弐の世界へ!1
「あ~、皆ふわふわになっちゃってぇー」
暗闇の中でサヨの声がした。
最初に声に気づいたのはプラズマだった。
「うっ……」
プラズマはうっすら目を開き、辺りを確認する。
なぜか浮遊しており、辺りは宇宙空間だった。遠くの方にネガフィルムが絡まったかのような何かが多数ある。
DNAの絡まっている感じに似ていた。
プラズマはリカを強く抱きしめている事に気がつき、やや安心する。
「守りきれたか……。しかし、力いっぱい抱きしめちまったから、痛かったかな……」
リカは気を失っていた。
「まさか、俺が殺してねーよな……。女の子を圧殺とかシャレになんねーから。おーい、しっかりしてくれー」
「あーあ、そんなか細い子を力一杯締め付けたら、かわいそうじゃーん」
サヨが呑気に浮遊しながら近づいてきた。
「わかってるが、しかたねーだろ! で、ここはどこだ? アヤは? 栄次は?」
プラズマはサヨに詰め寄る。
「はいはーい、全員回収しましたー。アヤは気を失っているし、サムライも気を失っているよー。ここは弐ですー」
サヨはじぶんの後ろを浮遊しているアヤを指差し、その隣にいた傷ついた栄次を指差す。
「栄次……やられたなあ……。あんた、すげぇよ、よく頑張った。で、剣王は?」
「剣王は弐の担当じゃないからたぶん、入ってこれないんじゃね? あたしが『排除』しといたし。弐は適応データがないと、人の心が渦巻くあのネガフィルム世界に囚われちゃう。永遠に迷っちゃうから、壱の神は普通入らないよ」
「弐については知らねーから、あんた、なんとかしてくれ。皆、気絶しちまってるしな」
プラズマは頭を抱えつつ、ため息をついた。
「あの書庫の神のとこに行くのも考えたんだけどー、あそこ、壱と繋がってるから、剣王入ってきちゃうからヤバポヨ~」
サヨはうかがいながら、プラズマを仰ぐ。
「そういや、未来見で見たな……。天記神のところに逃げた時、剣王に襲われてリカが殺された」
「あ~、その子、殺されちゃうんだ……なんで?」
「違う世界から来た時神なんだってよ。異物データの削除に剣王が動いているらしい。そういや、あんたも……」
プラズマは「K」も味方ではないことを思い出した。「K」だというオモイカネ、東のワイズもリカを狙っているという。
「はあ? あたしはそんな気持ちじゃないけどー」
「そうなのか。『K』によって違うのか?」
「さあ? 聞かれてもわからんちん~」
サヨは敵にはならなそうだ。
プラズマは少しだけ安心した。
「で、どうする? これから」
「これからね~、あたしの先祖んとこ行く?」
「は? 先祖?」
プラズマはサヨの発言に眉を寄せた。
「ここは霊魂の世界でもあって、霊は人の心に住んでいるの。つまり、あのネガフィルム一枚一枚が『どっかで今生きている人間の心の世界』で、その心の世界内に霊が住んでる。
あたしの先祖はあたしの心にいるから、あのネガフィルムのどっかにある、あたしの心の中に住んでるってわけ」
「ちょっとわけわからんが……かくまってくれんの?」
プラズマは頭を抱えつつ、サヨに聞いた。
「あたしの心の中の世界だから、大丈夫だよ~。あのネガフィルムからあたしの心を探して、入るだけ。そこにあたしの先祖が住んでる。うちの先祖は弐の時間管理をしている『時神』だから、話が合うんじゃね?」
「え? 情報が多すぎる……。待て! 弐の世界の時神? あんたの先祖が? 弐にも時神がいんの?」
慌てるプラズマにサヨはあきれた顔を向けた。
「だから、そう言ってんじゃん」
「そうなのか……世界は広いな、オイ」
「じゃ、いこーよ!」
サヨは軽く微笑むと、空を飛んだ。すると、プラズマ、栄次、アヤ、リカも自然とサヨに引っ張られるように動き出した。
「あたしのデータの一部にあんたらがなってるから、あたしの動く通りに動けるんだからね」
「わ、わかった……」
プラズマは息を軽くつくと、わけのわからない宇宙空間を呆然と眺めていた。