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記憶をたどれ!2

 雪が降っている。

 恐ろしく寒い。

 リカは雪の上で倒れていた。

 とりあえず、身体を起こす。

 「いつもの公園だ」

 しばらく、ぼうっとしつつ、アヤが来るのを待つ。

 「寒い……寒すぎる」

 とにかく寒い。

 しかし、歯を鳴らしながら寒さに耐えるしかない。

 「もうダメだ……萎えそうだ……。もう迷わない、負けないって決めたのに。そう、私はずっとひとりで戦ってる。いつまでも戦えるか……」

 「……あの……大丈夫ですか?」

 気がつくと、震えるリカを心配そうに見ているアヤがいた。

 アヤはマフラーに手袋、コートと防寒対策しっかりした服装をしていた。

 「あ……アヤ……」

 「……? 私を知っているの?」

 ……ああ、またこの会話か。

 リカはうんざりしながら、最初から説明をする。今回はアヤに血を流させないとならない。

 それが目標だ。

 ワールドシステムを出現させるためにどうすればいいのか、まだわかっていないのだ。矛はないが、ワールドシステムの開き方がわかれば、なんとかなりそうだ。

 ……どうやって怪我をさせる?

 リカは優しいアヤに攻撃をすることはできなかった。

 だから迷っている。

 「もう一度、あの吹雪は起こるか……確かめてみて……考える」

 「……あの……リカ?」

 アヤは不安そうにリカを見ていた。

 「あ、いや、なんでもないよ。商店街の方に連れていってくれる?」

 「え……ええ」

 アヤは戸惑いながら、リカを連れて歩きだした。

 「寒いわよね? マフラーと手袋……貸してあげるわ。とりあえず、私の家であたたまりましょう? 商店街を抜けた先だから」

 「……ありがとう……」

 リカはアヤの優しさに涙してしまった。アヤは本当に優しい。

 今もずっとリカを気にかけている。

 「泣かないで……リカ」

 「うん……思い出してはくれないよね?」

 「……?」

 リカの言葉にアヤは首を傾げた。

 「ごめんね。なんでもないんだ」

 「そう……」

 今回、アヤの様子が何か変だった。何かを考えている。

 今までの記憶が流れ、時間がおかしくなり、頭痛が襲い、商店街に入ってプラズマと栄次に出会った。吹雪は起きない。

 「うう……どうしたら……」

 「おい、この娘はなぜ、辛そうなんだ? 寒いからか?」

 栄次が優しく声をかけてくる。

 「震えてんじゃねーか。俺の上着だけど……着る?」

 プラズマが上着を脱いでリカに渡してきた。プラズマは下に薄手のシャツを着ていた。

 「……プラズマさんが寒くなってしまいますよ……。私は……平気ですから」

 リカは上着を持ちながら、どうしようか迷っていた。

 「……娘……リカだったか? 身体を冷やしてはいかぬ。着るのだ」

 栄次が再び声をかけ、リカは渋々上着を着させてもらった。

 暖かい。

 心まで暖かくなる。

 ふと、プラズマの腰に銃がぶら下がっているのを見つけた。

 「あ、これ? あぶねーよ? 未来の銃で俺の霊的武器だ。栄次は刀なんだ。神は何かしらの霊的なものを持ってる」

 「霊的なもの……」

 プラズマの発言で、メグが言っていた事を思い出す。

 メグが持っていた矛も「メグの霊的武器」だった。

 神なら何かしらの霊的なものを持っている……。

 「じゃあ、私は何を持っていますか? 私は時神なんです」

 プラズマにリカは尋ねてみた。

 「いやあ……わからねぇ。出してみたら?」

 「出す? どうやるんですか?」

 「右手か左手に意識を集中させる。慣れてくれば俺達みたいにずっと出していられるぜ。ちなみにもうひとつの霊的武器は弓だ」

 プラズマが右手をかざすと、装飾されていないシンプルな弓が現れた。

 「ほれ。デカイから普段は消してるんだ」

 プラズマが手を離すと、弓はホログラムのように消えていった。

 「……すごい……私も……」

 プラズマの言った通りに手に集中してみた。頭に小型のナイフのようなものが浮かんだと思ったら、右手が何かを握っていた。

 「ふーん、あんたはナイフか。今時だなあ。宝石みたいにきれいじゃねーか」

 プラズマが装飾されたキレイなナイフを興味深そうに眺め始めた。金色の赤い宝石が散りばめられた美しいナイフだった。

 小刀かもしれないが。

 そんなことよりも、リカは手にナイフを持っていることが恐ろしかった。

 ……アヤに傷をつけられる……。

 そう思ってしまったからだ。

 「アヤの血で……ワールドシステムが開くかもしれない。私が泣かないで……血だけで……」

 ……どうせ、誰も覚えていないんだ。今回だって、どうせ忘れる。

 「はあ……はあ……」

 リカは震えながらナイフをアヤに向けると、飛びかかった。

 

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