プロローグ 妹からの依頼
これからは一章ごとに一つの依頼を描いていきたいと思います。よろしくお願いいたしします。
次の日。私はドンドンと入り口のドアを叩く音を聞いた。今日は珍しくライトさんが早起きしていて、
「なんだ?はーい」
とドアを開けた。そこにいたのは、まだ幼く、背も低い、
…光狐。光狐を見ると、どうしても身構えてしまう。
「アイン、どうしたん?」
「姉さん…」
姉さんも、その光狐を見ると、険しい表情になった。
「誰かと思ったら、ツーハじゃないか」
「ライにい!」
「妹なのか?」
「ああ。父親は違うけどな」
ライトさんの妹なら大丈夫かもしれない。でも、どうしても“あの日”の事を思い出してしまう。
「ライにい、このひとたちだあれ?」
「俺の仲間だ」
「なかま!」
「あ。ツーハだ」
「エンにい!」
どうやら甘えん坊のようだ。エントさんに抱きいついていた。
「エンにい、あったかあい」
「もう春だぞ?ツーハ」
「まださむい」
「うそ言ってらあ」
と突き放すようなことを言っているが、どこか嬉しそうだった。
「で。ツーハ、今日は何しに来たんだ?」
とエントさんが聞いたが、ツーハちゃんはすやすやと眠っていた。
30分後。俺はツーハを起こした。
「ふああ」
「ツーハ。今日は何しに来たんだ?」
また同じ質問をした。
「あ。そうだった」
「忘れてたのかよ!」
「えへへ。じつは、きょういらいしにきた」
「依頼!?」
「ツーハすんでるとこのちかくのはなし」
ツーハの様な光狐は基本的に山の上にある“光屋敷”という所に住んでいる。しかし、勢力が二分しており、片方は猫の国と戦争をしているらしい。
「他のやつが何かしたのか?」
「いや、やさいどろぼうのはなし」
「野菜泥棒!?そんなの光屋敷のやつに何とかしてもらえばいいじゃん」
「いや。そいつひとすじなわでいかないらしい」
「そうなのか?」
「うん」
「どうする?みんな」
「私はいいぞ」
「困っている人がいるなら放って置けないし」
「じゃあ行くか…ってソウマいつの間にここに来た!」
「いつって…さっきからいたよ?」
やはりソウマは気配を消すのが得意らしい。“草狐”では珍しい特徴だ。
「ツーハ、お前はどうする?」
「ついてく!ツーハのいらいだし!」
「本当に大丈夫なのか?」
「ツーハ、もうすぐ6さい」
「そのかわり泣いても知らないぞ?」
「しつれいな!ツーハはなかん!」
「分かった。分かった。一緒に行ってもいいよ」
「やたー!」
こうして、ツーハから受けた不思議な依頼を受けることにした。しかし、なかなか手間取る依頼だということは、思いも寄らなかった。




