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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第七章 ギーヨとキョウ
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第四部 国王の想い

 男を倒したら、前の建物が崩れ落ち、巨大な何かが姿を現した。どうやら、ギーヨ様たちと戦い、変身してこの大きさになったようだ。

「シャイニング流星群!」

光の塊が、辺りに降り注いだ。俺たちは避けるのが精一杯だった。改めて、こんな奴らと戦っているギーヨ様はすごいと思う。大国の国猫の国王なだけある。というか、こんな人でないと務まらないのかもしれない。

「エント君、大丈夫?」

「ああ。こけただけだ」

これは、近くにいたら危険かもしれない。

「どうする?」

「とりあえず、あそこに行こう!」

ソウマは洞窟を指差した。中にフウワがいるはずだ。俺たちは言う通りにすることにした。


 「くっ!」

キョウは至近距離からのこの攻撃を避けきれず、鏡の壁で受け止めてしまった。しかし、こんな技跳ね返せる訳ないし、どんどん自分に向かって落ちてくるので、受け止める数が増える一方だ。自分は王族なのに、全く戦いの才能がなく、いつもみんなとの差に悩んでいた。でも、今はそんなことを言っている場合ではない。受け止めながら、自分の中から不思議な力がみなぎってくるのを感じた。

「ミラーバスター!」

僕は、相手の技を勢いよく跳ね返していた。その技は一本の矢となり、相手の足に突き刺さった。

「待っていましたよ。この時を」

「えっ?」

「あなたには、この力でやってもらいたいことがあるのです。さあ、とどめをさしてみて下さい」

「は、はい!」

僕は一度深呼吸した。

「ミラーショット!」

出してみて、自分でも驚いた。今までは鏡のかけらをせいぜい2、3個飛ばせる程度だったのに、今は少なくとも100個程のかけらを飛ばしていた。

「ええっ?」

「あなたは王族ですし、何より力が眠っていたんですよ。これくらいの」

大量のかけらは、全て相手に命中し、相手は小さくなって倒れた。

「や、やった…!」

「これで安心して任せられますね。…この国の王の座を」

「はい!?」

「安心してください。6年後の話です。その間、あなたは国王に相応しい人物になってください」

「そんなに嫌なんですか?国王の座が」

「嫌ではありません。しかし、やりたいことが出来ました。いいですか?あなたに任せて」

「はい!ギーヨ様は、ご自身の夢を叶えて下さい!応援してますから!」

でも、ギーヨ様がやりたいことってなんだろう?放浪でもしたいのだろうか?とりあえず、自分は自分の出来ることをするまでだ。


「キョウさん、すげー!もうキョウ様ですね!」

エントさんが走ってきた。相変わらず元気だ。その隣ではライトさんが呆れている。そして、ソウマさんとフウワさん、スインさん、その左には…アインさん。もう7年前の話だ。光狐の中でも好戦的な集団が猫の国の国境にある街を襲ったことで起こった戦争は。自分はその戦争を鎮めたが、生き残ったものはほとんどいなかった。その中のうち2人がスインさんとアインさんだ。僕はその2人を猫の国に匿ったのだった。理由はよく分かっていなかった。そんなことは初めてだった。でも、今は分かる。すでに7歳のアインさんに惹かれていたのだ。でも、国王は位の高い者としか結婚出来ない。だから、アインさんが成人する6年後に王位を降り、アインさんに告白しようと思っている。断られたら、世界を放浪する気だ。自分たちの人生は10000年以上ととてつもなく長いが、アインさん以上に惹かれる女性はいないと思う。恋愛ものをみる度に、理解出来ないと思っていた自分が、実際にこうなるとは。人生って分からないものだ。

「行きましょうか、キョウ」

100年程生きてきたがこの6年は長く感じるだろう。


 「行っちゃったね。ギーヨ様」

「今日のギーヨ様、なんか変じゃなかった?」

「何言ってんだ、ソウマ。いつも通りだったじゃんか」

「なんだかずっとぼんやりしてたような…」

「それより、帰ろうぜ。もう4時だぞ」

「えっ!昼飯食べてなかった…」

エントさんのお腹が鳴った。

「でも、もう晩ご飯だな」

「じゃあ昼飯の分も食うぞー!」

「元気だねえ」

ギーヨ様、会う度に何か考え込んでいるような気がする。悩みごとならまた今度電話して聞いてあげるのもいいかもしれない。お昼時なら空いてるだろう。ぼんやり考えていると、歩くのが遅くなっていたらしい。

「アイン?置いてっちゃうぞ?」

「い、今行く!」

でも、本当にみんなに出会えて良かったと思う。失ったものはたくさんあるけれど、フォニックスに入ってから様々なものを手に入れることが出来た。

 その後、家に帰り、いい匂いがすると思ったらコウがクッキーを焼いていた。

「珍しいな、甘い物を作るなんて」

「べ、別に俺が食べたくなっただけだ!お前らの喜ぶ顔が見たかった訳ではない!」

いや、絶対違うだろう。そもそも、コウは甘い物が好きではない。素直になれないコウが、なんだか可愛く見えてきた。





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