ホラーが苦手な私の、ホラー作品の読み方【※本作品には怖さ無しのはずですが、ダメだったらすみません】
突然ですが、タイトルにもありますように、私は怖い話が大の苦手です。
なのに、世間では"夏はホラー"とばかりに、様々な心霊特集が組まれます。
「小説家になろう」さんでも、毎年恒例『夏ホラー』が開催されました。
新作に、ホラーの波が押し寄せるっ!
うっかり読み始め、「しまった、これホラーだったぁぁぁ」と気づいても、もう遅い。結末が気になって、途中でやめられない。
ホラーの波にさらわれ沖に流されたら、必死こいて岸まで泳ぎ戻るしかない。
そして読後は、冷え冷えに冷えた心身に、震える結果となるのです。下手したら、しばらくは"恐怖"という後遺症に悩みます。
しかし、自ら飛び込むホラー作品もあります。
それは、"推し作家"様が、"新作"として書かれたとき。
ホラーは怖い、だけど、新作は読みたい。だって絶対、面白いはずだもの。
最大の問題は、腕の良い作家様ほどホラーが怖い! と、いうこと。
もうもう、どうしたものか。
ホラーは、怖い余韻を残してこそのホラー。
それはわかっちゃいるのですが、自己防衛本能が働いて、私の脳内ではホラー読後、自動的にハピエンへの二次創作が始まります。
作家様の意図するところではないかも知れません。
だけど、心の中でこっそりやる分には許されるはず!
原作を汚すつもりはないし、「それでも読みたいんだ」という想いのほうを汲み取っていただこうと、こう割り切るわけですね。
ではここで、ホラー苦手な私の同類たちに向けて、私のホラー克服法を述べたいと思います。
作者様に許可を得て、数作品ほどご紹介させていただきましょう。
あくまで私の中の"IFルート"として、本作の展開とは何ら関係なく、作者様のファンの皆様には寛容にみていただけますと幸いです。
(※完全にネタバレします。ホラーを楽しみたい方は、本文をスキップして次の2作品を先にお読みくださいますよう、オススメします。でも哀しく怖い作品です、ホラー苦手な方はご注意ください)
◆ 猫じゃらし様 作:『隠れ子』
https://ncode.syosetu.com/n7210hb/
◆ 鞠目様 作:『あとはお父さんだけなんだ』
https://ncode.syosetu.com/n8499hb/
◇
【パターンA】
◆ 猫じゃらし様 作:『隠れ子』
https://ncode.syosetu.com/n7210hb/
何十年も前、一家惨殺事件があった。その家の男の子だけが、いまなお発見されていない。
男の子は……ずっと隠れ続けている。
こちらは、改行余白を効果的に使って、巧みな物語構成で緊迫感を維持しつつ、錯覚も交えて十分な恐怖を与えてくれる良作です。
"ホラー"タグに気付かず読み始めてしまったのですが、ハラハラする展開に目が離せず、そのままラストまで走り抜けました。見事な終わり方で、もうすんごい怖いの。余韻という意味でもバッチリです。
怯える少年が主役、というのがまた、ショタ心を掴んで離さず。
気がついたら、イラストを描いていました。
さて、絵を描いた以上、少年には救われて欲しいです。廃屋でひとり、隠れ続ける哀しい魂は、救済されて欲しい。
そんな願いから、妄想がはじけます。
"少年の解放は、家屋が解体される時"と作者様。
ならば、救ってくれるのは、特別な力を持った片付け業者さん!
そんなわけで、救いに来た業者さんはチーム"BOSATSU"の地蔵さん。
はい、地蔵菩薩様です。賽の河原で鬼に追われる子どもを助けるお地蔵様。子どもの魂の救済に適任かと。強いし。慈悲深いし。安心です!
てな流れから生まれた妄想絵(上記)を送り付けてしまったところ、作者である猫じゃらし様には快くIFを許してくださいまして、ありがとうございました!
