最終戦1
「アヤ……」
リカはアヤの名を呼びながら、電子数字が舞う世界を浮遊していた。
……ここはワールドシステムか?
リカは辺りを見回し、マナと戦った場所に近いと判断した。
「ワールドシステムが壱で開いたっ! 私が弐を開いてハッキングしていたからか?」
リカの横で同じく浮いていたワイズがいた。リカは慌ててワイズから遠ざかる。
「お前のせいだYO……。まあ、いい。ここからでもハッキングはできる……」
ワイズの目に再び電子数字が流れ始め、リカは焦った。
「まずい!」
リカは何もない空間を蹴ると、ワイズに飛びかかっていった。不思議と浮いたまま移動できる。ワイズは霊的武器『軍配』でリカを殴り付けた。
「邪魔だ」
「世界は切り離させない!」
リカはワイズの軍配に殴られながら、ワイズの邪魔をする。
「うっとうしい! お前はなにがやりたい? 世界を切り離してもお前には何のデメリットもメリットもないだろう! お前は、壱に迎え入れられた! 戦う理由はないはずだ!」
「……確かにそうだ! でもっ、私は伍も守りたいんだ! 伍は私がいた場所だからっ!」
リカの言葉にワイズは眉を寄せた。
「……お前、まさか」
ワイズがリカを睨み付け、さらに軍配で殴りつける。
「うっ……。 負けないよ!」
「私は平和を守る『K』だが、純粋な『K』ではない。お前を消せる」
「……死ぬわけにはいかなくなったんだ。もう、ループも嫌だ!」
リカがワイズを睨み返すと、無意識に手を広げた。すると、リカの体が光り、桃色の霊的着物に変わっていた。古い着物ではなく、かなり新しい雰囲気の着物。腕が出ていて肘辺りから再び布がかかっている。下は袴と股引きの中間のような袴。
頭に電子機器の電源ボタンのような不思議な冠をつけていた。
「……それがお前の霊的着物か。あいつにそっくりだな。マナに!」
ワイズはリカに軍配を振り上げる。リカは息を吐くと、ワイズに威圧をかけた。リカの神力は大したことはないが、ワイズは一瞬動きを止めた。
「私には、アマノミナカヌシのデータがあるっ! ならっ、ワールドシステムに『命令』できるはず!」
リカはワイズに鋭く言うと、五芒星を足元に出現させ、手をゆっくり上げる。
「やめろっ! ちくしょう! アマノミナカヌシ、マナめ! 余計なものを産み出しやがってっ!」
「……命令する! 『世界を離すな』!」
リカが必死に叫ぶと、電子数字が辺りに現れた。五芒星のまわりをまわり、リカをまわってから、光りを放ち、電子数字世界を覆った。
「プラズマさんが言っていたんだ……。あたしはあたしだって。マナさんとは意見が違う! あたしは、アヤ達がいる壱と、産まれた場所伍、両方守りたいんだよ!」
「両方なんてできるわけない! そんな簡単な話じゃない! だから、お前みたいな問題が出るんだ! 壱は壱でまとまっている! 伍などいらぬ!」
リカにワイズが恐ろしい神力を向けるが、リカは拳を握りしめ、必死に叫んだ。
「うるさいっ! そんなこと誰が決めるっ! 伍も知らないくせにっ! 向こうにも神がいるっ! あたしは見殺しにできない」
「お前が伍を守っていける力があるわけがないっ! 一年足らずの弱小神が! やっていることはマナと同じだぞ。お前が消したマナだ」
ワイズに言われ、一瞬怯んだが、リカは頭を振って、ハッキリと言った。
「あたしはっ! マナさんとは違うんだっ! マナさんは『世界』で実験をしようとしていた! あたしはっ……守りたいんだ! 皆をっ……これから出現する神もっ……皆守るんだっ!」
リカの五芒星がさらに光り、時間の鎖が飛び出す。電子数字が吹き出し、ワイズを襲った。
「くっ……皆を守ることなんてできないっ! お前は何様だっ!」
「あんただって何様なんだっ! そんなに偉いのかっ!? あたしは産まれたばっかだからわからないね!」
リカがさらに力を高め、時間の鎖を巻く。
巻き戻しの鎖……。
ワールドシステムを元に戻す恐ろしい力。
「このっ……ちくしょう! もう少しだったのにっ!」
ワイズは悔しそうに叫ぶと、白い光に包まれ、消えていった。




