第二部 残党たち
「何者だ!」
「フォニックスだ!」
「見つけたぞ!国王様の仇!」
蛇たちが一斉に襲いかかって来た。しかし、この程度なら俺たちでもどうにかなりそうだ。ソウマが先陣を切って攻撃してくれた。
「リーフカッター!」
葉が刃となり、相手に降り注ぐ範囲攻撃だった。確かに、今回は範囲攻撃が有効だろう。なぜソウマがギルド様にあんなことを言われたのか、本当に謎だ。
「連続爆風拳!」
フウワはこの技が気に入ったようで、技自体は変わっていないが磨きがかかっていた。
「バーニングタックル!」
エントは1人にしかぶつかっていないが、周りも巻き込んでいるので、相手にとどめをさしてくれた。俺も負けていられない。練習中だが、これを使うしかない。
「エレキショット!」
スインがいつも使っている技をみて思いついたのだが、射撃が苦手なので、途中で散らばらせて範囲を広げてみた。おかげで、全く別物になったけど。ちなみに、スインとアイン、ギーヨ様はキョウさんの解放をしてもらうことにした。
「エント君!出来そう?」
「ああ。やってみるか!」
「ダブルストーム!」
エントのバーニングストームとソウマのグラスストームの合わせ技だろう。すごい勢いだ。おかげで、相手はほとんどいなくなった。ちなみに、俺とフウワの合わせ技は今の所全く上手くいっていない。こちらは普通に攻めるしかなさそうだ。また練習しておこう。
一方、アイン。キョウを助けようにも、鍵のついた檻に入れられていた。
「ギーヨさ…」
「静かにしていてください。今開けますから」
「姉さん、出来そう?」
「うん。練習に練習を重ねたもんな。ピンポイントショット」
鍵は壊れ、ドアが開いた。キョウさんをなんとか助け出すことが出来た。しかし。
「ここにいたのか。氷狐。国王様の仇はたっぷりさせてもらうぞ」
そう言うと、辺りの景色が変わり、周りに誰もいなくなった。
「ここは異次元。ここにいるのは、俺とお前だけ。誰の助けも呼べない。まあ、安心しろ。体だけは元の世界に帰してやるからさ」
思えば、こんな状況初めてかもしれない。絶対に負ける訳にはいかない。
「アイスクラッシュ!」
氷の塊を相手に落とす技なのだが、あまり効いていなかった。あの技はあまり使いたくないのでだが、やるしかない。
「フリーズウインド!」
蛇の国王に無意識に使っていたあの技だ。でも、しばらくは生きられるように調節はしてある。
「妖石のおかげだ」
妖石はあの後ネックレスに嵌め込まれた形で届いた。おかげで、ただのアクセサリーのように見せることが出来る。異次元から元の世界に戻れたようだ。姉さんがすぐに近寄って来た。
「怪我はない?」
「大丈夫だよ。姉さん。いつまでも私は小さい頃のままじゃないんだから」
姉さんは私の頭を撫でた。
「でもな、分かっとっても心配になるもんやで」
「うん。気をつけるよ」
「ソウマ!大丈夫か?」
「うん。ちょっと擦りむいただけ」
僕は不覚にも不意打ちをくらってしまった。
「ふふふ。私の気配を感じ取れる者などいない。全員倒して、氷狐を絶望させてやる」
「なんでそんなにアインにこだわるんだよ!」
「当たり前だろう。我が国王の仇だからな」
「国王のやってたことが正しいとでも思ってるのか?」
「国王様は国のために努力してくださった!」
僕は初めて、相手を殴っていた。
「分からないの?あいつがしたことがどんなことか!改造して無理矢理強くなったって、いつかはガタがくるし、そのあとは一生残る!その人の人生を変えちゃうんだよ?」
こんな大声で一気に話したことはあっただろうか。その後のことは全く覚えていない。
「ソウマ!もういい!」
気づいたら、相手は倒れていて、エント君が僕の腕を掴んでいた。
「エント君?これ誰がやったの?」
「お前だよ、ソウマ!覚えてないのかよ!」
不思議なことに、そんな記憶は全くない。
「ううん。全然覚えてない」
「確かに、あの戦い方はソウマらしくなかった。いつもなら、ここまでやろうとしない」
疑問しかないのだが、今はそんなことを考えている暇はなかった。
「姉さん!」
こちらはピンチを迎えていた。今度は姉さんが捕えられてしまった。
「お前が大好きな“姉さん”が殺されたくないのなら、おとなしくついてくるんだな」
「アイン!ついて行ったらあかん!」
「姉さん…でも、姉さんがいなくなったら、私…」
ちなみに、ギーヨ様とキョウさんには強そうな人をやってもらっているので、ここにはいない。
「さあ。早くしないと、こいつの命はないぞ?」
前に一歩踏み出した瞬間、大量の影が見えて、男に覆い被さった。
「なんだ!こいつは!」
もうそれで誰かわかった。
「なんで来たの!コウ!」
男が影を蹴散らすと、姉さんはもういなかった。そして、コウは隣にいた。
「なんとなくこっそりついてったら、助けが欲しいふいんきだったから」
「ふんいきね」
「どっちでもいいだろ!」
「ありがとな。コウ君」
「礼をする時間があったら、戦え!そしてさっさと帰ってこい!待ってるから!」
礼を言うのような気もするが、いまは戦いに集中しよう。




