栄次を探せ!5
「おっまたせ~! 月子さんだよ~!」
しばらく待たされた時神達はすだれを乱暴に開けた月子さんを仰ぐ。
とりあえず、月子さんのが神力が上なため、段差があり、月子さんのが上に来る仕組みである。
「あたしは、ツクヨミ様の力を受け継いだ月照明神、月姫の月子さん! よろぴくっ!」
月子さんは自己紹介をしつつ、指でハートを作り、時神達へエアハートを飛ばした。
「ウサギ、後でハートが出てるっぽく加工しなさいっ!」
「わ、わかったでありますっ! ラビダージャン!」
横でカメラを回し始めたウサギは慌てて返事をする。
「え……撮るの……?」
リカが顔を赤くしながら服にホコリがないか確認した。
「あたしがかわいく映ってればいいのよ。あんたはどーでもいいわっ!」
「は、はあ……」
リカは動揺しながら、とりあえず答えた。
「あんたら、名乗りなさいよ」
おされていた時神達は慌てて名乗る。
「失礼しました。わたくしは時神未来神、湯瀬紅雷王でございます」
「わ、わたくしは時神現代神、時野アヤでございます」
アヤは名乗った後にリカをつつく。
「あ、えっと、わたくしはなんかの時神で……リカです!」
リカはかなり怪しいあいさつしかできなかった。
三人が名乗り終えたところで、プラズマが本題に移行させる。
「さっそくだが……白金栄次についてどこまで知っている?」
「栄次……ああ、あの怖いサムライ? 月子さんコワーイ! 殿方コワーイ!」
月子さんはセンスで顔を隠し、カメラに向かってウィンクした。
「わかった。じゃあ、何をしたらいい?」
プラズマは交渉に入った。
ただでは話さなそうだったからだ。
「なに……ね。うふふ。じゃあ、裸になれ。月子さんはね、きれいな男の体が好きなの。あたしの要求をすべて通したら、高天原会議の内容をお伝えするわ」
月子さんの言葉にアヤとリカが顔を青くした。
「ぷ、プラズマ……」
アヤが心配そうにプラズマを仰ぐ。
「……裸になりゃあいいのか? わかりました」
「ちょっ……プラズマさんっ!」
リカは顔を赤くし、目をそらす。
「雑に脱いだらダメよ? あなたは皇族だったんでしょう?」
「……わかりました」
プラズマは霊的着物から通常の服に変わると、ゆっくり脱ぎ始めた。その後、服をしっかり畳むプラズマ。
「やっぱり、とんでもない変態だわ……月子……」
アヤは顔を手で覆いながら下を向く。
「髪を伸ばして」
「はい」
プラズマは神力を高め、髪を伸ばす。
「うーん、やっぱ、美しいわねぇ。赤いツヤのある髪、ほどよくしまった体、きれいな肌、スタイルも良し、なんてきれいなの……芸術だわ」
「ありがとうございます。で? もういいか?」
プラズマはため息をつきながら、服を掴むが、月子さんはまだ許さない。
「ちょっと……鞭をいれてみてもいい? きれいな肌に赤い線をつけてみたいの」
「ちょ、ちょっと! 月子! もういい加減にして!」
アヤが顔を真っ赤にしながら、叫んだ。
「あら、赤くなっちゃって。青いわね~。ちなみに、ツルは傷つけられないじゃない? 禁止されているし、同意がないとしたくないし」
「だからって、プラズマはあなたのオモチャじゃないわ」
「正論! だから、同意を求めているんじゃないの。傷をつけていいのかを。なんか悪い?」
睨み付けるアヤを冷たい目で見た月子さんは、プラズマに視線を移す。
「トケイを知っているかな? 弐の世界を飛び回っている時神。私達、月神は弐の世界の先、黄泉の入り口と海原も守っている。ツクヨミ様が元々、守っていたらしいもの。今、トケイはその周辺を徘徊している」
「……?」
月子さんはわざと、時神がわからないように言った。
「今までのお礼はこんなとこかな? もういいなら、お引き取りを」
不気味に笑った月子さんにプラズマは覚悟を決めた。
「わかりました。許可します」
「ちょっと、プラズマっ!」
アヤの制止を無視し、跪くプラズマ。月子さんは嗜虐心が表に出たような冷酷な笑みを浮かべた。
「……俺は過去が見れない。だから、月子さんの過去を覗けない。過去が覗ければ、交渉しなくてもいい。俺は未来なら見える……。見えた未来はサヨが傷ついていた」
「……え?」
プラズマの言葉にアヤとリカは眉を寄せた。
「だから、サヨが傷ついてるんだ。オレンジの髪の男を泣きながら止めている。だから、こいつの情報がいるんだ」
「なんでサヨが?」
「知るかよ。そこしか見えなかった。たぶんな、月子さんの言葉にあったトケイってやつから見えた未来だ」
プラズマの言葉を聞いたアヤは月子さんを睨み付ける。
「あなた! 自分のために世界を犠牲にするの? プラズマは応じないわよ」
「今、許可したよ~? 月子さんわかんな~い!」
月子さんはおどけた顔でアヤを見た。
「もう……わかったわよ。もし、私達が交渉するなら、どうするつもり?」
「そ、そうだね、私とアヤが……代わりに……」
アヤとリカはプラズマから離れるよう目で訴える。
「ふーん? 美しい男のが興奮するんだけどー、まあ、今回はけっこう緊急そうだしぃ、女の子でもいいよっ!」
月子さんはまた、ハートを指でつくると飛ばしてきた。
「アヤっ! 俺は女の子が鞭打ちされんのを見るのは嫌だっ! 優しくないっ! 優しい世界じゃないっ!」
プラズマは慌ててアヤとリカの前に立った。
「前をっ! 前を隠してちょうだい……」
「プラズマさん……見ちゃいました。ごめんなさい」
アヤとリカは真っ赤な顔でそれぞれ目をそらす。
「えーと……すまん……」
プラズマは畳んだ下着をとりあえず、前に当てた。
「あはは! 女の子にこういうことやる趣味はないよ~! 女の子ならね……」
月子さんは楽しそうに笑いながら手を叩く。
「アイドルになって、そこで踊って? かわいくね! 振り付けは月子さんが考えたの~! あと、衣装なんだけど、あたしがデザインしたこの、きゃわわな服で~」
「……は?」
アヤとリカは無意識に二、三歩下がっていた。