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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人咬みのエコロケーション

作者: 初月・龍尖



 

 陽が落ちて闇が支配する時間がやってくる。

 ただ、街から光が消え去ることはない。

 目の見えないぼくには関係のない事だけど。

 ぼくは刺激臭だらけで昼のように明るい街を歩く。

 光を肌で感じるので明るいのが判る。

 陽のように肌を焼く光でないことも判る。

 夜だというのに道はまだまだ人であふれている。

 人々の話声、足音、衣擦れ、機械音、セカイは音で満ちている。

 ぼくは流れに逆らわないように住居区域へと足を進める。

 その途中でいつものように道を一本外れる。

 誰もいないことを確認して杖を畳み腰のホルダーに吊るし空を見上げる。

 耳を澄ませると建物の向こうの喧騒が届く。

 脚へと血液を集め腰を下ろしてちからを溜めて飛び上がる。

 空気を切り裂きぼくの身体が空へと舞い上がる。

 両手を広げ風を受ける。

 上昇気流を聞きそれに身体を載せると少し肌寒くなった。

 ぼくは飛びながらかかとを打ち鳴らした。

 小さな衝撃は薄く広がりぼくの脳内にセカイの今を映し出す。

 空から吟味して今日の餌場を決めるとゆっくりと枝の上に降り立った。

 街の明りはすっかりと失せていておぼろげな月が頼りない明りを落としていた。

 ただ、枝が重なるように生えていて地面までその明りは届いていなかった。

 ぼくは息をひそめながら枝に足をひっかけて逆さに下がると火の爆ぜる音がする方向へ意識を向ける。

 距離はあったが集中をしたことでその全容を汲み取ることができた。

 ぼくは枝を軸にして飛び上がると焚火のそばでうたたねをしていた男の首へと歯を立てる。

 片手は両目を、片手は鼻と口を覆った。

 かみ砕くように歯を立て飛び出した血を飲む。

 かみついた瞬間の驚きとぼくの唾液の即効性麻痺毒のおかげで男は石のように固まった。

 ある程度飲んだところでぼくは男を焚火の中へ放り込んだ。

 火は大きく爆ぜ大きな音を上げた。

 ぼくはそんな火を背にテントへと歩み寄った。

 テントの中では男の妻が寝ている。

 そして、テントの入り口では。

「やあ、おはよう。寝ていれば静かに終わったんだけどどうする?」

 男の息子が座り込んでいた。

 歯の鳴る音が聞こえる。

 男の子の髪を握って釣り上げて強引にくちびるを重ねる。

 強引に舌ねじ込み絡ませぼくの唾液を彼の口の中に軽く擦り込む。

 震えの音が止み、静寂が訪れる。

 男の子の服を切り裂きテント内部から見える位置に立たせて女の方へとゆっくりと近寄り寝息を立てる女の口へとぼくの唾液をたらした。

 これで眠ったまま死ぬ。

「静かになった」

 ぼくは男の子へと近寄り耳へ囁いた。

 男の子の背中に回り抱き着くように後ろから股をまさぐり小さくしぼんだ棒と玉を揉む。

 耳たぶをかみながら揉み続けているとそれはだんだんと硬くなってくる。

 テントの中に跳ね返る呼吸音がだんだんと荒くなる。

 ぼくのものに混じって男の子の音も聞こえる。

 麻痺が解けてきたんだ。

 止まっていた感覚が戻ってくるっていうのをどう表現したらいいのかぼくは知らないし知りたいと思わない。

 だって必要ないから。

 彼の鼓動に合わせて棒の先端を手のひらで擦り玉を握る。

 震えに合わせて白濁とした液体がテントの中に弾け棒が暴れる。

 そんな棒を放り出しぼくは彼の首を強引に後ろへ向けくちびるを重ね舌を絡ませてそれを奥から引き抜いた。

 ぼくの胃と彼の胃へ血が流れる。

 引き抜いた舌と一緒に血を胃に収めぼくは彼の背を思いっきりけった。

 首が元の位置に戻ろうと動きテントの中は白と赤が混ざった。

 テントから出て地面をあるリズムで踏み鳴らす。

 すると木の陰が音をだしてぼくの方へ寄ってきた。

 それといくつかやり取りをしてぼくは再び空へ舞い上がった。

 月の光が寂しい。

 そろそろ夜明けが近いみたいだ。

 少し楽しみすぎたかなと思ったけれどたくさん飲めたしよしとしよう、しばらく飢えで困らずに済みそうだ。

 古い集合住宅にある自室へ飛び込みシャワーもそこそこに寝床で丸くなった。

 少し眠ったらすぐ仕事だ。

 遅刻だけはないようにしたい、家賃はただじゃないんだ。

 食費はただみたいなものだけど。

 

 

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