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黒幕をどうするか?3

 ワイズ軍の天記神はワイズと剣王に先程と同じ内容を必死で語っている。ナオの刑を軽くしたいのだ。天界通信で働く歴史神、あれとヤスマロは意見を言える立場になく、天通の社長ヒルコに助けを求めていた。


 ヒルコは眉を寄せつつ腕を組んだ。


 「そんな残虐な行為は記事にすら書けない。竜宮オーナーの天津も同意見だろう。そもそも、我々はほぼ親族。オモイカネ、タケミカヅチ、そして安徳帝、紅雷王……もう少し情けをかけてやれないのか」


 ヒルコの言葉に冷林はプラズマを仰いだ。冷林はこばると救出に手を貸したナオを許しているようだ。


 プラズマは震えるアヤに腕を掴まれながら下を向いていた。

 すると突然に障子扉が開いた。


 「ナオさん! ごめんね! やっぱり俺は……」

 入ってきたのは涙目になっているムスビだった。高天原会議の結果を聞くだけの立場だったムスビは耐えられずに高天原会議に入り込んでしまった。


 「ムスビ……来てはダメですよ」

 「なんでこんな方向性になってんだよ!」

 ムスビは権力者達を睨み付けた。


 「まあ、気持ちはわからんでもないけどー、それだけナオがやったことは重いんだよ~ムスビくん」

 剣王に言われ、ムスビは拳を握りしめた。


 「歴史神の主は……ここまでの厳罰を望んでないぞ。処刑だと……茶番が過ぎないか? お前らだってそこまでの罪じゃねぇってわかってんだろ!」

 ムスビはナオの前に立ち、無意識に神力を解放した。


 「罪があるのはわかっているが、こんな理不尽で稚拙な裁判になるとは思わなかった。お前ら全員敵にまわしても、俺はナオさんを守るぞ」

 「ムスビの兄さん、やめなさいな。まだ終わってないし、決まってないだろうがい」

 栄優がムスビを止める。


 「なんだよ、お前ら! お前らも歴史神なんだろ! なんで意見しないんだよ!」

 ムスビはあれとヤスマロにも牙を向けた。ふたりは困惑したまま座っていた。


 「まあまあ~、ムスビくん、ちゃんと最後まで聞けってばー」

 剣王はムスビを睨み、ムスビは剣王を睨み返した。


 「何考えてんだよ、剣王」

 「別に、なにも」

 「ナオさんは世界改変時にしっかり上位神に従ったじゃねぇかよ! お前らはそんな簡単に彼女を見捨てるのか」


 「見捨てるも何も、罪を犯した段階で罪神なんだよ。それがしの軍がスサノオ様に攻撃を仕掛けるなどあってはならないんだ。ふふ、あー、あの神は元々、こちらにいない設定なんだっけねぇ?」

 剣王がワイズに目線を向ける。


 「さあ、どうだか。あいつらがいようがいまいがどうでもいいYO。お前の軍の処罰がそれならそれでもかまわん。うちは天記に罪を償わせるZE 。歴史神の上だ。当たり前だろ? うちが抱えてるのは歴史神の主、天記だけだ。あいつらはまた別。今は天通の社員だ。あー、カフェインが欲しいZE」


 ワイズはあれとヤスマロを顎で指すと緑茶を飲んだ。


 「ただ、歴史神らは情けをかけろと言っている。情けをかけてやるならどうするか、考えとけYO 」

 ワイズの発言に剣王はため息をついた。


 「じゃあ封印刑? こーんな感じので斬られるけど大丈夫?」

 剣王が手をわずかに動かし、強力なかまいたちを発生させ、飛ばした。ムスビと栄優が結界を張って受け流した。後ろの壁が音を立てて崩れる。


 「ふざけんな! 当たったら死んじまうぞ!」

 「だって、元現代神もこんな感じで封印されていたでしょ? 同じじゃないか~」

 「剣王!」

 ムスビが怒鳴った所でナオがムスビを止めた。


 「ナオさん……」

 「いいのですよ。もう……。こばるとさんは取り返しがつかなくなった……。誰に相談するわけでもなく、私が勝手におこなったこと。罪の隠蔽も私がおこなったこと。私は厳罰を……希望します……」

 「……!」

 ナオの発言にムスビが目を見開き、栄優はプラズマを見た。


 「未来の兄ちゃんに言われたらしいぜ。厳罰を希望しろと。ワシは横にいた。知っているぜぇ? 見ていたからな」

 「プラズマ……! お前、ナオさんに非神道的な刑罰を受けさせるつもりなのか! 見損なったぜ」

 ムスビが怒り、プラズマを睨み付ける。


 「自業自得じゃねぇか……」

 プラズマがつぶやいた刹那、アヤが立ち上がり、そのまま震えながらプラズマの頬を張った。


 乾いた音が響くと剣王が驚き、ワイズは笑い、月姫は感心した顔を向けた。


 「……いてぇな」


 「私は厳罰を希望しないと言ったじゃない! いい加減にしなさいよ! あなたが何を考えているのかわからない! 私が壊れたことでナオに怒るのは間違いよ! ナオがやったことは許せないけれど、あなたは本当にナオの処刑を望んでいるの? 私はナオへの厳罰は希望しない! 被害者がそう言っているの、あなた達もわかるでしょう!」


 アヤは涙を流しながら叫んだ。


 「アヤ、このまま進めねぇと罪が軽くなるぞ。なんでもかんでも『まあいいか、時神だし』とてきとうになる。俺は厳罰の姿勢は崩さない」


 「彼女は……謝罪して、こばるとくんの救出も手伝ってくれた。罪悪感を持っているわ! 彼女をみてあげなさいよ! これからのことじゃなくて今を! あなたは未来神だから仕方ないかもしれないけれど!」

 アヤはプラズマを悲しげに見つめた。


 「……アマテラスの力が邪魔をするんだ。俺はそんなに優しくない。俺は……」

 「ねぇ、これどうするの? 皆意見が違うんだけどー。関係なくなってきたから帰っていい?」

 月姫はリップを口に塗りながらそう言った。


 「お前も時神を傍観していただろ」

 プラズマは月姫に鋭く言った。


 「あのねぇ、私はそれが仕事なの。だいたい、私は弐を上からしか見れないわけ。何か異常があったから高天原に説明を求めたのよ。何にも知らないの! 知らないから会議に出たのよ。あんたらが影でなんかやるからね! 木星を近場で眺めているのと同じなんだからこっちは! もう内容はわかったしぃ、私、もういらないでしょ」


 「まあまあ、月姫、もうちょいいてよぉ」

 剣王が月姫に笑いかけたが、目は睨んでいたため、月姫はため息をつきながら冷めた緑茶を飲んだ。


 「罪は大きい。彼女の罪は大きい。あれで償ったとは言えない。俺は許さない。ただ……」

 プラズマの顔は辛そうだった。


 「やはり神道的範囲でお願いする」

 プラズマは机を乱暴に叩いた。


 「プラズマ……」

 プラズマの意見に歴史神、他の権力神にやわらかい風が吹いた。


 ナオの罰は五ヶ月の封印刑と出てからこばるとのケアなどをおこなうことで終わった。

 ただ、プラズマは納得していない。アヤの件で承諾しただけだ。


 だが、残虐な罰を最終的には望んでいなかった。

 それが彼の優しさである。

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