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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第十五章 謎に包まれた狙撃手
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第四部 雨の中で

 俺も戦おうかと思ったが、スインの真剣な表情を見て、何も言えなかった。スインはふっと消えて、フェルクを惑わせ、強力な遠距離攻撃を当てた。フェルクも負けじと攻撃の方向からスインの位置を予測して、攻撃をしていた。だが、その様子は機械的で、心苦しさに見ていられなかった。スインもフェルクの限界が来る前に倒さなければならないと理解しているらしく、攻撃はいつもより激しかった。フェルクが体勢を崩した瞬間、スインは姿を現し、至近距離から攻撃を放った。倒し切れたように見えたが、いくら攻撃しても痛がる素振りも見せないため、隙が生まれにくく、体が壊れない限り何度でも立ち上がって来る。俺はどうしようかと頭を抱えた。


 時同じくして、とある研究所。研究者とボスは、フェルクに付いているカメラを通して戦況を確認していた。

「奴も操ってこちらに引き入れ、あの炎狐を消しますか?このままでは10番が先に壊れます。彼の力はまだまだ引き出せそうなので、もったいない気がしますが」

「いや、このまま見守る。奴の今の実力を見られる好機であるし、もし奴の仲間が10番を保護した場合、その近辺を調べさせることもできる」

「承知致しました」


 どんどん負傷していくフェルクを見ていると、結局誰も守れていない気がして、自分の非力さを恨みたかった。そんなことをしたって、フェルクが止まる訳がない。優勢だった戦況も自身を顧みないフェルクの攻撃に押されて、徐々に厳しくなって来ているのも確かだ。スインは、ダメージのためか姿を見せてしまっている。フェルクはスイン近づき、近接攻撃をしようとし、スインは成す術もないかに思えたが、スインは反射的にフェルクを蹴り、想像より遥かに遠くまで蹴り飛ばした。本人も予想外だったようで、驚いたように自分のしたことを見ていた。フェルクはそれでも立ち上がり、再び攻撃を始めようとしたが、そんなフェルクをスインは抑え込むように抱きしめた。俺もかなり驚いたが、正気のなかったフェルクでさえ、一瞬元の雰囲気に戻って驚いたような表情を見せた。しかし、それは本当に一瞬の出来事で、すぐに戻って攻撃を仕掛けようとしたが、スインはその手を掴んだ。

「もうやめよに、こんなこと。操られとるだけなら、罪はないし、気をしっかり持てば正気を取り戻せるはずや」

フェルクは、計算すれば18歳、俺の1つ下だ。きっと、操られていても自分で元に戻れるはずだ。だが、伯父を亡くし、親にも中々会えなかったフェルクは、孤独だっただろうから、そこまでの気持ちを持てるかどうか心配ではあるが。スインはすべて知っていると言っていたが、もしそのままだった場合、スインはノーガードで攻撃を受けてしまう。

「大丈夫や。あんたは1人やない。いとこのエント君もここにおるし、私が一緒やから。フェルク君は、自分の必要性を信じて、操作に打ち勝って」

フェルクは、泣いていた。おそらく、自分のような身近な人ではなく、スインのような赤の他人に存在を肯定してもらったことで、自分の存在意義を冷静に理解することができたのだろう。やがて、フェルクの目に光が戻り、そのまま倒れ込んで眠った。スインはフェルクを重たそうにおんぶしていたので、変わろうとしたが、

「大丈夫や。私、自分より年下の子が可愛くて仕方ないんよ。あかんな、可愛いなんて言っとったら本人に怒られるし、まるで近所のおばちゃんや」

今になって自分がさっきまでやっていたことを自覚したようで、いつもより口数が多くなっているような気がする。スインはフォニックスの中では最年長なので、世話焼きになったのもあるのかもしれない。

「エント君、早よしやんと追っ手が来るで。風邪もひくし」

気がつくと、後ろをゆっくり歩いていたはずのスインが前を歩いている。雨はまだ降っており、全員びしょ濡れだ。

「分かってる。でも、どうやって降りるんだ?ここがどこかわからないし」

「それは大丈夫や。頼んどいたし」

左を向くと、鳥たちが飛んでいた。

「まさかとは思うけど、こいつらに乗る訳じゃないよな?」

「残念やけど、鳥さんに乗せてもらうで」

スインはもう乗ろうとしていた。俺も決死の覚悟で乗り込んだ。鳥の乗り心地は決していいものとは言えないが、思ったよりも早く本拠地に着いた。

「エン兄、さらわれたってライ兄が言ってたけど、ほんと?」

「まあな、そうそう、紹介するな、いとこのフェルクだ」

俺はまだ夢の中のフェルクを指差した。

「いとこおひるねしてるの?」

「うーん、まあ、そんな所だ」

「フェルク?一体どこで会ったんだ?」

「それは後で話すから、今はゆっくり寝かしておいてくれ、兄者」

「姉さん!びしょ濡れじゃん!ほら!早く着替えて!」

「今やるから、アイン」

スインは着替えを持って自分の部屋へ行ったので、俺もそうすることにした。

「もう運動しないし、ジャージでいいよな」

と独り言を呟いていたら、背後で何かが割れた音がした。


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