第四部 最初の依頼lll
ドアの向こうから、「はーい」という声が聞こえた。意外にも優しい声だった。ガチャリとドアが開くと、中から穏やかそうな青年が出てきた。俺たちは顔を見合わせた。その人からは、悪い妖気を感じなかったからだ。俺たちが戸惑っていると、
「えーと、どちら様ですか?」
青年が困った様に言った。
「お前に用があって来たんだ」
「えっ。僕に?」
青年は驚いたようだ。
「そうだよ」
エントは青年に詰め寄った。
「大体、なんだあの動物たちは!俺たちを殺す気か!」
しかし、青年は、
「動物?」
とピンと来ていない様子だ。しばし考え込んだ後、
「あーっ!」
と分かった様に叫んだ。
「本当にごめんなさい!ほらみんなも謝って!」
動物たちが頭を下げてきた。
「結局、どういうことなん?」
とスインが尋ねると、
「この山に来て、動物たちの怪我や病気を治していたんだけど、相手に妖力を分ける技で直してたから、張り切った動物たちが僕を守ろうとしてくれてたのかもしれない。本当にごめんなさい!」
動物たちは頷き、謝るような仕草を見せた。こうみると、可愛いものだ。
「息子が悪者じゃなくて良かった」
とエントが言ったことにより、
「息子?」
と青年が首を傾げた。
「お母さんから探して欲しいって依頼が来とったで」
しかし、青年は、
「帰らないって伝えといてくれないかな」
と言ったのでエントが
「何でだよ?」
と言ったが青年は答えなかった。
「じゃあさ」
俺は口を挟んだ。
「お前なんていうんだ?」
「…ソウマ」
「じゃあソウマ。戦いは出来るか?」
「え?」
「ちょっ。ライト」
フウワが間に入って来た。
「流石に無理があるんじゃないか?」
「どういうこと?」
ソウマはパチリと目を瞬かせた。
「俺たちと一緒に戦わないか?」
「人数って増やして良いのか?」
「良いらしいで」
「どういう感じで?」
「庶民から依頼を受けて、それを解決していくんだ」
「つまり、人助けってことだよね。誰かのためになるなら、やらせてもらうよ!」
「よっしゃ!じゃあ引っ越し出来るか?」
「1日待てる?」
「じゃあ明日待ってるからなー!」
こうして、新たな仲間、ソウマを引き入れることが出来た。この出来事が、今後の戦いに大きく影響してくるということは、誰も想像していなかった。




