竜宮戦10
「オーナー……天津彦根神か」
プラズマは目を細め、青年を見据えた。緑の長い髪にオレンジの瞳、頭に竜のツノ、ところどころに竜のウロコのようなものが見える。紫の袖無しの着物からは、たくましい腕が覗いていた。
「て、敵っぽくはないね……」
リカの言葉にアヤが小さく耳打ちする。
「この竜宮のオーナーで、龍神のトップ、アマテラス大神の第三子よ……リカ」
「え、偉い神様……」
リカは人間離れしている男を恐々見始めた。
「家之守龍神、どういうことだ、起きなさい」
オーナー天津は気を失っていた地味子を揺する。
「……あいつ、そんな名前だったのか……」
プラズマが地味子の本名に驚いていると、地味子が勢いよく目覚めた。
「あ、あれ? 私……、って! オーナー天津様っ!? ヒィィィ! お許しを」
地味子は顔面蒼白で叫び、さらに飛龍にも鋭く声をかける。
「あ、あんたがオーナーがいない間にやるって言ったんだからね! 半分おどされたんだからね!」
火の粉が飛んできた飛龍は冷や汗をかきながら、オーナーにはにかんだ。
「ハードモードも悪くないかなって……」
「……やはり、お前か。飛龍流女神、また勝手に竜宮を変えたな?」
「変えたなんてそんな……、竜宮自体はいじってねーよ。チュートリアルでよっわいツアコン置いて、勝てた奴を竜宮に入れるシステムにしただけ! 地味子は案内役と、能力使って竜宮外でもゲームができるようにしてくれていた。まあ、他の龍神はあんたからの罰を恐れていなくなっちまったがね」
飛龍は苦笑いを浮かべながら、オーナーに言い訳をする。
オーナーの目付きが鋭くなり、飛龍と地味子は口をそろえて言った。
「あの! ツアーコンダクターも道連れに!」
「当たり前だ……。お前達、全員厳罰。私がいなくなるといつもこうだ」
「ま、待ってくださーい! 私は脅されたんだってばぁ!」
地味子はあっさりオーナーに担がれ、情けない声をあげながら必死に言い訳をしていた。
「ちょ、ちょ、マジで竜宮をいじってはないんだっ! ちょっと雰囲気を変えただけでっ!」
続いて飛龍もあっけなくオーナーに抱えられる。
あっという間のできごとに、時神達は呆然としていた。
「ね、ねぇ、ぼうっとしている場合じゃないわ、プラズマ」
アヤがふと、プラズマの脇をつついた。
「な、なんだ?」
「普段竜宮から出ないオーナーが外出していたのよ? 東西南北、太陽、月の会議に出ていたんじゃないかしら?」
そこから先はわかるでしょと、アヤはオーナーに尋ねるよう、プラズマに目配せをする。
「はっ! ……そうか」
プラズマは気がつき、オーナーを呼び止めた。
「天津、六神会議に出ていたのか? 俺達は時神過去神、栄次を探しているんだ」
プラズマの言葉に眉を寄せたオーナーは地味子と飛龍を抱えたまま、振り返り、プラズマを見据えた。
「……礼儀はどうした?」
「え……ああ、失礼しました。私は時神未来神、湯瀬紅雷王でございます。あなた様のお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
プラズマは冷や汗をかきながら、慌てて丁寧に名乗った。
それを聞きつつ、オーナーはあきれながらプラズマに返答する。
「私は竜宮城で龍神をまとめている、アマテラスの第三子、天津彦根神である」
「……んで、時神過去神、栄次を探してんだけど、見てない?」
オーナーは再び軽くなったプラズマに頭を抱えていたが、しっかり答えた。
「ああ、それについての会議に出ていたのだ。頭が重い。今回、竜宮は関係がないのだ。ただ、お前達時神が来たことで、無関係ではなくなってしまったが……」
オーナーの言葉に時神達は目を光らせた。