あくまで一ファンの1ルート。だけど私の心の中の少年は、おかげで救われたのでした。
そして。
地蔵菩薩の別の姿は、閻魔大王。
罪のない少年をここまで苦しめた犯人は、閻魔大王のもと、厳しい裁きと相応の罰を受けるのです。ええ。ここまでワンセット。
悪いことは、してはいけないのです。
◇
ちなみにそれでも少年は……と思われた方、大技もあります。
事件をなかったことにする、秘儀「時間よ戻れ」と「夢だった」。
これを使えば大抵の問題は解決です。作品を否定することにはなりません。一度は体験したこととして、その後、家族との絆を深め合うわけですから。
私の中では、かの『ごんぎ〇ね』も、ごんは助かり、兵十と仲良くやってる未来に変わっています。(いい加減、叱られそうだ)
◇
◆ 鞠目様 作:『あとはお父さんだけなんだ』
https://ncode.syosetu.com/n8499hb/
残業で疲れつつ帰宅した「お父さん」に、4歳の健吾くんが"かくれんぼ"をせがみます。
「お父さん」がご飯食べている間に、幼い健吾くんは待てなくて寝てしまうのですが、宿題をしていた小1のお姉ちゃん、麗美ちゃんは「お父さん」に学校のお話をして……。
とても幸せな家庭から始まる物語。
ところが翌日、「お父さん」が遅く帰ると、家の中の様子が変です。健吾くんがいつものように"かくれんぼ"を誘いかけるのですが、違和感を覚えた「お父さん」は。
という、お話。
ホラーの名手、鞠目様の御作品だけあって、とても読みやすく、しっかりがっちり怖い上に、意外な真相が見どころです。
ここからネタバレしますが、異形が家族を襲い、健吾くんに成り代わっていたのです。可愛い息子を模した異形は、次に「お父さん」を狙います。
だけど、それよりも先に。2年も前に。「お父さん」は、異形よりずっと格上の、異なる者が変じた姿でした。
ゾクゾクしますよね?!
幸せな家庭だと思ったのに!
「お父さん」は本物の「お父さん」じゃなかった!! 優しい「お父さん」は偽物だった!! わあああああ。
でも、でもね、よぉく読んでくださいまし。
作中、偽息子がやっぱり偽者だったと気づいた「お父さん」は、"気が楽になる"んです。そして家族に害をもたらした侵入者を"三下"扱いして、あっさりと始末してしまうんです。
え、これ、偽「お父さん」、味方じゃね?
そもそも入れ替わってから2年も扶養してたわけです。残業でクタクタになりながら、家族を大事にしていたのです。
えええ、それって、完全に良い「お父さん」では???
そう考えてみると、「お父さん」、このあと例の"三下"に隠されてた家族を助けるムーブとかしそう! と思って、生まれた妄想が下段のネーム。↓
(分かりにくくなっちゃった、家族、壁の中に隠されてる設定)
うん、助けないかも知れないんですけどね。
敵の発言に、"もう誰も助からない"的な匂わせもあったし。
だけど、それは"「お父さん」が狩られたら"という前提のはず。狩られないどころか圧勝した私の中の「お父さん」は、2年間大切にした家族を助けちゃいます。
だって、私の脳は、ハピエンへと既に舵を切っているのですから、みんな助かって欲しいわけです。
そして続く結末で、「お父さん」は目を付けていたであろう別の家族に、新しい居場所を求めて立ち去ります。
まさに、"また新しく幸せな家族が犠牲になる"と読者に予感を残して終わる、秀逸なホラー・エンド。
しかしながら、すでに"上記の流れ"が脳内に出来ている私にとっては、"家族を助けた時に正体がバレたから去らざるを得なくなった"という辻褄合わせが成立しているため、すっかり「お父さん」は味方。
そういう視点で読むとですね、この怪異である「お父さん」が本物の「お父さん」とチェンジした理由だって、もしかしたら本物の「お父さん」、脳卒中や心筋梗塞で余命幾許もなかったかもしれない……!
