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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第七章 ギーヨとキョウ
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第五部 それぞれの過去

 次の日。ライトは今日だけは早く起きた。なぜなら…

「おはよ。誕生日おめでと、ライト」

そう。今日は自分の誕生日なのだ。とはいえ、この世界では基本的にあまり誕生日を祝う習慣はない。祝いの言葉とちょっと豪華な食事くらいだ。パキラの時は、お礼やヒノガの願いのためだったのだ。でも、誕生日の美味しい朝飯をいつものように寝坊して冷めた状態で食べるのは嫌なので、早起きしたのだ。

「俺も早く起きたぞ!」

「お、エントもか!」

双子の兄弟なので、当然誕生日も同じだ。その後、ちょっとだけ豪華な朝飯を楽しんだ。

「僕、今日行きたい所があるんだ。誕生日の日だけど、行ってもいい?」

「ああ。俺らはゲームでもして過ごしてるから」

人間界から輸入したゲームは、噂通りかなり面白かった。やり過ぎない程度に、ほぼ毎日している。

「私も。ギーヨ様が、妖石について話したいことがあるって」

「じゃあ、4人でゲームでも…」

「馬鹿!特訓だ!」

「ええ。誕生日ぐらいいいじゃないか」

そんな感じでやり取りしていたら、ソウマとアインは出かけて行った。


 「ここでいいのかな」

ソウマはある建物の前に立っていた。

「あ!ソウマさん!こっちです!」

建物の中からキョウさんが出てきた。しばらく歩くと、ある部屋の扉を開けた。部屋の中は少し寒かった。自分は寒さが苦手なのだが、贅沢は言えない。なぜ寒いかというと、目の前にいる人物が氷猫、オスコだからだ。

「どうして、私を生かした」

オスコは少し睨むように僕を見た。

「逆に、殺す理由なんてないさ」

「おかしな奴だ。自分を殺そうとした奴を生かすとは」

「分かる気がしてさ。あなたの気持ちが。失った悲しみを引き摺ってるんだよね?」

「何故分かった」

「僕も同じような経験をしたから。あなたが失ったものは大切な人。違うかな?」

「正解だ。お前もそんな経験をしたのか?」

「うん。だから、僕は山に籠った。似たもの同士じゃない?僕たち」

「言われてみればそうだが、お前は私のようなことはしていないだろう」

「うーん、間接的に、してたような気はするけど…」

「何故ここに来た。私を慰める為か?」

「それもあるけど、お願いをしに来たんだ」

「お願い?」

「今山に、住んでもらえないかなって。なるべく行くようにしてるけど、結局週に1回くらいしか行けないから、動物たちが心配なんだよね」

「だが、私は回復技が使えないぞ?」

「僕が本を置いておくから。やってくれないかな?もちろん生活は保証するし、僕も出来る限り頻繁に行こうと思ってるから!」

「それだったら、1か月待っていただけませんか?猫の国は色々と手続きが面倒なんです」

「は、はい」

オスコは何も言っていないような気がするが、王の側近には逆らえないだろう。


 「アインさん」

ギーヨ様がそこにいた。この人は忙しいはずなのに、私の相手をしていて大丈夫なのだろうか。

「おはようございます。妖石について話したいこととは?」

「1か月経って、様子が見たかったんですよ。貸してもらえませんか?」

「毎日磨いているので、綺麗だと思いますが…大丈夫でしょか…」

「そうではなくて。妖力の入り具合がどうかと、この石の前の持ち主について知りたかったので」

「前の持ち主さんがいたんですね」

「妖力の入り具合はいいようです。それにしても、彼は面白いことをしますね」

「どういうことですか?」

「前の持ち主は、ライトさんとエントさんのお父様です」

「ええっ!なんで分かったんですか?」

「まず、石があなたに試練を与えた時、電気の壁を張っていました。次に、残った妖気がライトさんとエントさんに似ているんです。感じとってみて下さい」

確かに、この妖気は、ライトさんのような優しさと、エントさんのような力強さを感じる。

「どこにいるんだろう…」

「おそらくすでに亡くなっていると思います」

「え…じゃあ、これはライトさんとエントさんにとっては大切な遺品なんじゃ…」

「いや、これはもしライトさんに危機が訪れた時に、貸してあげて下さい。一度きりなので、ここぞという時に」

「は、はい!」

なんだかすごく大事な事を任されたような気がする。


 フウワは自分の部屋で空を眺めていた。この空は、弟の世界まで繋がっているのだろうか。庭では、ライトとエントがイヤイヤ特訓をしており、スインが様子をみてくれている。フウワは少しみんなと違う所がある。それは、半分妖怪で、半分人間の半妖であることだ。でも、自分は妖怪の姿で、双子の弟は人間の姿だ。だから、お互い違う世界で暮らしているのだ。手紙でのやり取りだが、月に一回出せるくらいで、なんだか寂しかった。でも、自分はフォニックスに入ることが出来た。半妖なので、苦労も多いが、逆に弟は手加減しないといけないので、お互い様だと思い、励まし合っている。ただ、怖いのは寿命だ。自分が人間のように100年で死んでしまうかもしれないし、弟が10000年生きて1人ぼっちになってしまうかもしれない。ぼんやりしていると、

「フウワ!自分で言っといてサボるな!」

というライトの声が聞こえてきた。

「今行く!」

とりあえず、今出来ることを頑張ろう。


 

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