黒幕をどうするか?5
プラズマは神力を上げ、髪は伸び、霊的着物を着た姿へと変わる。紺色の水干が神々しさを出していた。
ムスビも霊的着物へと姿を変え、髪は腰辺りまで伸びる。
髪は神力をあらわすという。
プラズマもムスビも常に最低の神力で生活をしていた。それだけ影響があるからだ。
攻撃を仕掛けたのはムスビからだった。神力の弾をプラズマに飛ばす。プラズマは未来見で簡単に避け、霊的武器「銃」を撃った。
プラズマの神力が詰まった弾はムスビを追尾し襲う。
「こんなもんかよ」
ムスビはプラズマの弾を結界で弾き、そのまま打ち返した。
プラズマは未来見で避ける。
「後ろ、見た方がいいぞ」
プラズマが小さくつぶやいた刹那、ムスビの後ろから多数の神力の槍が飛んできた。神力の弾も飛んできてそれはすべてムスビの未来を狙っていた。着地する部分に絶対に当たってくる。
ムスビは頬を切られ、衣の一部も切られた。血が滴る。
「……あんた、戦闘ができる神じゃねぇだろ。神力が高いだけ。しかも俺と同じくらいだ。わざとやられにきたな」
「そんなわけないだろ。勝つつもりだよ」
ムスビが神力をさらに上げ、ムスビが結んだ歴史書を読んだ。
「カグヅチ!」
ムスビから出てきた歴史書から勢いよく炎の渦が飛ぶ。
「あんた、そんなことできるのか」
プラズマは危なげに結界を張り、炎をすり抜けさせたが、プラズマは結界が苦手である。所々、服が燃えた。
プラズマは銃で空を撃ち、上からスコールのような銃弾を浴びせる。ムスビは一つずつ結界を張り避けるが、プラズマの神力は未来を予知して落ちてくる。なかなか避けられなかった。
「お前、やっぱり強いな。本気でくると。……タケミカヅチ」
ムスビは続いて強力な雷を発生させた。プラズマは未来を見て避けるが、雷なため多少当たった。
腕が焼け、血が滴る。
「腕だけですんだな」
プラズマはそうつぶやくとムスビのまわりに時計の針のような槍を多数配置し、銃を上に放った。
またもスコールのような銃弾が多数落ちてくる。
槍で逃げ場がなく、当たりながら結界を使う。しかし、神力は結界を貫通してきた。
「アマテラス神力……くっ!」
「もっと神力を上げて結界を強くした方がいいぞ」
プラズマはまだ余裕そうにそう言った。
巨大な爆発が起き、ムスビはあちらこちら切り刻まれながら抜けた。肩で息を吐く。
「力を戻したプラズマは……俺より高いところにいる……わかってるよ」
「お前らが封印した俺の本来の力。これは俺のもんだ。勝手だよな、歴史神」
「……ああ」
ムスビは神力を全開にしてプラズマの攻撃を受け止めていく。
「タケミナカタ」
ムスビは手から剣を出すと何かに乗り移られたかのように剣技を繰り出した。武神の動きだ。
「物理技もできんのか」
「歴史書のヤツが乗り移ってくれればな」
「俺はある程度、剣は避けられるぞ」
斬られるのを最小限に抑えたプラズマはムスビから離れて再び銃を撃った。
「お前は……どれだけ先の未来まで見えるんだ?」
「ずっと先だよ。神力を高めるとどこの段階の未来か、現在の自分が立っている位置はどこかわからなくなる。今はこれかって感じだな。だからたまに避けられない」
攻撃を危なげに避けながらムスビは尋ねた。
「俺は負けるか?」
「勝ち負けが聞きたいのか?」
ムスビの剣技をタイミングよく逃げながらプラズマは言う。
プラズマは拳を握ると神力をほぼ拳に乗せた。そのまま隙ができたムスビの顔面に向けて振り抜く。ムスビは全力の結界を張ったが結界は貫通し、勢いよく地面に落ちていった。
「あんたは負けるよ」
プラズマの言葉にムスビは軽く微笑んだ。
「もう限界だ。伝説級の神を持ってきすぎた。動けない」
「……なかなか本気だったな。俺はまだ平気だが」
プラズマは肩で息をしていた。
両者共に怪我が酷い。
「じゃあこのまま封印されてくる。怒りは晴れないかもしれないけどな、罪を償うとは許されることじゃないからね」
ムスビは高天原の転送装置を腕にはめていた。この装置は東のワイズが製作したもので、どこにいても天記神の図書館にのみ帰れるというものだ。
「……ムスビ……俺はどんな顔、したらいいんだよ」
「普通にしてろよ。またお前と、話したいぜ。じゃあな」
ムスビは飛びそうになる意識を戻しながらその場から消えていった。
「終わったようだねぇ、兄ちゃん」
栄優がアヤを連れてやってきた。アヤは傷ついたプラズマを悲しげに見ていた。
「いますぐ巻き戻すわ!」
アヤはプラズマの時間を巻き戻し、怪我をする前に戻した。
「アヤ、俺はどうすればよかったかな」
「このままでいいと思うわ。でも、無茶はしないでね」
「……ありがとう」
プラズマは立ち上がった。
それを見つつ、栄優は天記神に連絡を入れる。
「テンキさん、見ていたかね? あれが紅雷王の元神力だと」
「ええ、アマテラス神力が……。わ、私はムスビさんの封印刑をしなければ……。手当てをしてから……。ナオさんはもう、刑が執行されました」
天記神の映像が栄優の電子端末に映し出された。天記神は悲しげな表情をしていた。
「ああ……そうかい。ワシもそちらにいくからなぁ、そんな悲しい顔をなさるな」
「ありがとう、栄優さん」
プラズマはそのやりとりを見てなんとも言えない気持ちになった。いままで守っていた者を突き放し、冷酷なまま見捨てる主は現在の神々にはあまりいない。
プラズマは一度、ルナを傷つけている。自分が自分ではないくらいに苦しかった。
「いくぞ、アヤ」
「栄優さんって神とは一緒には帰らないの? ……帰らないわよね」
プラズマの苦しそうな顔を見上げたアヤはプラズマの背中をさすりながら鶴を呼んだ。