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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第十四章 やりすぎなイタズラ
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第三部 もう一つの任務

 イネイに電話したら、即座に行くと言ってくれた。しかも、明日にだ。どうやら、穀物屋敷での生活は窮屈なものだったらしい。上の許可ももらったと言っていた。ツーハのお手柄によって、テルルは落ち着いたものの、帰ってみるとどこかに行ったはずのギルド様がいた。昼飯を食べ終わった時、

「もう午後ですが、三時間もあれば終わるので、もう一つの任務をお願いします」

と言って紙を渡してきた。紙には、事細かな情報が書いてあり、草属性全員が集う会議で草狐たちを警護して欲しいというものだった。会議の開始時間は、午後2時30分で、今は1時30分だった。

「急ぐぞ!」

俺たちは必死になって走った。そういえば、ソウマはいないけど大丈夫なのだろうか。


 何とか間に合って、俺たちは草狐たちと合流した。しかし、草狐たちは思ったより少なかった。

「これだけですか?」

「ああ。とある遠縁の草狐に草属性全体の主の権利が与えられた。それが気に入らなかったのが本家の奴らだ。本家とは、純系の草属性のことだな。そして、俺たちは集中攻撃を受け、これだけの人数になってしまった。その時、主は行方をくらました。もう15年くらい前の話だがな。でも、新たな主の権利を持った者が現れないということは、どこかで生きながらえていらっしゃるのだろう。時が経ち、20年おきに行われる会議の日が来た。まだ私たちを面白く思わない者もいる。そこで、君たちに警護を依頼したというわけだ。フォニックス。やってくれるか?」

と1番強そうな人が言った。

「分かりました」

主の権利とは何か、聞きたかったが、そんな状況ではないと思い、質問を控えた。席に着くまでの道のりも、俺たち5人は警戒したが、何も起こらなかった。そのまま、会議が開始された。主が座るのだろう玉座は空いていて、やけに寂しく感じられた。会議中や出る時も気を張ったが、やはり何もなかった。

「何もなかったな。杞憂だったようだ。警護ご苦労だった」

「いやいや、俺たち何もしてな…」

突然、強烈な妖気を感じた。すると、20人程の部下を従えたヒョウの剣士が現れた。

「草狐たちよ。徹底的に滅ぼせとのご命令だ」

「なぜそこまでする」

さっきの人は、恐れることなくそう聞いた。

「分不相応なのだ。さっさと主を差し出せ。さもないと皆殺しにするぞ」

「主はこの場にはおらぬ。きっとどこかで細々と生きていることだろう」

「馬鹿な。あの包囲は完璧だったはずだ。逃げ出せる余地もなかった。どちらにせよ、分不相応なのには変わりない」

「分不相応ってなんだ!遠縁に主の座奪われてそんなに悔しいのか!本家さんよ!」

エントが勝手に野次を飛ばした。剣士の眉間に深い皺が出来た。

「お前らには関係ないことだろう。無駄な口出しはやめろ。お前たちまで殺されたくなければな」

「関係ありまくりだよ!俺の親友も草狐だ!お前らみたいな嫉妬野郎と違って、ソウマは俺たちのために体張ってくれるようなやつなんだよ!」

「ただの馬鹿ではないのか?そいつ」

何か言いたげなエントをフウワが止めた。

「いいか、エント。口で言ってもわからないのなら、拳で語るのみだ。でもな、相手はエリートだ。作戦通り、1人でやったりするなよ」

エントは複雑な表情を浮かべたが、何も言わなかった。俺たちが先月の戦いで学んだことは、連携が足りなかったことだ。俺たちは相談した立ち位置に立った。相手を取り囲むように、近さを少しずつ変えながら円を作るような形だ。近距離のフウワが1番近くに、遠距離のスインが1番遠くにと言った感じだ。ソウマがいないので、少々スインからの距離が近くなったが。剣士は背中に担いでいた剣を抜いた。部下もそれに続いた。合図は俺の雷でやることになっている。結構光るし、音も出るからわかりやすいという理由だ。みんなは得意な射程で攻撃を始めたが、剣から出る波動のような物で、俺たち近接組は中々近づけず、苦戦していた。でも、スインとアインがいいタイミングで技を出して援護してくれるので、ピンチになることはなかった。

「攻撃は最大の防御やで」

とスインが礼を言おうとした時に言ってくれた。普段おっとりしているスインから出る言葉とは思えないが、とりあえず参考にさせてもらった。まず、波動を攻撃で打ち消し、素早く間合いを詰めて、得意の近接攻撃を当てた。フウワは驚いたような表情でこちらを見て、良い物を見たと言わんばかりにもうその方法を使っていた。その時、スインがわざわざ姿を現して指を立ててやったね、という表情で見てくれていたのにも関わらず、戦いに夢中で気が付かなかったようだ。不意に後ろを向いた時に見たスインの複雑な表情を忘れられない。そして、部下たちは比較的落ち着いて倒せたが、問題は剣士である。こいつの波動は三分裂し、広範囲に及ぶのだ。だから、さらに近づきにくい上に、攻撃力もあるので、ちょっとやそっとの技では打ち消すことができなかった。

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