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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第七章 ギーヨとキョウ
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プロローグ 狙われた王の側近

 九月、猫の国。王の側近であるキョウは、重いため息をついた。ギーヨ様がフォニックスを気にかけ、すっぽかした仕事がこちらに回ってくるのだ。大体、あの集団に何があるというのだ。これ以上仲を深めると、反感を買いかねない。実際、彼らは自分なんかよりずっと戦いに長けているけど。キョウは元々戦いが得意ではないのだ。そんなことを考えていたら、もう王宮が見えて来た。今日からまた仕事だ。1日しか休んでいないのに。隣の茂みががさっと音を立てた。鈍い自分は振り向くのが遅く、伸びて来た手に気づくのに遅れ、いとも簡単に捕まってしまった。その姿を見る前に、キョウは気を失った。


 「見つからないんですよ。キョウが」

俺たちが朝食をとり、さあどの依頼を受けようか、と言っていた時にギーヨ様はやって来た。しかし、彼の顔は今までで1番真面目だった。

「見つからない?」

「はい。王宮に来ないと思って家を見に行かせたり、周辺を探させたりしたのですが、全く見つからないんですよ」

仕事が嫌になって逃げ出すこともあるだろうが、キョウに限ってそんなことはないだろう。となると、さらわれた可能性もあるのだが…

「キョウさんがさらわれることなんて、そんなことはないでしょうし…」

「いや、彼ならあり得てしまうかもしれません」

「え?」

「見かけによらずドジで鈍いので、奇襲攻撃ぐらいしか出来ないんですよ。あと、どんな相手でも殺すことが出来ません」

ひどい言いような気がするが、確かに彼は優しすぎるのだろう。

「もしさらわれたとしたら、通った道を確認して行けばいいと思います」

「そうなりますね。どうか、手伝って頂けないでしょうか」

そう言ってギーヨ様が頭を下げた。

「ギーヨ様!立場はあなたの方が上です!頭を上げてください!」

「それに、キョウさんが逃げ出した可能性だってありますし!」

「彼はそんなことはしないということは、僕が一番分かっています。それに、彼を取り戻すためなら、そんなことなんて気にしません」

「ギーヨ様…」

ギーヨ様は思っていた倍以上にキョウさんを大切に思っているようだ。側近はたくさんいるけれど、その中でも思い入れが深いのかもしれない。それがキョウさんに伝わっているといいけれど。

「行こうよ!みんな!僕はギーヨ様の思いをキョウさんに伝えてあげたい」

今まで何も話さなかったソウマが、突然立ち上がってそう言った。彼もギルド様にに認めてもらえるよう頑張っているのだろう。勘違いかもしれないが、気持ちが落ち着かないのだろう。

「ソウマ。ありがとな。おかげでやる気が出た。みんなは?」

みんなも相槌をうった。

「ありがとうございます。そうですよね。周りがなんと言おうと、このことについては自分自ら行動しようと思います。守りたいものは自分で守らなければいけないですよね」

「最大限の手助けはします。絶対に見つけましょう」

「とはいえ、これでサボっているだけだったら、狐の国までぶっ飛ばしますけどね」

みんなが凍りついた。

「冗談ですよ」

笑えない冗談だ。キョウさんが本当に捕まっていることを願いながら、俺たちは動き出した。


 俺たちはとりあえず周辺を探したが、どこにいるか見当もつかなかった。

「うーん、どうにか出来ないかなあ」

とはいえ、これ以上イネイに頼るのもどうかと思う。

「何か手掛かりがあれば…あれ?ソウマは?」

辺りを見回すと熱心に草を眺めていた。

「ソウマ!今は関係ないだろ!」

「狐の国にはない草が…ああっ!」

ソウマは半ば無理矢理に連れて行かれた。

「ライト君!」

「また草の話か?」

「違うよ!あそこの茂みの葉っぱが不自然に落ちてるんだよ!」

確かに、言われてみるとそうだ。

「じゃあ、この先を進んでいくか」

慎重に茂みを抜け、しばらく歩くと森が開けていた。隠れて様子を伺うと、驚いた。蛇がそこにいたのだ。しかも、キョウさんが捉えられていた。

「氷狐はどこだ!」

「知りません!」

「嘘をついていることなど分かっている。言わなければどうなるか知っているだろうな」

「僕は未熟だとしても王の側近であり、この国の王族なんです。決して知り合いを売るような恥ずべきことはしません!」

「そうやってカッコつけていられるのも今のうちだぞ?」

キョウさんは思っていたより大物かもしれない。

「アイン?」

アインは立ち上がった。

「私のせいでキョウさんが苦しむなんて見てられない!」

「アイン!待て!お前が行ったらどうなるか分かってるのか!」

俺は思わずアインの尻尾を掴んだ。

「そこに何かいるな。調べろ」

しまった。でも、どのみち戦うので、同じかもしれない。

「スイン、アイン。頼むぞ」

2人は頷て消えた。1人の男が前に来た瞬間、俺たちは茂みから飛び出し、男に蹴りかかった。

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