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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第九章 スインの記憶
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第五部 ロスト団の秘密

 翌日。約束通り、ナノガはやって来た。やはり、ロスト団のメンバーを連れて。

「おはよう。大したおもてなしも出来ないけど」

「いやいや、気にしなくていい。こっちの都合で来させてもらったから」

「初めましてね。チーナよ」

「アルガだ。よろしく」

「レイナです」

「実は、ロスト団について話がしたくて来たんだ」

「なんで僕に?」

「それは話の中で。長話になると思うけれど、どうかしっかり聞いて下さい」

ナノガは話を始めた。

今からずっと前。ナノガは妻とある理由で離婚となってしまい、悲しくて仕方がなかった。そして、ある時自分が悪さをすれば、正義感の強い彼女なら必ず退治しに来るだろうから、片時でも会えるかもしれないと思い付いた。そこで、それぞれ違う孤児院にいた名前もない4人の子どもたちを集めて、ロスト団を結成し、さらに孤児院から連れ出して来て、規模を拡大していったが、彼女が来ることはなかった。その間に、フォニックスが来て倒されてしまった。

「…という訳だ。改めてすまなかった。私の勝手な考えのせいでこんなことになってしまって」

「孤児院から連れ出して貰っただけ幸せだったけどね」

「義姉さんは周りと馴染めなさそうだもんな」

「それを言ったらアルガだって!」

「まあまあ。2人とも。こんな所で喧嘩しないで」

「そういえば、義兄さん、どこに惚れたの?」

「一緒の孤児院にいて、そっからずっと気になってたんだけだ」

「ええっ!そうだったの?」

「義兄さんをよろしくね。パキラさん」

「はい、話を逸らさない」

「まだ続きがあるの?」

「ああ。なるべく短く話すから、ちょっと我慢してて」

そして、彼女は穀物屋敷にいるので、よく稲狐が来るここにいればその人に聞いて何かわかるかもしれないと思った。

「いい加減諦めればいいのに」

「ちょっ!オスコさん!」

「すでに諦めてますよ!でも、一度でいいから会いたいだけです」

「とはいえ、いつ来るかなんて分からな…」

「今日も来ました!」

「噂をすれば」

「あの、『オムギ』って知らない?」

「オムギさんなら、今は穀物神をしてますけど…」

「義父さん、急に話しかけない。怖がられてるよ」

「ああっ。私はナノガという者で、オムギに会いたくて…」

「オムギさんに?」

「ああ。頼む」

「オムギさんなら、今こちらに向かっていますよ。私がここの話をしたら、一度見てみたいと」

「イネイ!どこだ?」

「オムギさん!ここです!」

「ああ。木に隠れて見えなかったよ」

「オムギ…」

「ん?ナノガじゃねえか。お前こんな所にいたのか」

「それより、もう会えないかと」

感動の再会というものだろう。自分ここにいていいのだろうか。

「ばーか」

オムギさんはナノガさんの足を引っ掛け、転ばせた。

「おわっ」

ナノガさんは尻餅をついた。

「なんでそんなことしたんだよ!別に普通に会いに来てくれたら良かったじゃないか!」

「いや、お見合いの話来てたのに、行くのもどうかと思ったから、そういう口実でしか会えないかなって」

「それは私の希望だと?」

「ふえっ?」

「相変わらず、お前は鈍いな。それがいいんだけど。私はお見合いなんてしてねえよ。大体、私が親の言うことを素直に聞くようなやつじゃねえ」

「ってことは…」

「私は結婚してないし、誰かと付き合ってもいない。ずっと待ってたのに、お前は来なかった」

オムギさんは、ブスッとしてナノガさんに背を向けた。

「す、すまなかった!もう一度、やり直せないかな…」

「それを待ってた。15年以上な」

「わーい、おめでとーっ!」

その後、延々と歓声が続いたのだった。


 「後は任せたよ。オスコさん」

夕方になり、ロスト団のメンバーも帰った後、僕はフォニックスの所に帰る事にした。

「ああ。気兼ねなくフォニックスの活動をして来い。こっちはもう大丈夫だから」

「うん。でも、たまに帰ってくるよ。こっちも僕の家だから」

いいお土産話が出来た。これを話したら、みんながどんな顔をするのか、楽しみだ。


 「さてと。任務も終わったし、休憩するか」

「お疲れ。ライト。1人で良かったのか?」

「大した任務じゃなかったし、1人で考え事をしたかったし」

「え?何考えてたの?」

「秘密だ」

「ただいまー」

「あ!ソウマ!おかえり!」

「なんかすっげえ久しぶり!」

「そう?」

「丁度ご飯を食べる所だったんだよ」

「今日は面白い話があるんだ」

「何?」

「それはご飯の時のお楽しみ」

「じゃあ、早く食べようぜ!」

「待て!これを全部運び終わってからだ!」

「どんな話?」

「面白い話」

「コウ!手伝うぞ!」

「あっ!それはちょっと待て!」

「えっ?」

エントが振り向くと、ガッッシャアンと音がして、その料理が落ちた。

「言わんこっちゃない」

拭く時間が増えたので、結局食べ始める時間は遅くなったのだった。



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