第三章 国王の目論見
「また来やがった!」
言葉の通り、1人倒したと思ったらもう1人来た。今度はスピードに優れていそうな見た目だ。そう思っていたら、目の前に来ていて、自分に向かって技を放とうとしていた。
「アイン!」
その時、空から星のような物が降って来て、攻撃を阻止した。
「間に合いましたね」
空を見上げると、ギルド様と、
「ツーハちゃん!?」
「ツーハ、さん上!」
「ありがとうございます、ツーハさん。でも、危ないので帰って下さい」
ツーハちゃんは渋々帰っていった。
「さて、始めましょうか」
「え?いいんですか?」
「ええ。しかし、僕がするのは1番強い方と軍隊だけです。後は頑張ってください」
「はい!頑張ってください!」
「後は、この体がどこまで持つかですね」
そんなギルド様の小さな声は誰にも聞こえていなかった。ギルド様は、やはりすごかった。一瞬で目の前の敵がバタバタと倒れていった。一方、私たちは、相変わらず苦戦していた。やっとの思いで倒しても、すぐに次の敵が来るのだ。まだ2人しか倒せていない。
「圧倒的に不利だ。どうすれば…」
「姉さんはどう思う?」
姉さんはもういなかった。
「あれ?姉さん?」
私がキョロキョロしていると、大きな爆発音が聞こえた。王宮の方だった。おそらくギルド様だろう。
「いくら王の側近だって、あいつに勝てる訳がない。勝敗は決まったな」
男は笑い始めた。確かに、今のままでは圧倒的に不利だ。でも、諦める選択肢はなかった。何も言い返せずにいると、
「あの」
と誰かが言った。ギルド様だった。
「言っているのは、この方でしょうか?」
ギルド様は、倒れた1人の男を指差した。
「な、何だと…」
「じゃあ、私はこれで」
ギルド様は、すっと消えてしまった。
「何のために、こんなことをしているんだ」
「じゃあ、俺を倒せたら答えてやる」
「約束だぞ」
そう言った途端、男の周りに水が満ちて来て、男にぶつかった。
「ふう。約束は守ってもらわんとなあ」
「姉さん、すごい!」
「いや、ための時間が長過ぎやし、妖力も使うから、あんま使えやんのやわ」
「で、答えないのか?」
「分かった。国王様は、ご自身で狼の協力を得て、我らを作り出したそうだ。全ては国のため、と」
「でも、これで戦争を起こしても、周りの国ならすぐ収めてしまうで」
「ああ。だから、王は最高傑作を求めて実験を続けていらっしゃるのだ」
私たちは、顔を見合わせた。
「じゃあ、それが出来る前に、何とか止めなきゃ」
「ああ。あまりしたくはないが、殺すこともあり得るかもしれない」
「とりあえず、王宮に急ぐで!」
私たちは、王宮に向かって走り始めた。
私たちは、実験室に戻った。いくつか焦げた跡があった。しかし、研究は出来るようで、もう研究を始めていた。
「どうする?」
「近づこうにも、見張りが多過ぎる」
「さっきので、余計見張り増えとるんちゃう?」
「じゃあ、私が行くわ」
後ろから声がしたと思ったら、パキラだった。
「いいのか?」
「どうせ刑務所に戻ったって、退屈なだけだもん。それなら、恩返しでも、しようと思ってさ」
色々理由があったけれど、パキラの感謝の気持ちが伝わって来て、心が温かくなった。
「じゃあ、任せたよ」
パキラはそのまま隠れもせず歩いていった。
「またお前たちか!今度は逃がさないぞ!」
「捕まえれるものなら捕まえてごらんよ」
パキラは外の方へ走って行った。パキラのおかげで、見張りがいなくなったので、私たちは王の前に立った。
「もう言い逃れは出来ないよ!」
「覚悟しろ!さもないと殺すぞ!」
王は怯んだようだ。
「こんな所で、終わってたまるか!」
何故だろう。もしかしたら、もう戦争なんて起きてほしくない、そう思ったからかもしれない。私は国王を氷付けにしていた。その時、自分のしたことに対して恐怖を覚えた。
一方、パキラ。1人で倒せるはずのない数の改造人間たちに囲まれていた。大体予感していたが、これで自分の運命は決まったような気がする。だが、パキラのすることには変わりはない。ただ闇雲に、技を出しているような気がする。やがて妖力が尽き、意識がぼんやりとしてきた。そんな時だった。誰かが自分を抱き抱え、茂みに突っ込んだ。何故生きる価値もなく、たくさんの人々を恐怖と死に陥れた自分を助けようとするのだろう。自分も死んでしまうかもしれないのに。ゆっくり目を開けると、火猫がいた。挨拶程度しかしなかったので、あまり知らないが、確かヒノガという名前だったと思う。
「ここで休んでおいてください。後は僕がやりますから」
彼は、眼光の鋭さとは不似合いな優しい声でそう言った。彼が立ち上がり、戦おうとした時だった。雷狐が呼びに行った、鼠の国軍がやって来たのは。
「間に合ったか?あ、ヒノガ!」
「やれやれ。人が一生懸命戦っているというのに、お前だけ安全な所に行くとは、どういうことだ」
「だって、これが最善の方法なんだろ?」
「分かっている」
彼は、何故か少しだけ怒っていた。




