プロローグ フォニックス始動から一年!
四月の朝。ライトは今日だけは誰よりも早く飛び起きた。
「フォニックス、1周年だー!」
大きな声で叫び過ぎて、みんなも起きてしまったようだ。ライトが廊下に出ると、起き抜けのみんながいた。
「本当だ!」
エントとツーハ、アインが同じ反応をしたので、笑ってしまった。
「ほんまやなあ。あっという間やったわ」
「まさか、こんなに賑やかになるとは」
「僕は途中からだけどね」
スインとフウワ、ソウマが続けた。
「なんだ?朝から賑やかだな」
何も知らないコウが起きて来た。
「フォニックスが1しゅう年!」
「へえ、そうだったのか」
こんな朝早くに、俺のスマホが鳴った。電話に出ると、母からだった。
『ライト、おめでとう。ツーハとは仲良くしてるか?』
「ああ。賑やかに暮らしてる」
『お前は本当に似てるよ…。クーライに」
クーライは、ライトとエントの実の父だ。先の通り、父は戦死してしまい、母は光狐のテルスと再婚し、その子供がツーハとシャラトという訳だ。ツーハは唯一の娘だが、母自体男勝りの性格で、よく少年マンガのアニメを見ていたので、ツーハはこんな感じに育ってしまったようだ。父が亡くなったのは、5さいの頃だったはずだ。だが、はっきりと覚えている。自分と父が似ているのは意外だった。自分は母似であっけらかんとしているが、父は真面目な性格だった。
『お前、見た感じあっけらかんとしてるけど、本当は真面目だよ。場の空気を和やかにしようとしてるだけだ。エントとツーハをよろしくな』
そう言って、母は電話を切った。のんびり階段を下りていた時、勢いよく玄関のドアが開いた。急いで下りていくと、そこにはアルガがいた。アルガは肩で息をしながら、話し始めた。
「大変なんだ!俺たち3人は仲良く暮らしていたんだが、急に変な奴が押しかけて来て、フォニックスの本拠地を教えろ、さもないと明日はないとか言って来て、もちろん言わずに義姉さんたちが必死に足止めしてくれてるけど、時間の問題だと思う」
「分かった。案内してくれ」
すると、聞いていたのかみんながやって来た。
「にんむ?ツーハもいきたい!」
「いや、今回はやめてくれ。なんだか嫌な予感がする」
明日はないとかいう台詞を言うのはあいつしかいない。
「みんな。今回の敵は今までの奴らとは比べ物にならない程の強敵だ。それこそ、一丸になっても勝てるかどうか分からない程だ。だから、本気でいってほしい」
みんなは黙ってうなずいた。
「じゃあ、急ぐぞ。あいつの強さは圧倒的だ。あの2人が危ない」
俺たちは、大急ぎで現場に向かった。アルガたちの家は森の中にあり、こぢんまりとしていたが、3人で暮らしていくには問題ないようなサイズだった。それよりも、庭先に目が行った。レイナは気にもたれかかっていたが、チーナはまだ戦っていた。
「大丈夫?義姉さん!」
レイナはアルガに任せるとして、敵は予想通りだった。
「こういうのって宿命なのかな?」
やはり、目の前にいるのはトルキだった。奴こそが、俺たちの父、クーライを殺した相手だ。
「お前がクーライの息子か。自ら殺されに来るという愚かな所もそっくりだ。私は今、ブラックスの幹部になった。抗ってみろ、運命に」
「チーナは大丈夫なのか?」
「まだ戦えるわ。どっちにしろ、戦いから逃げたりなんかしない」
緊張が辺りを包んだ。一応、トルキの特殊能力、技封じについて話しておいた。技なんてとりあえず作ればいいと思うかもしれないが、自然に思いつく技名はその技のイメージを表しており、それが合わないとうまくいかない。クーライの敗因はそこにあると言っても過言ではないのだ。みんなが攻撃を始めたが、いなされたり、かわされたりした。本当に厄介な相手だ。トルキは辺りを見回し、レイナを岩で捕え、自分の方へと持って来た。
「こいつを渡してくれるんだったら、お前たちは見逃してやるが、どうする?」
「お前と交渉する気も無いし、仲間を見捨てたりしない」
「交渉決裂だ。残念だ。お前は父よりも筋が良かったのに」
ちっとも残念じゃなさそうにそう言った。そして、レイナを解放し、放り投げた。一瞬の内に、周りを岩で囲まれ、押し潰そうと迫って来た。
「ライト君!」
ソウマの救出により押し潰されずに済んだが、トルキはそれを見逃さず、空中にいたソウマの頭上に岩を降らせた。
「愚かな。仲間を救うために身を削り、結局仲間を心配させるとは」
ソウマを下敷きにした岩山はしばらく沈黙していたが、岩が勢いよく飛び散り、ソウマが出て来た。しかし、かなり無理をしているのが伝わって来た。
「まだ立ち上がるか…」
トルキはソウマの胸倉を素早く掴み、何度も殴り始めた。
「やめろ!」
必死に離させようとするも、あえなく弾かれてしまった。
「恨むなら己の非力さを恨め」
突然、エントが大技をぶつけた。トルキはその衝撃でソウマを放した。
「そっちは弟か。やはり馬鹿だな。正義というわけの分からんものに徹する意味も無い」
その口ぶりから、トルキの過去が垣間見えた。




