第四部 氷山の主
視界が開けると、牙を剥いたオスコがいた。
「貴様ら如きに、邪魔をされてたまるか!」
あまりの気迫に、一瞬たじろいだ。しかし、それがいけなかった。体が急に言うことを聞かなくなり、気づいたらオスコの前に立ち、ソウマとフウワを睨んでいた。操られてると気づいた時には、もう遅かった。体が勝手にソウマを襲おうとしたのだ。だが、何とか抵抗した。しかし、気を抜いたらまたやってしまいそうだ。そんな時、自分を通り過ぎ、オスコに向かう影があった。ソウマだった。
「オスコさん!本当は、あなたはそんな人じゃない」
「お前に何が分かる!」
「分かるさ。だって、どこか苦しそうなんだもん」
「うるさい!お前ら全員、消えてなくなれ!」
オスコは、とんでもないエネルギーを帯びたビームを放った。ソウマとフウワは避けられるだろうが、俺は動けないままだった。どんどん近づいてくるビームに、覚悟を決めようとしたが、やはりソウマは避けなかった。
「ソウマ!」
「今のうちに…エント君を助けて…」
ソウマの腕が凍り始めていた。俺は助け出されたが、気が気じゃなかった。
「お前だけでも、消してやる!」
「僕だけなら構わない。でも、これ以上被害者を増やすくらいなら、たとえさし違えてでも倒す!」
「ソウマ!」
俺が思わず叫んだのと、ソウマがオスコの技を跳ね返したのは、ほぼ同時だった。辺りにオスコの叫び声が響き、大爆発が起こった。すると、俺の体が軽くなった。
「ソウマ!」
今は何より、ソウマを助け出すのが先だった。土埃のなか進んで行くと、倒れたソウマがいた。気を失っていて、腕や足が凍っていたが、息はあるようだ。ひとまず安心して、病院に急いで連れて行くことにした。
「フウワ!後は頼む!」
「ああ。急いで連れてってやれ!」
俺は病院まで走って行った。幸い、ここはショボウ町に近いので、すぐ病院までいけそうだ。
「ソウマ、死ぬなよ。俺のために死なれたら、どうしていいのかわからないから」
返事もなく、これからそんなこともあるかもしれないということは、よく分かっていた。でも、言わずにはいられなかった。
「向こう、苦戦してるのかな。3人でやるには、無理があったんじゃ…」
3人がなかなか帰って来ないので、アインは不安になってきた。
「どうだろうな。あの3人を信じるしかない」
この時丁度エントさんがソウマさんを病院に運んでいたなんて、知る由もなかった。




