栄次を探せ!6
「さあ、これを着るの。早くしなさい! 着替えから萌えは始まっているの!」
月子さんはやたらと露出の高い謎の衣装をアヤとリカに押し付ける。
「じゃ、じゃあプラズマさん、ちょっと後ろを……」
リカが頬を赤く染めながらプラズマに言った。
「あ、ああ。……だな。女の子の着替えが俺の目に……」
「紅雷王、彼女らの着替えを見ていなさい」
月子さんはうっとりした顔で命じる。
「バカか……変態かよ……」
「いいの。男に見られているとね、女子特有の恥ずかしさが生まれて、最高に芸術的なのよ」
月子さんは、顔を真っ赤にしたまま、着替えが進まないアヤとリカを満足しつつ見据える。
「早く脱ぎなさい。下着も全部。あたしが作った下着を着るのよ」
「プラズマ……見ないで……」
アヤは先程の威勢がなくなり、涙目で恥ずかしそうに下を向いた。
「……もう、いっそのこと堂々と着替えますっ!」
リカは反対に顔を真っ赤にしたまま、大胆に着替え始めた。
「アヤ、何をしているの? さっさとしなさい」
うずくまったまま、着替えが進まないアヤの頭に、月子さんは足を乗せ、頭をつけさせる。
「ごめんなさい、月子さん、今すぐ着替えます……でしょ? ねぇ?」
「う……うう……」
アヤは涙を浮かべていた。
「できないの? じゃあ、紅雷王に鞭打ちを……」
「俺は別にそれでかまわないぜ。こんな屈辱をアヤは味わったことがないんだ。見てらんねぇよ、かわいそうで」
プラズマがそう言うので、アヤは涙をこぼしながら月子さんを睨み付けた。
「あら、生意気な顔」
「わかったわよ、着替えてやるわ」
アヤは自分の身体に『早送りの時間の鎖』を巻き、あっという間に着替えた。
「ふーん、賢いじゃない」
「なんなの? この服はっ!」
アヤは着替えた後、身体を恥ずかしそうに隠した。
下着に近い格好に短いスカートという、肌を露出する服。
やたらとキラキラ光っている。
「こ、こんなアイドル……いない気がする……」
リカはため息をつきつつ、下を向いた。
「はい、じゃあ、着てくれたから、情報を。銀髪の時神と黒い少女の霊が『栄次が開演させたステージ』で劇をやらされている。栄次はどこにいったのかなあ?」
「栄次がどこにいるのかもわかってんのか?」
プラズマはアヤとリカを視界にいれないようにしながら月子さんを見る。
「さて、次は……ダンス!」
「ちっ……」
プラズマの舌打ちを聞きつつ、月子さんはアヤとリカに恥ずかしいダンスをさせ始める。
「ハートを手で作って、胸を寄せて、お尻を付き出して~。あ、ウサギ、ちゃんと撮ってる?」
「とってるであります! ラビダージャン!」
「紅雷王! しっかり見なさい。恥じらう姿が最高なんじゃないの!」
目を背けたプラズマにアヤとリカを見るよう命令しつつ、月子さんは楽しそうに手拍子をしながら話し出す。
「後悔を持つ魂を、呼び出しちゃったサムライは~。自分の世界へ彼女を呼び、鍵をかけた~。銀髪の忍者も、呼ばれたよ~。彼らは役者、何度も舞うよ、ステージで。彼が望む、結末になるまで、何度も厳しい、殺りなおし~!」
「……っ!」
「はいっ! そこでターン!」
プラズマが月子さんの手拍子を聞きながら眉を寄せた。
相変わらずサヨの未来が映る。
もしかすると、今、一番真相に近いのがサヨなのかもしれない。
「つまり……栄次は『後悔を持つ魂』とやらを呼んで、自身の肉体ごと弐の世界へ入った。で、栄次は自分の心に肉体ごと閉じこもり、更夜とその魂を使っていい結末になるまでループさせている……ということか?」
「賢い賢い! せいかーい!」
月子さんは楽しそうに手拍子をしている。
「じゃあ、破壊する時神、トケイはなんなんだ?」
プラズマは服を着替えながら、尋ねた。
「何か? 栄次が銀髪の忍者を思い出したからだよ。どっかの時神のせいで、壱(現世)に栄次が居続ける事になった。だから、忍者の方の記憶がおかしくなり、トケイが作動。彼は弐の世界を守る役目もあるから、霊を閉じ込め、霊の後悔を増やし、『厄』を溜め込む栄次を許さない」
月子さんは踊っているアヤとリカを満足げに見据えると、楽しそうに手を叩いた。
「かーんぺき! やっぱり月子さんのダンスはさいっこうね~! 月子さん、て~んさい!」
「……天災だよな……」
プラズマは月子さんの独り言に独り言で返した。
情報をある程度引き出せたプラズマは最後に重要な事を尋ねる。
「……栄次には近づけたし、栄次の事はわかった。他にこの件に近いやつはいるか?」
「ふふっ、わかった。要求を通してくれたから特別に。海神。ワダツミのメグはツクヨミ様から海原と弐の世界を深く見守るよう、言われているわ。あの女は弐の世界を良く見れる。栄次の世界も見つかるんじゃない? 黄泉の近くにいるのは知ってるー」
月子さんはアヤとリカを解放し、満足そうに頷いた。
「ワダツミのメグか」
呼吸を荒くしながら、座り込んでいるアヤとリカを気の毒そうに眺めながら、プラズマは小さくつぶやいた。