第四部 戦士とは
かなりの距離を突っ切ったのだろう。後ろを振り返ると大地が道のようにえぐれた跡が延々と続いていた。決着はついたと見て戻ろうとすると、
「お前は、素晴らしい戦士だ。俺と対等にやり合った」
相手の声が聞こえた。私は立ち止まって次の言葉を待った。
「…いや、違うな。最後は一方的にやられるだけだった。もうじき、木が倒れ始めるだろう。早く行け。巻き込まれるぞ」
「ああ。そうすることにする。でも、少し言っておきたいことがある。敵同士だったけど、もし味方なら、いいライバルになれたと思う。約束してくれ。生まれ変わったら、今度はライバルになってくれないか」
「ああ。約束する」
その瞬間、相手に木が勢いよく倒れ、妖気を感じなくなった。
「フウワさん?」
「ソウマ?」
「なんでこっちに来た。危ないぞ」
「なんでって…。仲間なんだから。心配になっただけ」
「別にお前に心配されなくたって大丈夫だ」
こんな口調になってしまうのが少し嫌だ。
「おせっかいとは、分かってる。早く行こうか」
そして、私達は帰って行った。
「おー、遅かったな」
家に帰ると、玄関から中に入ってすぐの応接室にライトがいた。1人掛けのソファーが対面で2つあるのだが、そのもう1つに座っていたのは、
「こいつらがフウワとソウマか?」
穀物神、オムギ。ちなみに、この世界での神とは、信仰の対象というより、穀物神と言ったようにグループのリーダーのようなものらしい。決して全ての属性にいるわけではなく、この国で言えば光狐や闇狐などの屋敷に住んでいるような特別な属性だけだ。まあ光狐と闇狐は7割程が勢力を広げようとして無理矢理戦いをし、独立国のようになってしまっているが。当然、ツーハは残りの3割に入る。
「そうなりますね」
「ライト、なんでこんなとこに穀物神がいるんだ?」
私はライトに耳打ちした。
「ソウマは知ってると思うけど、仲間達がご迷惑をおかけしましたって話」
「ライト」
オムギさんが呼ぶと、ライトはすぐに振り返った。
「なんですか?」
「イネイってさ、抜けてるし無駄にお転婆だから全然男が寄って来ねえ。将来が心配なんだよな」
「気が早すぎるような…」
「いや、そうでもない。穀物屋敷の奴らはなあ、結婚は18から20くらいなんだよ」
「ええ…」
「変なこと言っちゃったな。関係ないのに。じゃあな」
オムギさんは飛んで行った。文字通り。
「特殊能力は“ハヤブサ”らしいぞ」
「あ、あのさ、ライト」
「何だ?」
「ずっと気になってたんだけど、ライトってどんな気持ちで戦ってるんだ?」
「そんなの、単純だ。『絶対勝ってやる!』って思ってる。そうすれば実際勝てちゃう気がするから」
「ソウマは?」
「僕はフォルムが変わっても、『諦めるって選択肢はない。自分がもう動けなくなっても』って思ってる。まあ、危険な考えなのは分かってるけど」
「私は『戦闘時に止まることは1秒もない。その隙が敗北を産む』って思っとる」
「なんか戦闘神ベルナラみたいだな、スイン」
ベルナラは実際にリーダーだったわけではなく、本来リーダーはとんでもなく強くなれる“神化”ができ、それに負けないくらい強かったかららしい。
「いや、口から自然に出とって」
「アインは?」
「うーん、考えたことなかった…」
「俺のも聞くか?」
「いや、内容薄そうだからやめとく」
「ひでえなあ」
そんな言葉を無視して、自分はどうなのか考えた。あの時は、ただ楽しいとだけ感じていた。でも、それでいいのだろうか。…戦士として。
「楽しいってだけじゃだめだよね」
「別にいいと思うぞ。楽しいとか、プラスの感情って、自分もプラスになれるような気がするし」
「そう、かなあ」
あいつは『素晴らしい戦士だ』って言ってくれたけど、まだまだ程遠いような気がする。悶々と考えていると、
「飯出来たぞ!」
とコウの声。
「フウワさん。考えても分からない時は、とりあえず離れてみて、改めて見返してみたら、いい考えが浮かぶかもしれないよ?」
「ありがと、ソウマ。そうしてみる」
「今年も今日で終わりだ。長かったような、短かったような」
本当だ。あっという間に12月31日だ。
「今日は夜更かしするぞー!」
「ライト、お前朝起きれないくせに。明日新年早々寝坊する気か?」
「今日はなんなん?」
「もちろん、年越しそばだ!」
「やったあ!」
無邪気な声がした。
「ツーハ?」
やっぱりいた。
「やっほー!」
「なんでいんだよ!」
「あしたしん年かいがあるんだけど、ライ兄とエン兄もきてって」
「なんで?」
「しらん。とまってていい?」
「『泊まってっていい?』な。分かった。お母さんのもとで年越さなくていいのか?」
「どっか行った」
「また旅に出たのか?いい加減にしてほしいんだけど…。落ち着きがないんだから」
「おいしそー。ってやさいどろぼう!」
「コウはもう足を洗って今ではいい料理人だ」
「まあ、しかたない。くってやるか」
とても良家のお嬢さんには見えない。




