるように見えてしまう。このままでは、全滅してしまうことも十分にあり得るだろう。だが、イネイ救出のために、負けるわけにはいかない。


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