プロローグ 異国からの依頼
ここは、猫の国。まだ未熟だというのに何故か王の側近となったキョウは、頭を抱えていた。
「お困りですか?」
と言うのは国王、ギーヨ。この世に5人だけ存在して、全ての技を使いこなす“技神”の1人だ。
「困ってるも何も、なんで僕なんかを側近にしたんですか!」
「それは、いずれ解ります」
これに関してはかなり困っている。側近以外の年上の人達によく睨まれる。嫉妬なのだろうけど、あまりいい気にはなれなかった。
「困ってるのはそのことですか?」
「いや、ロスト団のことです」
ロスト団とは、街にやって来ては強引に金目の物を持っていく困った集団だ。軍を動かせば簡単に退治出来るのだが、光狐との争いに精一杯な今は、戦力を割くことは出来ない。
「それなら、フォニックスに頼んでみるのはどうでしょう」
フォニックスの噂は、少しは聞いたことがある。しかし。
「さすがにそれはどうかと…!」
「庶民では力不足だと」
思っていた事を言い当てられ、言葉に詰まるも、
「い、いえ!狐に頼んで良いのかと!」
と勢いで言っていた。
「良いですよ。本拠地からそんなに遠くないでしょう」
「分かりました…」
こうして、フォニックスに依頼をすることになった。
俺はカレンダーをめくり、つぶやいた。
「もう5月だな」
思えばあっという間だった。ずいぶんとみんなと馴染んできた気がする。その時、ドンドンとドアを叩く音がした。ドアを開けると、そこにいたのは、猫の使者だった。
「国からの依頼です」
とだけ言うと、どこかに行ってしまった。驚きのあまり立ち尽くしていると、
「どうしたの?ライト君」
とソウマが話しかけて来た。
「と、とりあえず、中に入ろう」
みんなにその事を伝えると、みんな目を丸くした。
「まさか国から依頼が来るとはなあ」
「これを解決したら、猫たちの信頼を得られるな」
しかし、国からの依頼となると、相当難しくなるだろう。
「みんな、どうする?」
「そんなの決まってんだろ」
「私たちは行くよ」
「僕も行くよ」
「それなら、行くか!」
「弁当、持ってくか?」
コウは言葉は話せるが、敬語を使えないらしい。そこは大目に見ている。
「えっ、コウが作ったのか?」
コウが今まで料理を作ったことは無かった。でも、一応もらっておくことにした。
地図通りに行くと、猫の使者がいた。
「どうぞ宜しくお願いします」
そう言って道の奥を指差した。おそらくロスト団の本拠地があるのだろう。真っ直ぐ進むと、道が六つに分かれていた。偶然なのか、ロスト団の作戦なのか分からないが、一人ずつで行くことにした。少し緊張感を覚えながら、道を進んで行った。




