第二部 さらに向こうへ
爆発が収まり、目を開けると、獣はシールドで火の玉を防いでいた。だが、次に攻撃してくる気配はなかった。不思議に思っていると、獣が目線を合わせて来た。
『その強い思い、特殊能力の使い方。認めよう。技の使い手として。だが、これで終わりではない。自らの戦い方がまだないのだろう。だが、様々な者たちの戦い方を学び、取り入れていけば、自分の戦い方という物が出来上がってくるであろう。技を使うことは認めるが、もし、自分の戦い方が見つかったと思った時に、再びここに来るがいい。その技の真の力を教えてやる。この力は、先代も得られなかったものだ。それを得られるかどうかは、全てお主次第だ』
と言って、前足をかざした。すると、自分の体が一瞬光ったような気がした。
『約束通り、技を使えるようにしてやった。再び会うのを、楽しみにしているぞ』
急に強風が吹き、飛ばされた気がしたが、着地の痛みは感じず、目を開けると森の前にいた。
「なんか、不思議な感じ」
しばらく、自分の手を眺めながら座っていると、不意に後ろから妖気を感じた。
「誰だ!」
すると、目の前に煙幕が出て、収まると一見忍者のような奴が出て来た。
「拙者はブラックスの者だ。貴様の家に代々伝わる秘伝の技の習得方法を教えろ。さもないと…」
「いや、もう俺が覚えちゃったから、もうお前らが覚えることはできないぞ?」
忍者は目をぱちくりさせて、すぐにキリッとした顔に戻った。
「なぜお前ができたのだ!あの難関と言われる習得方法を!」
「え?なんで知らないのに難しいって分かるんだ?」
忍者は再び目をぱちくりさせて、はっとした顔を見せた。
「そうだった!他の奴に聞き出して、習得しに来たらお前がいて、お前が覚えているから無理だと分かって…。そうか。お前を殺せば定員が開く」
余計なこと言うんじゃなかった。忍者は刀を抜き、今にも斬りかかろうとしていた。
「拙者は…。って今、また自己紹介するの?って顔しただろ!ちょっと違うからよく聞いとけ!拙者は、ブラックスの忍び、火鼠のヒスラだ!貴様を倒し、拙者が技を習得するのだ!」
「それってさ、上の命令なの?それとも独断なの?」
「う、うるさい!だが覚えておいたほうが組織の為になるだろう!そんな事を言っていられるのも今の内だ!」
どうやら、独断でやっていたらしい。でも、中々手強そうだ。
「忍法!分身の術!」
コウのように本当に分身が出て来た。
「どういう原理だ?これ」
「ふふふ。これはなあ、火によって起こる煙を操り、分身を作っているのだ!」
「ありがとよ。教えてくれて」
ソウマに教えてもらったあの方法が初めて役に立ちそうだ。だが、この分身はコウのと違い分身に妖気が無いためとても簡単だ。
「ファイアタックル!」
手応えがあった。あの時、好奇心で教えてもらっておいて本当に良かった。
「見破られたか…。だが、このスピードに付いて来れるかな?」
こいつも自分と同じで、戦闘中におしゃべりが多いタイプのようだ。ヒスラは木々を飛び移り、森の中へと入っていった。だが、これもソウマの真似をすれば難なくこなせる。思えば、自分はソウマにたくさんのことを教えてもらったような気がする。今朝の様子は気になったけど。
「悔しかったらついて来い!」
もしあいつが本当に自分と似ていたら、これに反応するはずだ。何故か冷静に自分を見ている節がある。案の定、ヒスラはついて来た。そこでだ。自分の乗った枝に少しずつ火をつけておく。これでうまくいけばいいのだが。やがて、ヒスラが踏んだ枝が焼け落ち、そのまま落下した。
「何!?不覚!敵の意図に全く気付かないとは!」
「俺の作戦がすごかったと思っとけ。バーニングアロー!」
見事に命中した。自分は狙撃力はあまりないが、動いていない的なら当てられる。瞬時に縄と妖気封じを用意した。妖気封じとは、妖石が含まれた捕まえたやつが縄を壊して脱出してしまわないようにする首輪だ。縄と妖気封じは、ギルド様が絶対に入れておいて下さいと、20セット渡してくれたものだ。ギルド様はこういう勘がよく働く。その人物自体がミステリアスだが。
「ふう。上手く縛れた」
「これで終わりと思うなよ」
ヒスラはパチンと指を鳴らした。すると、同じような格好の奴らがゾロゾロと現れた。
「拙者の先輩方だ!さすがのお前でも、この人数では負けは確定!観念しろ!」
「使ってみるか。炎の舞!」
自分の周りを火が包み、力が湧き上がって来た。一気に襲いかかって来た敵たちを刀を避けて相打ちさせたり、炎で焼き尽くしたりした。だが、10人動いていない奴らがいた。
「どうした!1人相手にろくに戦えんのか!連携も取れん忍者はブラックスには必要ない!」
すると、全員が慌てたように猛攻を始めた。
「ビックカウンター!」
受けた技を全て返してやった。おおむね倒れたが、まだ地味に残っていた。




