第三部 チーナ、ヒノガ
その頃、ライトは敵を前にして動けないでいた。敵はチーナというらしいが、雷技が全く効かなかった。自分の運の無さにむしろ呆れる程だった。
「もう終わりなの?案外呆気なかったわね」
と鼻で笑うチーナに、ライトは少しむっとした。
「卑怯だぞ!」
「別に大会とかじゃないんだから、ルールなんてないし」
「そうか。じゃあこれもありだよな!」
ライトは道とは逆方向、つまり狐の国の方へ走っていった。
「ちょっ、逃げる気?」
ライトの足は止まらない。やがて本拠地のある町、ショボウ町に辿り着き、ライトは警察署に突っ込んでいった。署長室にはギルドがいて、ライトを睨んでいた。
「勝手に入ってくる人がいますか?」
おそらくライトだと気づいていなかったのだろう、ライトの近くで爆発が起こった。ライトはギリギリかわしたが、チーナには直撃した。恐ろしい攻撃だと、ライトは肝を冷やした。
「おや、ライトさんでしたか。失礼しました」
やはり、気づいていなかった様だ。もし当たってから気づいたらどうしたのだろうと、ライトは心配になった。
「その方は、どなたですか?」
「戦ってた奴です」
チーナは気絶していた。
「そうですか…あとで猫の国に送っておきますね」
そう笑ったギルドはどこか少し怖かった。
そんな頃。アインは目の前の敵に何も出来なかった。相手はヒノガというらしいが、どんな攻撃も通用しなかった。
「氷狐とは、初めて見るものだ」
やっぱりこうなってしまう自分が情けなかった。ヒノガが指を鳴らすと、自分の体がいう事をきかなくなり、意識が朦朧としてきた。負けたく無いと、アインが強く思うと、それは一切なくなった。しかも、なんだか自分が自分ではないみたいだった。自分でもよくわからないまま走り出し、気づいたらヒノガに攻撃していた。アインは不思議な状況に戸惑いながらも、自分でそれが制御出来る様にする努力をすることにした。そこで、即興で技を出してみることにした。
「アイススラッシュ!」
氷が刃物の様になり、相手を襲った。大きな爆発と共に、ヒノガは倒れた。そのまま、前に進むことにした。歩いていくと。ソウマさんが雑草を見つめているのを見た。ライトさんはまだ来ていないようだ。
「アインちゃん。ライト君が帰ったらお昼ご飯にしようよ」
なぜかソウマさんだけが私をちゃん付けで呼ぶ。自分でも分からないが、個人的には少し気に入っていた。
「待ったか?」
「いや、今来た所だし」
そして、お弁当を食べて、先に進んだ。