そこで、目をつけて入れ替わった。
だとしたら、極端な話、家族にとっては"2年間をくれた恩人"という立ち位置にまで変化してしまうのです。
まあ、そこまで思わなくてもですが、とにかく「お父さん」は優しいうえに頼もしく。なんてカッコイイんだ! と。
わわわ、座布団禁止! 座布団投げちゃダメですっっ。
んもう、めっちゃホラーファンの皆様に叱られそうです。
だけど、ホラー苦手な方にとっては、どうでしょう?
この読み取りなら、なんかちょっとハートフルな怪異譚になったりしません?
某有名演劇マンガの『ガ〇スの仮面』だって、それっぽいことやってます。登場人物の背景や考え方、過去なんかを肉付けしていくと! それが役づくりだと!
え、解釈違う? そして役作る必要はないんですが。想像の原理は、同じ手法かと。
これから先、「お父さん」はどれほどの仮初の家族を持つかわかりません。
だけど、もしかしたら健吾くんたちのこともちゃんと覚えていて。
成長した彼らが何かに巻き込まれることがあったら、居合わせたら助けてくれそうな……。そんな素敵な妄想を抱き、私の中での『あとはお父さんだけなんだ』は、ハピエン変換が成立したのでした。
素晴らしいお話だ――。
◇
【パターンB】
"隙間や影や背後から何かにみられてる。"系
うん……こういう類は……ハピエンまで運ぶのは難しい。
だって、現象ですからね。
私にとっては、喋らない、未知のモノの思惑がわからない、こんなホラーこそが一番怖いのですが、それでも精神は自己救済へと足掻きます。
そして、大雑把な脳内劇場が繰り広げられるのです。
以下、SS。
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怪異A「おいっ、またあいつに存在を暴かれたぞ?!」
怪異B「なんだって? 今度はダレだ?」
怪異A「"すきま目玉"だ!! 見つかって、ネットで"作品"として書かれちまった。多くの人間に、知られちまった」
怪異B「なんてこった……。それじゃ、"すきま目玉"の奴はもう……」
怪異A「ああ、消滅した……。知名度を得て力を高める妖もいるが、オレたちみたいな存在は、坊主あたりに読まれたが最後、すぐに遠隔呪文で祓われちまう」
怪異B「くっ、作家〇〇め! なんだっていつも、見えてないはずのオレたちを、ピンポイントで作品にしやがるんだよ!!」
怪異A「とにかく、この界隈はもう駄目だ。「なろう」作家に気取られる前に、オレは身を潜めることにする」
怪異B「そ、そうだな。大人しくしておくのが一番だ。おい、一緒に逃げようぜ」
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よし、オッケー。これで"すきま目玉"他、怖いのは闇の彼方に去っていきました。
それでもダメな時は……。
呪文、呪文ですよ!
古来から伝わる、由緒正しい呪文を唱えるのです。お経とか、聖句とか、知ってるソレを唱えてください。偉い仏様や神様を心に念じてください。守ってくださるはずです! 信じるものは救われる!
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かようなように、私めはホラーに抗いながら、どうにかこうにかホラーを読んでいます。私がホラー作品の感想欄にいたら、大概ハピエン変換済みと解釈ください。言ってないだけで、やってます。(自白)
だけど、本当にすごく怖がりなのです。
ホラーが苦手なのに、ホラーが読みたい方、またホラーを読んで困っている方に、この文章が一助となりますように。
大切な御作品をお貸しいただきました、猫じゃらし様、鞠目様には心よりの感謝を。
お読みいただきありがとうございました!
こちらは、あくまで一解釈にすぎません。
読者様の数だけ、無限に広がるその後の展開があるかと思います。皆様それぞれのホラーを、どうぞお楽しみください!