第四部 絆の力
「あいつ、本当に一撃で決める気だ!」
どっちのソウマがやっているのか分からないが、自分達も危ないかもしれない。
「離れろ!俺らもくらっちまうぞ!」
エントがそう言い、みんなが走り始めたが、ライトだけは動かなかった。
「ライト?」
「俺は動かない。一歩もな」
「なんでだよ?」
「考えててもみろよ。あのソウマが、森ごと吹き飛ばすと思うか?俺たちもそうだが、妖獣だっている。お前ら全員逃げても、俺は動かない。ソウマを信じて、最後まで近くで応援する!」
エントがライトの方に歩いて行った。
「俺も残る。そうだよな。ソウマだけ残して逃げるなんておかしいよな。ありがと、兄者。俺は大事なことを忘れていた」
「私たちも残る。イネイは別に帰っても良いんだぞ?もしものことがあったらいけないし」
「いえ。私も残ります。ちょっと妖獣達について調べたいですし」
そう話している間にも、ソウマの技は大きくなっていた。相手も技を大きくしていたが、あれでは対抗できないだろう。最後の悪あがきともいえる。
「決めるよ!グラスボール!」
「ポイズンショット!」
ぐんぐんとソウマの技は相手に近づいて行き、相手に当たったが、地面スレスレで止まった。
「な?言っただろ?」
「ライトさんって、本当にすごいんですね。私なんかよりずっと」
「いやいや、俺はなにもしてないし」
ライトは照れ笑いを見せた。技による爆発が収まると、倒れた相手とソウマが木から降りてくるのが見えた。
「ソウマ!」
なぜか自分が先に走り始めていた。内心心配だったのかもしれない。
「ふう。疲れたあ」
「ソウマ、強かったな」
「みんなのおかげだよ。グラスヒールの副効果なんて知らなかったし」
それから、みんなで勝利の幸せを分かち合った。
気づいたら、すっかり夕方になっていた。
「皆さん、ありがとうございました!」
「こちらこそ助けられたよ。ありがとう」
「ライトさん。この上着、洗って返しますね」
「いや、あげるよ。俺には小さいし」
「いいんですか?このサイズなら、弟が着れそうです。ありがたくいただきます」
「いいのか?そんな服で」
「弟は服ならなんでも来ますから。それでは」
「元気でな」
イネイは山を下りていった。
「さあ。俺たちも帰るか」
「あの」
ソウマが言いにくそうに話しかけて来た。
「何だ?」
「1か月ここにいようと思って。オスコに頼むつもりなんだけど、慣れるのに時間かかると思うし、もう1人の自分と向き合ってみたいから。みんなには、迷惑かけると思うけど…」
「分かった。俺たちの都合で勝手に連れ出したんだし、ソウマのしたいことをすればいいと思う。オスコによろしくな。会ったことないけど、こいつが失礼なこと言ったし」
そう言ってエントを指差した。
「じゃあ、1か月頑張れよ!」
俺たちはソウマと別れ、山を下りた。
「黄昏時ですね」
ギルドは今山のふもとで微笑んだ。
「そこにいるのは分かっていますよ。出て来てください」
茂みからふわふわと浮かぶものが出て来た。
「うう。さすがですね」
「魂だけ飛ばして来ましたか。スラキ」
「いつになったら助けてくれるんですか!もう半年経ちます!」
「彼らが力を持った時です」
「そんな周りくどいことしなくても、直接やればいいんじゃないですか?」
「私はもう戦えません。ちょっとした相手ならまだしも、あいつらと戦ったら体が持ちません」
「くう。分かりました。お父様によろしく伝えておいてください」
「はいはい。分かりましたよ。今は会いたくありませんが」
「また喧嘩して…それじゃあこれで」
スラキは帰っていった。
「本当に、不便な体です。戻してもらいたいのですが、そうはいかないでしょうし」
そろそろ、帰らなければいけない。いつまでも偽りの自分でいるのは少々息苦しいので、ストキに素直に謝って少しの間戻してもらえないだろうか。彼がそんなに簡単に戻してくれるとは思えないが。
オスコは今山に到着し、とても驚いた。妖獣がこんなにいるなんて聞いてないし、何だかずっと視線を感じる。
「おーい、こっちこっち」
「おーいじゃない!こんなの聞いてないぞ!」
「ごめん。今日妖獣になったから伝え忘れてた」
「動物ならまだしも、こんな数の妖獣の世話をしろと?」
「だ、大丈夫。僕も1か月ここにいるから」
「まあ、約束は守る」
そんな押し問答をしていると、誰かが走って来た。
「どうしたの?イネイさん」
「手帳忘れました…」
「どこに?」
「分かりません。でも、この辺りにあると思います。私の匂いがします」
「分かった!手伝うよ!ほら、オスコも手伝って!」
「は?」
おかげで、初日は手帳を探し続け、土まみれになった上に、説明を全く聞けなかった。腹の立つ狐だ。だが、本当に天然のようなので何も言わないでおいてやった。




