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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第九章 スインの記憶
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第三部 スインの意地

 瞬きの間に、相手は壁まで移動しており、すごい風圧が来た。

「避けられたか」

「僕をなめないで欲しいな。一応アルマジロの中では強い方だから」

「そうか。だが、こっちはどうだろうな」

今度はこっちに向かって来た。…避けるので精一杯だった。というか、少し毛が切れた。透明になったが、なぜか位置を悟られ、次々とやってくる攻撃を避けることしか出来なかった。

「どうした?避けるだけでは戦いにならんぞ?こんなのを部下にしても、たいしたことないだろうし、手加減はしなくていいだろう」

気がついたら、自分は相手に掴まれていた。

「案外、あっけなかったな。安心しろ、脱獄者をすぐに殺す訳がない」

これでは、7年前のあの時と全く変わりがない。また、同じことを繰り返してしまうのだろうか?悔しかったが、掴まれている以上、体は自由に動かない。

「恨むなら、弱い自分を恨め」

なんだか急に不思議な感覚に襲われた。

「自分は弱いことなんて、とっくの昔に分かっとる!やけどな、こんなとこで終わりたくない。せめて、アインが幸せになれるまで、隣にいたい。やから、あなたを倒して、必ずや帰らせていただきます」

途中から、自分の声じゃないような気がした。心の中で、こんな声が聞こえたような気がした。

『アイン。私の生まれ変わりだってのに、こんなやつにやられてるの?いい?力っていうのは、誰しも持ってるの。色んな意味でね。それをどう引き出すかは、自分次第。まあ、やってごらんなさい』

生まれ変わりという言葉に驚いたが、それより気になったのは、『力をどう引き出すかは、自分次第』という言葉だった。何か掴んだような気がする。

「ウォーターアロー!」

「先程と同じ技を使ってどうする。それに、どうやって出そうというんだ」

「まあ、見てみな」

思いっきり相手の手の中で放ち、その勢いで後ろに飛ばされて脱出することが出来た。

「おお。考えたね」

エムルはただそこに立って自分を見ているだけだった。

「でも、着地も考えないと」

そう。自分は相手の手の中から脱出することしか考えていなかったので、そのまま真っ逆さまに落ちていた。エムルはぴょんと跳び、自分を空中でキャッチした。

「あ、ありがと」

「どういたしまして。ようやく目を合わせて話してくれたね」

「こ、これは、その…」

スインは余り会話な得意な方ではないので、失礼とは思いながらも初めての人と目を合わせて会話することは出来なかった。フォニックス初日の時も、実はすごく緊張していた。

「なかなかやるではないか。だが、この程度で負ける俺じゃない」

「そやろな。本番はこっからや」

もしかしたら、怪我を恐れていたのかもしれない。ずっと重かった足が、今では信じられない程軽くなっている。もう自分の中で踏ん切りがついた。アインのためだけじゃない。自分の幸せも大切にしなきゃいけないと思う。

「ウェーブスマッシュ!」

大きな波が出来、相手に押し寄せた。

「こちらからも行かせてもらおう。デットバイト!」

自分に命中した。しかし。

「残念。尻尾や」

「は、離れん…」

「今度はしっかり急所を狙って当てたるわ。ウォーターアロー!」

相手は床に落ちたが、すぐに体勢を整えた。

「俺がこんなのでやられてたまるか。そろそろ本気を見せてやろう」

速さや威力がさらに上がっている。また厳しい戦いになりそうだ。

「今度は当てるぞ!ストーンファング!」

避けようと思った瞬間、相手に抑えられ、動けなくなった。これまでかと覚悟を決めたら、相手に丸い何かが衝突した。相手は弾き飛ばされ、自分の体は自由になった。

「大丈夫?」

「大丈夫。怪我もしてないし」

突然、足元から岩が出て来た。

「油断した方が悪いのだ」

岩の高さはかなりあり、無傷で飛び降りることは無理だと分かった。

「ストーンファング!」

「だったら、こうすれば良い!」

とりあえず相手の体に乗り、突き落とした。できることなら地面を水で満たしてしまいたいが、そんな妖力もないので、こうすうことにした。

「ウォーターアロー10連発!」

狙い通り岩に階段のように刺さった。降りても大丈夫そうな高さのギリギリを攻めたのだ。

「よっと」

自分がウォーターアローを踏む度に水に戻り、辺りに撒かれた。

「よくもこの俺を足蹴にしてくれたな。もう容赦はせんぞ!」

「水の上のスピードなら、誰にも負けへん」

自分は水の上を滑るように移動した。そして、透明になった。

「周り全てを攻撃すればいいだけの話!」

石の破片が全方位に飛んだが、自分はそこにはいない。そう、空中にいたのだ。エムルと一緒に。

「そんなに技出しまくって、妖力は大丈夫なわけ?」

「もうすぐお前らを倒せばいいだけの話だ!」

相手も飛び上がったが、作戦通りだ。

「君、近接攻撃しか出来ないわけじゃないよね?こんな調子だと、こうなるよ」

自分は相手に向かって落ちながら、つまり下から攻撃をした。

「ぐわっ!」

エムルは壁を使ってさらに上に行った。

「空中は僕のフィールドだから。奪わないで欲しいな」

エムルは相手を突き落とした。


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