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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第十一章 アインの故郷で
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第二部 アインの成長

 「妖力的に100人はいるでしょう」

「ええ?そんなに?」

「物陰に隠れて、一瞬出て攻撃するって戦法だろう」

さっきから影が素早く移動しているのがわかる。

「フロストウインド!」

倒したと思ったら、また次が出てくる。これは長期戦になりそうだ。それより、ここはかつて自分が住んでいた街であり、かつての建物がそのまま残っているのだ。壊されたくなかった。

「どうした!なぜ攻撃しない!」

ちょうど後ろにかつての図書館があるのだ。ここで自分が母と一緒に絵本を読んだ記憶は、今でも鮮明に残っている。また来ようと約束した次の日に、光逆戦争が起こったのだ。アインの頬に一筋の涙が流れた。だが、相手は同情してくれる程甘くはなかった。弱みを見つけたとばかりに、建物を背にアインを包囲した。もう攻撃することなんて出来なかった。一斉に技が向かって来た時だった。ギーヨ様は私を抱えて高く跳び上がった。

「ギーヨ様…。私…」

「分かりますよ。ただ、過去ばかりに囚われてしまうのは良くありません。最近ここに取り壊しの話が来ているんですよ」

「え…」

「でも、建物が消えたとしても、あなたの思い出は消えません。今、あなたは戦士です。何も出来なかったあの頃とは違います。この地に成長したあなたを見せてあげて下さい。お父様もお母様も喜んでくださいますよ」

「そう、ですよね。ありがとうございます、ギーヨ様。おかげで上手くやれそうです」

「私は、ただ自分の言いたいことを言ったまでです。私はあなたが…」

ギーヨ様が急に言葉を止めたので、不安になって見つめると、ギーヨ様はこほんと咳払いをした。

「失礼。私はあなたが頑張る姿を応援していますよ」

「はい!頑張ります!」

「気負わなくてもいいんですよ」

ギーヨ様の足が地面に着いた。浮かんでいた時間は、ギーヨ様のジャンプ力がすごいのか、精神的な問題なのか分からないが、長く感じた。

「アイスアロー!」

これは姉さんのウォーターアローを真似しようとして練習してもなかなか上手くいかなかった技だが、今は自然とうまく出来た。これがフウワさんの言っていた心情の変化によるパワーアップかと、身をもって実感した。

「アイン、大丈夫だったか?」

「ごめんなさい、私、まだまだ未熟で…」

「未熟じゃねえ奴なんていねえよ。俺も、おそらくギーヨ様も、『まだまだ未熟』だ」

ライトさんは、そう言って笑った。イネイさんが、ライトさんの笑みは温かいと言っていたが、本当にそうだと思う。つくづく、私はいい人達に巡り会えたと思う。

「さあて。気合い入れていくか!」

ライトさんは、あっという間に他の位置へ行ってしまったが、今までどこかで感じていた、一人で戦うという心細さは不思議となかった。

「お父さん、お母さん、見ていてください。フロストサイクロン!」

この技は、今までの技と何かが違った。

「きっと、吹っ切れたんだろ」

どうやら後ろ辺りにいたようだ。

「フウワさん」

「今まで、アインは優しいから、相手を攻撃するのに申し訳なさを感じていたんじゃないか?それが、技の威力の低下につながった」

「すごいですね、フウワさんは」

「そんなことない。先月もソウマに助けられてばっかりだったし」

「いやだそういう事じゃなくて、なんだか一本の筋が通ってる気がして。ぶれない考え方を持っているというか」

「私は見た目よりずっと小心者で怖がりだよ。筋なんて通ってない。ぶれてばっかりだ。でも、別に筋を通さなくても、自分の考えを変えていくのも大切だと思うし」

じゃあな、とフウワさんは戦いに行った。なんだか今日はみんなに色々なことを教えてもらっているなあ、とぼんやりしていたら、後ろで爆発音がした。

「考えることも大切ですが、戦闘中だということを忘れないように」

「ああっ、すみません!ギーヨ様!上手くやれそうとか、調子の良いことを言ったばかりなのに…」

「まあ、僕も未熟ですから強く言えませんね。ライトさんの言ったように」

そうだ。未熟で良いんだ。未熟だから、成長するんだなあ、と思った瞬間、優しい風が吹いた。

「よおし!頑張るぞー!」

「急にやる気になりやがって。まあ良い。俺は任務を遂行するまでだ」

物陰から誰かが出て来た。見た目と妖気から、その人がただ者ではないことを感じさせた。

「俺はケイル。ブラックスの一員の、闇狐だ」

こんなに名を名乗る人、中々いないだろう、と思ったが、強い妖気に場に緊張感が漂った。ケイルの手から弓と矢が出来た。どういう原理なのだろう、という単純な好奇心が頭を掠めたが、すぐに打ち消した。ケイルは矢を飛ばして来た。驚いた。こんなに早くて妖気に満ちた矢は見たことがない。今の一撃で、ケイルが相当な手練であることを感じさせた。

「外したか…。今のをかわすとは、そこいらの娘とはやはり違うな。本部が捕らえて来いと言って来たのも納得だ」

なるほど、そんな命令が下されていたのか。だが、これ以上みんなに迷惑はかけたくない。

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