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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第十一章 アインの故郷で
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第四部 目標

 「さーてと、あなたはどうするつもりなのかしら?」

何も答えないでおいた。その方が賢明だと思ったからである。危険な賭けだとは思うが、やってみるしかない。

「来ないならこちらから。ヘルクロー!」

避けることはしなかった。だが、急所は外してある。

「諦めたの?カッターウインド!」

風に乗って刃が飛んで来たが、これも避けなかった。よし、いい調子だ。このままいけば、あと数回で行けると思う。

「グラスキック!」

さすがに飛ばされて、建物の壁にぶつかった。少し痛かったが、受けたダメージは言う程多くない。

「リーフファング!」

容赦なく噛みつこうとして来たが、腕で受けた。

「この力、利用させてもらうよ」

ここまで間近に来ると、やはり隠していた妖石の存在に気づいたらしい。大きく目を見開いた。

「妖石?まさか…」

「カウンター!」

今まで受けて来たダメージを一気に返すようなイメージでやったのだが、思ったより上手く行った。

「妖石って、ほんと便利…」

なぜ自分が託されたのか分からないが、これはライトさんのお父さんも使っていたものだ。便利なのは分かっていたのだが、こんな機能がある事は通りがかったギルド様に教えてもらった。そういえば、あの人はいつも外に出て散歩をしているような気がするが、それは何かの意図があるのだろうか?そう考えているうちに、土埃が収まった。

「まさか、妖石を持っているとは。あなた一体何者?」

それは、と言いかけて、後ろに気配を感じた。

「フォニックスの、大事な一員だ」

ライトさんだった。たまにみんなの凄さに気後れしそうになったり、自分は相応しいのか不安になったりしたが、一員と認められていたことが嬉しかった。

「フォニックスって、国軍の分類に入るのかしら?」

「そうなりますね」

ギーヨ様がやって来た。

「国軍は、嫌いよ。猫の国王とも繋がっていたのね」

「降参しますか?そうすればまだ罪は軽くなります」

「ギーヨ様!」

気がつくと、叫んでいた。

「アインさん?」

「お気持ちは嬉しいんですが…。この戦い、自分の乗り越えるべき壁だと思うんです。だから、やれるところまでやらせてください!」

ギーヨ様は微笑んだ。

「乗り越えるべき壁ですか…。分かりました。ただ、真のピンチが訪れた時は助けますから」

「他の奴は任せとけ!がんばれよ!」

「ありがとうございます!ギーヨ様!ライトさん!」

「私を乗り越えるべき壁と言うなんて、大きく出たわね。戦いでこんな光栄に思ったこと、初めてかもしれない」

最後は小さく言ったが、はっきり聞こえた。その言葉から彼女の波乱の人生を感じさせた。

「アイスクロー!」

片手だけだったのに、両手で出せるようになった。

「受けて立つわ。ヘルクロー!」

結果は五分五分といった感じだ。

「特別に、ひとつだけいいことを教えてあげる。本当に愛する人がいるんだったら、意地でも守ってあげなさい。たとえ相手が誰だとしても」

フィーナは強い眼差しで言った。でも、自分の大切な人は逆に守ってくれるような人だ。

「フラワービーム!」

「フロストビーム!」

二つの技はほぼ同時に放たれた。

「ありがとう。なんだかこっちが色々学んだような気がするわ」

私は目を見開いたあと、頷き、力を振り絞ってビームを強めた。大きな爆発音と共に、フィーナは倒れていった。

「お疲れ様。アイン」

後ろから姉さんの声がすると、一気に力が抜けていく感覚に襲われ、その場に座り込んだ。

「どうやった?今日の戦い」

姉さんは隣に座った。

「私の中で、戦士としての目標ができた」

「聞かせてくれやん?誰にも言わんから」

「うん。戦いを通じて、私たちみたいに戦争に振り回された人たちを救えたら、って思う。さっき戦った人たちも、やったことは消せないけれど、罪を償った上で次の一歩を踏み出す手伝いが出来たらなって」

「いい目標ですね」

「ギーヨ様!盗み聞きなんてひどいです!」

「盗み聞きではありません。丁度聞こえただけです」

「そうですか。あと、もう一つあって」

「なんですか?」

「ギーヨ様に守られてばかりだから、いつかギーヨ様を守れるような戦士になりたいなあって」

「大きく出たなあ」

「光栄ですね。頑張ってください」

そのまま、ギーヨ様はスタスタどこかへ歩いて行ってしまった。

「アインー!スインー!そろそろ帰るぞー!」

「今行く!」

気がつくと、みんな荷造りを終えていた。私たちは慌てて準備をした。気がつくと、ギーヨ様は居なくなっていた。もう帰ったのだろう。帰り道、ぼんやりと考え事をしていた。また一つ、託された。シンという人と、妖石の中にあるライトさんのお父さんの思いと妖気。この妖石が、私とライトさんに大きな影響を及ぼし、シンという人が、フォニックスと狐の国の命運を大きく変えることになるとは、この頃の自分は思いもしなかったのである。

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