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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第八章 今山、再び
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第五部 花にかけた思い

 夜。急に電話が鳴ったので、何かと思ったら、ヒノガだった。

『すまない。明日、出来たら来てくれないか?』

今回も、何かあったのだろうか。心配でなかなか寝付けなかった。


 次の日の朝。

「ライト!起きろ!いつにも増して遅いぞ!」

「いやあ。昨日は寝れなくて」

「なんで?」

「それがさあ」

俺は一部始終を話した。

「ヒノガ、先月も頼って来たよな。そんなに困りごとが次から次へと出てくるのか?」

「行ってみるか?」

「うん!行こう!」

みんなの声が重なった。

「じゃあ決まりだ!」

「ちょっと兄者!俺は何も言ってない!」

「多数決だ!」

「あっ!待て!」

エントも何だかんだで結局ついて来た。


 農園の前まで来ると、ヒノガがいた。

「来てくれたのか」

「まあ、特に重要な任務もなかったし」

「ヒノガ!パキラはどうだい?」

エントが茶化すように言った。

「今はあまり会わせたくない」

「どういうことだい?ヒノガ君?」

「あまり図に乗るなよ」

ヒノガが思いっきりエントを睨んだ。

「すげえ迫力。なんでこいつアインに負けたんだ?」

「負けてはいない。倒れたフリをして様子を伺っていたら、こいつが先に行っただけだ」

「あんなにあっさりと倒せた訳だ」

アインは納得した表情を見せていた。

「で、何かあったのか?」

「義父さんからこんなのが届いた」

ヒノガがは、そう言って便箋とドライフラワーを見せた。便箋には、『これを見ろ』とだけ書かれていた。

「どういう意味なのか、全く分からなくて…」

「花言葉は詳しく無いのか?ヒノガ」

「アイビーはあいうえお順で探したから他のは全く分からん」「あいにくソウマもいないしなあ」

「そもそも何の花かも分からん。ちょっと調べてみるわ」

スインはスマホを取り出し、調べ始めた。

「ライト?ヒノガ!来るなら言ってくれよ!」

「ちょっ!今は来るな!」

そんなヒノガの言葉を無視して、パキラは姿を現した。だが、その姿は土まみれだった。

「だから来るなと言ったのに」

「久しぶりだな!」

「ライト!ヒノガに用があったのか?」

「ああ。ちょっとな」

エントが、

「パキラなんか太った?」

と言った。一瞬でパキラの表情が変わった。こいつとんでもないことを言いやがった。

「よくそんなことを言えたね。エント!」

パキラはクワを持ったままエントに飛びかかろうとしたが、ヒノガが止めた。

「ヒ、ヒノガ!同じ火属性として助けてくれるのか!」

「違う。ちょっと貸して」

ヒノガはパキラからクワを受け取り、エントに襲いかかった。

「クワは死ぬから!やめて!ごめんなさい!本当に謝るから!」

ヒノガは足を止めて、エントを睨んだ。

「次こんなことを言ったらお前の命はない」

「は、はい!」

「エント。女の子は少しふくよかな方がいいんだよ」

アインが呆れたように言った。

「そうなの…」

「もう、エントったら!」

パキラはクワを持って、奥へ行ってしまった。

「あ」

スインが声を上げるとみんなが反応した。

「これやない?」

どうやら、この花はアスチルベと言うらしい。

「花言葉は、『恋の訪れ』『自由』やって」

ヒノガは目を見開いていた。

「どういうことだ?」

エントが割り込んで来た。

「いちいち説明しなくても、わかると思うけど。『あなたに恋が訪れましたね。これからは自由に生きてね』ってことだと思うよ」

「ありがとう。これはパキラにも伝えて、義父さんにもお礼を言おうと思う。ライト達に頼んだのは良くなかったかな」

「人脈も力だ。気にすんなよ」

「お礼に、もらって行ってくれ」

ヒノガは二十日大根をくれた。せっかくの野菜なのに、よかったのだろうか。(失礼。このような名詞中の数字は漢数字が適切かと(一石二鳥は1石2鳥とは書かないので)。またはいっそカタカナ(ハツカダイコン)にすることをおすすめいたします)


 俺たちは家に帰ると、コウに20日ダイコンを手渡した。

「またこれで料理作ってくれ」

「いいダイコンだ。誰にもらったんだ?」

「ヒノガとパキラだ」

「そうか。みんな始めてるんだな、第二の人生を」

コウは20日ダイコンを見つめていた。

「コウはいいのか?俺たちの所にいて」

「俺は幸せだぞ?自分の居場所が見つかって。まあ、料理の腕を上げて小料理屋でも開くのもありだな。資金全くないけど」

ライトはコウの前にお札を置いた。

「ライト?」

「これはお前の資金にしろ。夢があるって、いいじゃないか」

「本当にいいんだな?」

「ああ。男に二言はない」

「じゃあもらっとく」

「兄者ー!助けてーっ!」

エントはホラー映画を前に絶叫していた。ソウマがいないからか、いつもより程度が大きい気がする。いい加減、どうにかして欲しいのだけど。

「今日の昼飯は何なんだ?」

「それは内緒だ」

「えー」

ライトは人生について想いを馳せた。過ちを犯しても、また立ち直させることが出来るような人になりたいなあと思っていたら、美味しそうな匂いがただよって来た。



 

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