第四部 姉妹の絆
相手は勢いよく落下していき、床に穴を作った。
「お、落ちる!」
そういえば自分のことを考えていなかった。
「もう、学習しないわけ?」
エムルは再び壁を使って今度は勢いよく降り、自分と並んだ。
「助けて欲しいんだったら、これを受け取って。僕の連絡先が書いてあるから」
「わ、分かった」
どんどん床が近づいてきていたので、即答した。
「じゃあ、行くよ」
エムルは自分を手を掴んで、自分だけ丸くなって落下の衝撃を受け止めた。でも、甲羅(?)には傷ひとつついていなかった。
「丈夫なんやね」
「僕の特殊能力で弾力があるんだよ。じゃあ、また連絡してね!」
自分のしたことを少し後悔していた。
「姉さん!」
振り向くと、やっぱりアインだった。
「アイン…」
「無事でよかった…」
「ずっと探してくれとったん?」
「当たり前だよ!何かあったらってずっと心配で…」
アインが泣きついて来た。やっぱり妹は可愛くて仕方ないものだ。
「感動の再会の所を悪いが、何があったのか聞かせていただけないでしょうか?」
警察官が尋ねて来た。自分は起きたことそのままを話した。その後、牢に入っていた人達は全員解放され、敵たちは全員逮捕された。謎の組織ブラックスの謎はさらに深まっていくばかりだった。
「今日の晩御飯は何?」
「内緒だと言っているだろう。みんなが好きそうなやつだ。ソウマは苦手だから出してなかったが」
家に帰り、そんな何気ない会話が聞こえる中、スインとアインはテーブルで向き合っていた。
「お腹すいたね。昼ご飯食べてないから」
「そうやなあ。でも、一瞬もうみんなに会えやんかと思ったわ」
「そんなに相手が強かったのか?」
エントが2人の間に入って来た。
「エント。2人で話したいの」
「えー、ひどい」
エントは目をウルウルさせた。
「そんな目で見てもだめ。30分程度のものだから」
「はあい」
エントはテレビの前に行った。
「エントと同じ質問になるけど、そんなに相手が強かったの?」
「うん。1人やったら、確実に負けとったな」
「え?1人で戦ってたんじゃないの?」
「うん。まあね」
ピンポーンと音がした。フウちゃんがドアを開けると、配達屋だったようだ。何やら受け取っていた。
「誰から誰に?」
「ソウマから私にらしい」
「あ、誕生日だもんな」
フウちゃんが封を開けると、手紙と生花が入っていた。
「ピンクの綺麗な花だね」
「でも、私にピンクは似合わんだろ」
「そう?結構似合うと思うけど」
「まあ、部屋にでも飾っておくか」
「手紙は?」
「中身を聞いたり見たりするなよ。ソウマが可哀想だから」
「俺がそんな事をするように見えるか?」
「見える」
2人の声がぴったり重なった。
「ええっ。ひどいぞ!」
「残念だったな、エント」
「兄者まで!」
「別に兄貴でもいいのに。もっと親しみを込めて」
「いや、いい」
「仲がいいんやろな」
「そうなんだろうな。ちょっと羨ましいけど」
「兄弟おらんの?」
「いるにはいるけど、あんまり会えない状況かな」
「そういう意味で、ソウマ君って、兄弟おるんかな?」
「なんとなく、下っぽい雰囲気だけどな」
「ご飯できたぞ!」
「わーい」
無邪気に食卓に向かうエントを見て、
「まだまだ子供だな」
と言ったフウちゃんには笑ってしまった。
「あ!唐揚げだ!ソウマ、鶏肉食べられないもんな!」
「ちょっと!楽しみ奪うなよ!」
ポケットの中には、もらったメモが入っていたが、余り使う機会はなさそうだ。
「うーん、誰かが噂してるのかな?」
その頃、今山。
「いいな、人気者で」
「そんなにだよ。そろそろご飯にしようか」
みんなの顔がぱあっと明るくなった。
「そんなにご飯食べたいの?」
みんなはこくこくと頷いた。
「全く、誰に似たんだか」
「お前だろ」
オスコの言葉には強く否定できなかった。家に入ると、手紙が来ているのに気がついた。こんな山奥まで申し訳ない。手紙の送り主は、ナノガだった。
「明日来てもいいか、か」
別に予定もないし、来てもらう分にはいいのだが、何故来たいのか疑問に思った。まあ妖獣を見てみたいのだろうな、と無理矢理解釈をして、大量の餌を持ってみんなの前に出た。みんなはばっと餌に飛びつき、勢いよく食べ始めた。
「まだまだあるから、そんなに早く食べなくてもいいのに。オスコさん、こんなご飯だけど、どうぞ」
「ありがとう」
2人は切り株に座ってご飯を食べた。
「みんなには慣れて来た?」
「ずいぶんな。最初はどうなることかと思ったが、しばらくしたら懐いてくれたようだ」
「まあ、みんな警戒心強いけど、一回仲間だと思えば、ずっと仲良くいられると思うよ」
「餌代とかは大丈夫なのか?」
「これはあそこの畑や牧場で育てたやつだから。ここまでは来れなくても、そこは絶対毎日行くようにしてるよ」
「熱心なんだな」
今日は星が綺麗だった。




