竜宮戦9
プラズマは神力全開の結界をリカに張り、リカにかかる攻撃をすべて弾いた。
プラズマが神力を全開にしないと飛龍の攻撃が防げないのだ。
アヤはプラズマとリカに全力で「早送りの鎖」を巻き、動きを素早くさせる。リカは飛龍の動きがのろく見えるようになり、攻撃を当てようと槍を振り抜く。
しかし、飛龍にはあっけなく避けられた。
「リカ! 右だ!」
プラズマは未来見をして、飛龍の動きを読み、攻撃させる。
「へぇ……」
飛龍は少しずつDPを削られていった。だが、微妙に減っているのみだ。このままでは負ける。
飛龍はまだ、何かを隠しているようだ。そもそも、飛龍は龍である。まず、彼女は龍になっていない。
プラズマはそれを不気味に思っていた。彼女が龍になったら、間違いなく永遠のコンティニューだ。
「はははっ! じゃあ、本気だしちゃおっかなあ!」
「ちっ……リカっ! アヤ! 俺の後ろにまわれっ!」
飛龍の発言から未来見をしたプラズマはアヤとリカを呼び戻した。ふたりは慌ててプラズマの後ろへ隠れる。
「な、なに?」
「まさか、龍に」
アヤとリカの動揺の声を聞き流し、プラズマは飛龍が『翼の生えた真っ赤な龍になる』ところを黙って見ていた。
炎を撒き散らした飛龍は大きな龍に変わり、鋭い目をさらに鋭くし、攻撃を仕掛ける。
尾を軽く振っただけで闘技場の崩れた岩を吹き飛ばした。
「……俺のミスだ……。竜宮から栄次が過去戻りをしたわけじゃない。アヤとリカには栄次の単純な『過去』しか映ってねぇじゃねぇか。栄次がここに来ていたなら、『竜宮内での過去』が優先されて映るはずなんだ。関連する過去から引き出されんだから」
プラズマは目を細め、無駄足だったことを悔やんだ。
栄次を探さないといけないのだが、飛龍は逃がしてはくれない。
「……俺が神力をさらに全開にして、神力の使いすぎで倒れたら、アヤとリカを誰が守るんだ……」
プラズマは神力をさらに上げる。飛龍が灼熱の炎を吐いた。
アヤとリカはお互いの手を握り合い、怯えていた。
「……ここは防ぐ。あんたらは……飛龍の攻撃の合間に逃げろ」
「……プラズマ……」
「プラズマさん」
「……」
プラズマはアヤとリカの声を無視し、神力全開の結界を張った。
「俺は防ぐしかできねぇ。あいつには攻撃が当たらない」
炎の渦をプラズマひとりの結界で弾ききった。
すぐさま、飛龍は尾で時神達を凪払う。
プラズマは未来見で攻撃が来る方向を予測し、片方に全力の結界を張り、衝撃を防いだ。
「はははっ! 後三回くらいで神力きれるかな?」
飛龍は楽しそうに時神達に雷を落とす。
プラズマは落ちてくる雷を予測し、すべて結界で弾いた。
……どこでふたりを逃がす?
肩で息をしつつ、かすむ目で飛龍の竜巻を、ドーム状にした結界で弾いた。リカとアヤは経験不足。
飛龍の隙がわからない。
だから、逃げずに立ち止まっている。
「……竜宮に入る前に止まれば良かったかな」
「プラズマ、栄次がいないとわかっただけでも良かったじゃない」
アヤがプラズマに『巻き戻しの鎖』を巻き、神力を使う前に戻した。
「……そうだな」
「プラズマさん、なんとかして竜宮から出ましょう!」
珍しく落ち込んでいるプラズマにリカも声を上げる。
もう一度、皆で逃げる術を考え始めた時、一つ目の、緑色をした龍が現れ、飛龍を止めに入った。
「飛龍、何をしているのだ……」
一つ目龍はあきれた声をあげる。どうやら竜神のようだ。
「ゲッ! オーナー! い、いやあ、これは……その~」
一つ目龍を見るなり、飛龍は急に大人しくなり、すぐに人型に戻った。
「客が全くおらんのだが、また勝手に竜宮を動かしたか?」
一つ目龍はやや怒りながら、若い男性の姿へと変わり、頭を抱えていた。