表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/316

記憶をたどれ!7

 「……っ」

 アヤが痛みに顔をしかめたのと、血が下に落ちるのが同時だった。アヤの血が下に落ちた刹那、五芒星が広がり、ワールドシステムとやらが開いた。


 頭に無機質な音声が聞こえる。


 ……ワールドシステムを開きました。ワダツミの矛はお持ちですか?


 再び、無機質な音声はワダツミの矛があるかどうかを聞いてきた。


 「ワダツミの矛はない」

 リカは恐る恐る言葉を口に出した。


 ……では、矛に変わるデータはお持ちですか?

 ……世界の創世に使われた武器又は神具などです。


 「……なに言ってるのかわからない」

 リカが頭を抱えていると、無機質な音声は壊れたかのように同じ言葉を繰り返しはじめた。


 ……アマノミナカヌシのデータがあなたをブロックしました。

 ……アマノミナカヌシのデータがあなたをブロックしました。

 ……アマノミナカヌシのデータが……


 「ま、待って!」

 無機質な音声が遠くに聞こえるようになっていく。

 消えていっている。


 「お願い!」

 リカは誰にともなく叫んだ。

 もうダメかと思った時、再び五芒星が光り始めた。


 「……え?」

 「なにやってんのかと思ったら派手に暴れてんねー! で? これは何してんの?」

 知らない少女の声がした。

 目を動かすと、億物件の土地に銀色の髪の少女が剣を手に立っていた。


 年はリカと同じくらいだ。

 銀髪カールでかわいらしい服装の不思議な雰囲気の少女。


 「誰だ? あの娘……普通じゃねーな……」

 「サヨ! 来てくれたのね」

 アヤだけが安心した顔をしていた。


 「サヨ……ああ、『K』ってやつか! 平和を願う世界のシステムデータみたいなやつ?」

 プラズマが言い、アヤが頷いた。

 「あ~……君はKか。厄介なのが来たねぇ」

 剣王は栄次への攻撃を止め、銀髪の少女を仰いだ。


 「アヤが突然、チャット使ってくるからビビったじゃーん」

 銀髪の少女サヨは軽やかに笑った。

 「アヤ、いつの間に……」

 「栄次とプラズマが頑張ってくれていた短い時間にかけてみたの」

 アヤの言葉にプラズマははにかんだ。


 「まあー、それよりね、そこの土地で剣拾ったんだけど」

 「……っ!?」

 サヨが呑気に剣をかざしたので、アヤ達は驚いた。

挿絵(By みてみん)

 剣王だけはため息をつく。


 「あー、なんで、『イツノオハバリ』がこんなとこにあるわけー? 困惑だよ……」

 リカは剣を見て、目を見開いた。


 この神力をずっと感じていた。

 神力はタケミカヅチの雰囲気と同じ。

 不気味な感じはしたが、この場所に剣はなかったはずだ。

 リカは気配だけは前々から感じていたのだが。


 「イツノオハバリ?」

 「あー、それがしの父の別名だねぇ。『K』には電子データがみえてしまったかあ……。まあ、いいよ。本物はこちらにある。『アメノオハバリ』!」

 剣王は美しい十拳剣(とつかのつるぎ)を出現させ、不敵に笑った。


 「イザナギがカグヅチを斬った剣……で、その飛び散った血から……タケミカヅチが生まれる……」

 リカは古事記で読んだ部分を思い出していた。理解はできていないが、アメノオハバリという単語で思い出した。


 この不気味な雰囲気の土地にタケミカヅチの神力がしたのは、タケミカヅチが関係する剣があったからだったのだ。


 別名とのことだが、アメノオハバリとは違うのか?


 剣王の雰囲気が変わった。

 すでにあちらこちらから血が流れ出ている栄次は息を吐くと、刀を構える。


 「そういえば、ワールドシステムが消えていない……まさか」

 リカはひとつの仮説にたどり着いた。サヨが持つ『イツノオハバリ』を眺める。


 「Kの少女よ、手を退け。イツノオハバリを消せ」

 剣王はサヨを睨み付けていた。 


 「えっと、サヨさん! それで、ワールドシステムをっ!」

 リカが必死に叫ぶと、剣王が動き始めた。


 「余計なことはするなよ、『K』……」

 剣王は飛び上がり、サヨを襲い始めた。


 「平和を願う『K』を攻撃するのはどうかと思うんだけど……。ごぼうちゃん、弾けっ!」

 サヨはカエルのぬいぐるみを出現させると、剣王の攻撃を危なげに弾いた。


 「なんだあ? カエルのぬいぐるみが動いてるぞ」

 プラズマは呆然とサヨを眺めていた。


 「まずい。あの子は危うい!」

 栄次は後ろから剣王に斬りかかる。剣王は剣を振り抜いて栄次を斬りつけた。


 「しぶといね~、君は。今のかわせたの?」

 「かわさねば、斬られるだろう」

 栄次は前触れなく、高速で袈裟に斬り下ろしたが、剣王は逆袈裟に斬り上げ、金属同士の甲高い音を立ててぶつかってしまった。しかし、霊的武器同士なため、刃こぼれはない。


 栄次は力負けをしていたが、力を抜くと、肩からバッサリと斬られてしまうため、受け流せずに、耐えるしかなくなった。

挿絵(By みてみん)

