竜宮戦8
赤い髪の女龍神は狂気的に笑いつつ、挨拶をした。
「あたしは飛龍流女神。飛龍だ! あー、あらためまして」
飛龍と名乗った女は鋭い瞳をさらに鋭くし、言い放つ。
「ようこそ、いらっしゃいました! レジャーランド竜宮へ! ドラゴンクワトロを選ぶとは、すばらしい選択!」
飛龍は意気揚々と語る。
「やべぇのに見つかった……」
プラズマは慌ててアヤとリカの前に立った。
「ゲームで死闘ができるんだ、さいっこうだと思わないか? クワトロ、すなわち、『よん』、『し』、『死』だ! アハハハ!」
飛龍の高笑いにアヤ、リカ、プラズマは顔を青くする。
「始めようか! ここは、特に過去が映りやすい場所だ。お前らなら時神の過去かなあ?」
飛龍は高速で動きつつ、攻撃を始めた。炎を操るのか、雷を操るのか、閃光と真っ赤な炎が時神達を襲う。
「アヤっ! リカっ!」
プラズマはふたりをかばい、炎の中に入り込み、結界を張る。
しかし、プラズマの結界はあっけなく崩れ、DPが一撃でゼロになった。
勝手にコンテニューされ、DPがもとに戻る。
「アヤ、リカ……」
プラズマが全く動こうとしないアヤとリカに眉を寄せた。
二人は飛龍を見ていない。
「……記憶を見てんのか……。……ちっ」
上から飛んできた炎のヤリがプラズマを貫き、DPがゼロになる。
再びDPが回復し、プラズマのケガも治った。
「あァ……これはまいるな……。いてぇのが何回も来る。生きた心地がしねぇ」
しかし、動けるプラズマがなんとかするしかない。
一方でアヤとリカは栄次を見ていた。静かな夜更け、栄次は月を見上げていた。辺りは暗くてわからないが、屋敷の庭のようだ。
「更夜が消えた。あの男は……」
今度は栄次の声が響いた。
次第に人々の騒ぐ声が聞こえてくる。たいまつを持った男達が走り去った。
「殿がっ!」
「寄り添っていた女ごとやられた!」
「誰がやった?」
「わからぬ!」
人々は騒ぎ、混乱している。
その中、栄次は目を伏せ、ため息をつく。
「殿がやられたか。無関係の女まで……このようなむごいことができるのは、あの男だけだ。息子はかろうじて生きていたか。殿のみの暗殺……だな。嫌な予感がする」
そうつぶやいた栄次は、雲に隠れてしまった月を再び見上げていた。
「……切れ切れすぎて、なんの記憶か全くわからないわ。だけれど、栄次が仕えていた殿が暗殺されたようね。……はっ! プラズマっ!」
記憶を見終わったアヤがつぶやき、我に返った。
「……っ! プラズマさんっ!」
リカも我に返る。
プラズマはDPが回復した状態で震えていた。死ぬ寸前まで痛めつけられ、回復するのを繰り返し、身体が痛みを拒絶し始めたのだ。
「い……いやあ、あの男(栄次)の精神力の強さ……今更ながら尊敬する」
そう言った瞬間に、プラズマは炎のヤリに刺され、苦しそうに呻き、DPがゼロになり、また回復した。
「ほんと……吐きそうだ……」
プラズマは上から飛んできた炎の渦に巻き込まれ、DPがゼロになる。そして回復した。
「……くそ……動けねぇ」
プラズマは雷を纏った閃光に貫かれDPがゼロになる。
そして、また回復した。
「ちくしょう……」
「何回、死ぬかなあ? 弱すぎんだけど。はーい、では、もう飽きちゃったんで、『時神全滅するでショー』を開催します! 皆さん、拍手ー!」
飛龍は陽気に笑いつつ、先程よりも大きな炎を纏わせ、翼の生えた龍を具現化させる。
「まずいっ! 全体攻撃だ! 逃げろっ!」
プラズマの叫びもむなしく、炎の渦はフロア全体を飲み込み、激しく爆発した。
リカとアヤは反応ができず、力なく空へ舞う。
「リカっ! アヤっ!」
プラズマはDP残り少なく立っていた。あちらこちらから血が滴っている。
「ありゃ、運悪く残った! じゃあ、あんたがやられるまで、あの娘らはそのまんまだね」
「……くっ」
プラズマは飛龍を睨み付けると、神力を無意識に溢れさせた。
髪が伸び、神力が漏れ始める。
飛龍はそれを見て不気味に笑っていた。
「ひひひ……」
「あんたに聞きたかったことがある」
「んー?」
プラズマの問いに飛龍はおどけたように首を傾げた。
「栄次はここにはいないだろ」
「ふふふ、あたしに勝ったら教えてやるよ」
飛龍はさらに神力を上げた。
プラズマは息を深く吐くと、目を見開き、霊的武器『弓』を取り出す。
「龍を狩ったことはねぇが……、遠慮はしねーぞ」
「弓ね。……ん?」
飛龍は後ろから何かを感じ、振り返った。神力の弓矢がなぜか後ろに出現し、飛龍を射貫き始める。
「ふーん」
目が良いプラズマは本気になれば、速いものでも見ることができる。未来を見、的確に物を撃ちにいけるのだ。
飛龍はすれすれで避けていく。
戦闘の才能で溢れている飛龍は、この程度ではかすり傷すら与えられない。
プラズマは神力を矢のように発しながら、弓を射るが、まるで当たらなかった。
「くそ……当たらねぇ……。俺では勝てない……。一回攻撃に当たってDPゼロにしねぇと、リカとアヤが……」
プラズマは無理に飛龍の攻撃に当たり、呻きながらDPをゼロにする。コンティニューさせられ、アヤ、リカ、プラズマは全回復した。
「アヤ、リカ、悪い。俺じゃあ勝てない。手伝ってくれ……。次は計画を立てるから。痛い思いをさせちまって悪かった。アヤは俺とリカに早送りの時間の鎖を、俺が攻撃を防ぐから、リカはアマノミナカヌシのヤリとやらで飛龍を攻撃しろ!」
プラズマが叫び、リカとアヤの肩が跳ねる。
「来るぞ! もう、食らわねぇようにしろっ!」
プラズマが怯えているリカとアヤを呼び戻し、飛龍に集中させ始めた。
「わ、わかったわ……」
「……うん」
二人は怯えつつ、辛うじて返事をし、飛龍に目を向けた。