会ってはいけない神2
「うーん……」
リカは自室のベッドの上で、目覚まし時計をみていた。
時刻は午後十一時半。
「零時まで三十分……」
公園に行くのは、正直迷っていた。
……まあ、でもマナさんが来るはずだから……行こうかな……。
雨音がするので、雨が降っているようだが、どしゃ降りではないらしい。
「行けなくはないから行くかあ……」
リカはオレンジ色のパーカーを着て、両親に見つからないように、家を出た。傘立てから傘を抜き取り、開く。かわいらしいトマトの絵の傘だ。関係ないが、リカはトマトが大好きである。
「うわあ……ジメジメしてて、ちょい暑い……」
独り言を言いながら、リカは歩き出す。
街灯があるので、ある程度は明るいが、雨のせいか、人は歩いていない。
「まあ、もう、深夜だし……いないのは当たり前だけど、なんか不気味……」
恐る恐る公園まで来ると、公園内を覗いた。
「マナさん……、マナさん……」
小さく呼んでいると、滑り台の前にいたマナがこちらに向かい、手を振っていた。
……ん……?
滑り台の……前……。
ちょっと前も滑り台の前に……。
ちょっと前っていつ?
……気のせいかな。
夜中の公園なんて初めてだもん。
「リカちゃん、こんばんは。来てくれたんだね」
「あ、うん。マナさんが来てねって言ったから」
マナはリカに微笑むと、リカの手をひいて公園の真ん中まで連れていった。
「ねぇ、見て!」
マナはリカに水たまりを見るように促す。リカは不思議に思いながらも水たまりを覗いた。水たまりには、先日の風で花ごと落ちてしまったツツジが寂しげに浮いている。
雨が落ちるたびに波紋が広がり、街灯に照らされて輝いていた。
「うわあ……光であふれてキレイ……って、青空が見えるんだけど!!」
輝いていると思ったのは、水たまりの奥になぜか、太陽があるからだ。
そして、なぜか青空が広がっている。
「はは! 向こうは異常気象みたいね! 梅雨の時期でアジサイが咲いているのに、雨が降ってないみたい」
マナは水たまりに映るアジサイと太陽を見て、心底楽しそうに笑っていた。
「む、向こうって何?」
「ん? 向こうは向こうだよ。水たまりに映っているでしょ? 向こうの世界」
マナの返答に、リカは青い顔で唾を飲んだ。
「こことは違う世界って……こと?」
「そのとおり! そして……」
マナがリカを突然押した。リカはバランスを崩し、水たまりに勢いよく突っ込んだ。
「あなたは、壱の世界に行ける……」
「……っ!?」
落ちていく自分になにもできないまま、戸惑っていると、一瞬、ピンクのシャツに茶色いショートヘアーの女の子が、目に入った。
派手な音を立てながらリカは深く、深く、水中へと落ちていく。
浅い水たまりに頭から突っ込んだのだが、なぜか、深い海の中にいた。
口から漏れる泡を眺めながら考える。
……あの子は誰だろう?
最後に見た、ピンクのシャツに茶色い髪の女の子……。
そう、「TOKIの世界書の主人公」にそっくりな、あの子……。
どうしてかわからないけど、
やたらと、気になるんだ。