 プラズマが銃を放ち、剣王の力を一時ゆるめさせ、そのうちに栄次は逃げた。


 「プラズマ、助かった」

 「強いな……あいつ」

 「これ、持ってきたよーん! あんたらさ、これ使う?」

 ふと、サヨが横にいた。


 「あんた、いつの間に!」

 「さっき、サムライさんが頑張っている間に横から逃げたよん。めっちゃ、軽い。なんなんだろ? これ」

 サヨは笑いながらイツノオハバリを軽く振っていた。


 「肝のすわったおなごだ」

 栄次は冷や汗をかきながら、刀を構え直す。


 「で、どーしたらいーわけ? あんた、知ってる?」

 サヨはリカに尋ねてきた。


 「きっと、私が触ったら消えちゃうから、サヨ……さんがワールドシステムを開いてください」

 「ワールドシステム?」

 再び剣王が飛びかかってきた。


 「栄次!」

 アヤが時間の鎖を栄次に飛ばし、栄次の反応を早くする。


 「今のうちに、なんとかして」

 アヤは肩で息をしていた。先程からずっと時神の力を使っていたのだ。神力の限界がきていた。


 「なんとかって……全然状況わからないんですけどー……、ま、いいや、五芒星に刺してみよー」

 サヨは困惑したまま、持っていたイツノオハバリをとりあえず、地面に刺した。

 五芒星が光り、再び無機質な音声が聞こえる。


 ……「K」からコンタクトがありました。ワールドシステムを開きます。

 ……ワールドシステムは幻想世界なため、壱(現世)では展開できません。

 ……弐(霊魂、精神、夢)の世界よりお入りください。


 「……え?」

 サヨが首を傾げた刹那、五芒星は跡形もなく消え、無機質な音声も聞こえなくなった。


 「ウソ……閉まっちゃった……?」

 「……弐の世界でないと入れない? そんなっ……」

 リカが戸惑い、プラズマが眉を寄せる。


 「じゃ、弐の世界行く?」

 サヨは別段焦る風もなく、戦う栄次を眺めながら尋ねてきた。


 「どーやって行くんだよ。こんな状態だぞ……」

 「『K』は主に弐の世界にいるじゃん。知らないの? あたしらの仕事場は『弐』なんだよーん。弐に入るの簡単じゃん? あたしがいれば、弐を自由に動けるしね」

 「マジかっ。反則かよ」

 サヨはイツノオハバリをもてあそびながら、プラズマに笑いかけた。


 「んじゃ、早く行くぞ。見ろ、栄次が辛そうだ。どーやって行くか知らないが、さくっと行けんだろ?」

 栄次は髪紐を切られ、身体中切り傷だらけだった。


 「うっわあ……酷いね……」

 サヨがつぶやいた刹那、剣王がため息をつき、手を止めた。


 「あー、もうめんどくさい。時神を殺さないようにするので精一杯だよ~。さっさと、そこの娘を渡してもらおうか」

 剣王は神力を強く辺りに撒き散らした。神々しく、荒々しい力が時神達を襲った。

 タケミカヅチの神格は遥か上。

 剣王が力を出したら時神は勝てない。


 先程よりも強力な神力でまず、アヤが失神した。


 「ふん、出しすぎると皆死んじゃうからね~、手加減が難しいなあ~使いたくないんだけど」

 「あっ……アヤ……」

 プラズマがリカを抱きながらアヤの元へと行くが、立っていられなかった。


 栄次は膝をついたまま、剣王を睨み付けている。


 「う、動けぬ……。剣王……アヤが死ぬぞ……。頼む……やめてくれ」

 栄次は苦しそうに切れ切れに言葉を紡ぐが、剣王は力の解放をやめなかった。

挿絵(By みてみん)

 「それがしは女にはそれほど容赦はないが、男にはさらにない」

 剣王は軽く笑うと、栄次にさらに威圧を向ける。

 栄次は苦しそうに血を吐くと、そのまま気絶した。


 「はい、二人目。じゃあ、後、君達だけかなあ? プラズマ君、君は栄次よりも神格が高い。そうそう倒れないかな」


 「ちくしょう……サヨだったか? ……あんたは平気なのかよ?」

 「え? 何が?」

 プラズマはサヨが平然と立っている事に気がついた。


 「こんな神力を浴びてんだぞ! 平気なのか!」

 「神力……あたしは神じゃないからわからないんですけどー」

 サヨは動揺しながら倒れた二人を眺める。


 「そっか。じゃあ、さっさと、弐に連れてってくれ! 俺もそろそろ……」

 プラズマは歯を食い縛って耐え、リカを離さなかった。


 「わけわからないけどっ、弐の世界管理者権限システムにアクセス『入る』!」

 サヨが叫び、足元に先程と違う五芒星が出現し、剣王以外を光に包んだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 剣王には剣王の意図がある…事情は分かるのですが、なにかお互いを満足させるものはないのかと考えてしまいます。一体どうなってしまうのでしょう…。
2021/08/26 23:25 退会済み
管理
[一言] ピンチだけど、時神たちは殺されはしないから…… ワールドシステムには何が!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