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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第十一章 アインの故郷で
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プロローグ アインとギーヨの関係

 1月も下旬に差し掛かった頃。みんなで朝食を食べていた。

「なあ、アイン」

「何?エント」

「一体どうやってギーヨ様と知り合いになったんだ?」

「そ、それは…」

「エント。別にいいじゃないか」

「いや、ライトさん。いつかは言わないとって思ってたし」

「なんで俺は呼び捨てなのに兄者はさん付けなんだよ?」

「エント。今関係ない」

「じゃあ、あそこに行って言ったらええやん。お母さんとお父さんも喜ぶと思うで」

「うん、そうする」

朝食を食べ終わり、準備を終わらせた後、私達は出発した。

「あの海岸の近くなのか?」

「うん、あの海岸も街の一部だったの」

「もう無くなった街ってことか」

「…私はあまり覚えてないけど。あの日は鮮明に覚えてる」

やがて、街だった所に着いた。そこは、倒壊した建物がそのまま残されていた。

「あの日ってもしかして光逆戦争か?」

フウワさんが尋ねた。

「なんで」

「まあ、大体察せるやろな。街の名前は知らんくても、戦争の名前は有名やし」

「なるほど、光逆戦争で襲われた街だったのか」

ライトさんはピンと来たようだが、エントはあまり分かっていなさそうだった。光逆戦争は、ほとんどの光狐が独立をし狐の国の規模を減らすこととなった歴史的な戦争だというのに。ちなみに、姉さんが2歳の頃、闇狐が周辺の街を襲った闇逆戦争もあった。この時は、戦争に関わった紫の目の闇狐は全員処刑されている。

「へえ。で、ギーヨ様と関係があんのか?」

「それは、今から話すよ」

 アインの住んでいた街は、人口50万人程で、猫の国との貿易に重要な街だった。光逆戦争では、人口は50万人いても、ほとんどが戦えない商人だったので、千人程の光狐精鋭部隊に全く歯が立たず、完敗した。逃げ出そうとしたものは捕らえられ、奴隷にされた。幼心にも、恐ろしさを感じた。いよいよ自分たちも危ないとなった時に、猫の国軍がやって来た。だが、知らせが届くのが遅かったせいで、生き残りはほとんどおらず、負傷者も多かった。母と父は、その中にいなかった。ギーヨ様は、自ら身寄りのない自分たちに住む場所と教育費や生活費をくれた。おかげで、スインとアインは大きく成長し、ここにいる。

「って感じかな。結構かいつまんだけど」

「ギーヨ様も、変わり者だなあ。案外そんなも…」

エントは言いかけて振り向いた。自分の背後に、ちょうどギーヨ様がいたからである。ギーヨ様は、寒いというのに夏と同じスーツだった。こんなに長い付き合いだと、彼がこういう人だと割り切れてしまう節がある。

「おや、僕の噂をして頂けるなんて、光栄ですね」

「いや、これは、あの、ちょっと」

そう言いながら後退りしている。

「ギーヨ様…」

後からキョウさんが続いて来た。

「あ、そうそう。今日は決してエントさんに警告をしに来たわけでは無くて」

やはり、あれは警告だったようだ。彼はしっかりしているようで、どこか子供っぽい。

「ちょうど、8年前の今日だなと思いまして」

「姉さん、もしかして…」

「気づいてなかったん?」

「うっかり…」

「でも、今年はあっという間にこの日が来た気がするし」

「だから、スインはわざわざここに来たらって言ったんだな」

エントがしみじみ呟いた。

「あと、気になるんですよね、ここから感じる妖気が」

「え?何も感じな…」

エントが口をつぐんだ理由は、絶対に一瞬感じた妖気のためだろう。しかも、その妖気は決していいものとは言えなかった。

「なんか、ふっと通りかかったような感じ」

「最近、なんとかという組織がいるみたいですし。靴みたいな名前の」

「ブラックスです!」

「それです、それ。僕の耳にも入って来ているんですよ。主にこの辺りの地方で活動していると」

「つまり、鼠の国の近くとかも?」

「はい、これが厄介なんですよ。普通の一般民を操ったり、見込みのある人を攫っていったりで」

「だからロル君達は暴れ出したんだね」

「姉さんは見込みがあったってことじゃん」

「ちょっと複雑やけどな」

姉さんは口を尖らせた。

「つまり、またあいつらなのか!しつこいぞ!」

「まあ、向こうとしては部下を何人もやられているので、邪魔な存在と思っているのかもしれません」

「ギーヨ様!もうすぐキワル様が来られる時間ですよ!」

「キョウ。代わりに行ってくれませんか?」

「いや、あの人はそれで納得しないでしょ…」

「でも、今回の件は中々厄介かもしれません」

「分かりました…」

渋々という様子で、キョウさんは帰って行った。キワル様とは誰なのだろう?突然、後ろに気配を感じ振り返ろうとすると、ダンと音がした。勢いよく振り返ると、そこには黒ずくめの男がいて、ギーヨ様がいつの間にか私の後ろに来ていて技を受けていた。というか、もう捕まえてしまっていた。

「やはり、いましたか」

なんとなくだけど、ギーヨ様の反応から考えるとブラックスの一員だと思う。彼は普段は少しお茶目な感じだが、やる時は完璧にこなしてしまうのだ。そのギャップが彼の魅力の一つだと思う。



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