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こばると救出作戦3

 「ありゃ? 消えちまったな。ワシら、どうなってたよ?」

 栄優の瞳が元に戻り、不思議そうに栄次を見ていた。


 「……? なんだ? わからぬ」

 栄次も元に戻り、眉を寄せる。

 とりあえず、武器をしまった。


 「今回は僕と君で黄泉を開こうか。ナオさんと栄次さんにはこばるとさんの心と記憶を探してもらう」

 ミナトは手をゆっくり下ろすとリカにそう言った。


 「私、いつもなんとなくでなんとかしてたんだけど、今回もそれで大丈夫……?」

 「たぶん、大丈夫だよ。僕もそんな感じだから」

 ミナトはリカに子供らしく微笑んだ。栄次と栄優がこちらに気付き、顔を曇らせながら歩いてきた。


 「で、今度はどちらさんで?」

 栄優が半笑いで尋ね、ミナトはお辞儀してから答えた。


 「僕はアマノミナカヌシ、ミナトです」

 「ミナト……どっかで聞いたなァ……。ああ、あの紙を送ってきた……」

 「そうです!」

 「ずいぶん小せぇ子だねぇ。子供かい?」

 「まあ、子供かな」

 栄優は子供が好きなため、かわいい、かわいいと頭を撫で始めた。


 「えーと……す、スサノオさんは僕が追い出しました。はい。それで……これから歴史神の栄優さんと過去神の栄次さんでこばるとさんの記憶と心を見つけていただいて……」

 ミナトは頭をぐいぐい撫でられながらなんとか言葉を発した。


「ワシはなーんもわからんがねぇ?」

 「えーと……」

 「それは私が、やります」

 栄優の返答に困っていたミナトはナオの声を聞き、振り向いた。

 後ろからナオが歩いてきていた。


 「ああ、ナオさん」

 ミナトがなんとも言えない顔でナオを見る。ナオはメグに世界へ入れてもらったようだ。


 「やるべきことは終わりました。後は……黄泉を」

 ナオは肩で息をしていた。

 「ナオ、神力の低下が激しい……。少し休め……」

 栄次はナオにそう言葉をかけたが、ナオは目を伏せ、首を横に振った。


 「私は……正直、やってしまったことを悔いています。彼を消滅させようとしてこうなったのだから、今となっては自業自得。少しでも罪を軽くします」

 「……そうか」

 栄次は否定はせず、静かにそう言った。


 「ミナトくん、どうやって黄泉を開くの?」

 リカが冷や汗をかきながら尋ね、ミナトはリカに手を伸ばしてきた。


 「僕と手を繋いで、神力を流す。黄泉は一回開いているんだ。ハッキングしなくてもアマノミナカヌシの権限二つくらいで開くはずだよ」

 「そんな簡単に……」

 「今回は『アヤ』だから。開くよ」

 ミナトの言葉にリカは眉を寄せる。


 「ああ、『アヤ』さん、あの神は時神現代神のバックアップの他、アマノミナカヌシの神力もあるんだ。彼女は自覚せずに壱に存在する神。何を言ってもアマノミナカヌシの神力を自覚することはないが、感情により破壊に染まったりする世界のヘソの部分だ」


 「な、なんだって!」

 この話はリカだけでなく、栄次達も驚いていた。


 「アヤさんは……創造神の一柱なんで、トケイさんっていう異次元な神を作りだせたんだよ。アヤさんが破壊の神力を半分与えたようだけど。つまりトケイさんはアヤさん次第なんだ」

 ミナトはリカと手を繋ぐと海へ向かい、神力を流した。


 リカは背筋が凍った。

 リカがループを繰り返していたあの時、毎回なぜかアヤに会っていたこと、ワイズがアヤに『ワールドシステムの鍵』だと言っていたことなどを思い出す。


 ワイズはどこまで知っているのだろうか。


 「ね、ねぇ……ワイズは……」

 「ああ、あの神は全部知ってるはずだよ。側近に天御柱(あめのみはしら)がいて、アマノミナカヌシと並ぶ世界創造の一柱、タカミムスビの子供だ」

 ミナトは海に神力を流した後、五芒星を描く。


 「黄泉を開きます。栄次さん、ナオさん、お願いします。トラッシュボックスからこばるとさんの心を見つけてください」

 「わかるものなのか?」

 栄次が不安げに尋ねる。


 「わかるよ、過去神なんだから」

 ミナトに言われて栄次はナオを見た。ナオは電子数字で黄泉の情報を理解していた。

 黄泉が開く。


 小さな浮き島に社が刺さっている青い空の空間が見え、衣を着た女性が不気味に笑っている。


 「イザナミ……」

 ナオは小さくつぶやく。


 「……こばるとの心とはどこにあるんかいねぇ?」

 栄優は眉を寄せて浮き島の世界を眺めていた。


 「……導かれる……」

 栄次は遠くを見るような目で黄泉の中を見始めた。


 ……こばると……どこだ。


 栄次が探していると、こばるとの声がした気がした。


 ……ここ。ここに……いる。


 「助けにきたぞ」

 栄次が手を伸ばした刹那、ただずむ女神がこちらを向いた。


 「黄泉は黄泉だ。逃がさない。黄泉は入れば逃がさない。あの男のようにはならない。イザナギは……」

 「……栄次さん!」

 女神、イザナミが栄次を黄泉へ連れ去ろうとした。リカは栄次を引っ張り、こちらに戻した。


 「あの女神さんが邪魔をするようだねぇ」

 栄優は手から霊的武器「刀」を出現させた。


 「入らないとこばるとに手が届かん……」

 栄次は何もない空間を見据えながらそう言った。栄次しかこばるとのデータが見えていないようだ。


 「……わたくしが……黄泉をミナトさんと繋ぎます。リカさんと栄次さん、栄優さんはイザナミ様をかわしながらこばるとさんを連れてきてください」

 ナオは暗い顔でリカ達を見た。


 「ナオさん……信じて大丈夫……?」

 リカは訝しげにナオに言う。

 「信じられないのもしょうがないんですけども……信じていただきたいです」

 「わかった」

 リカは黄泉へ入る決断をした。


 「僕はナオさんと黄泉を繋ぐよ。以前入ったイザナギがなぜトラッシュボックス内で無事だったのかというと、桃とタケノコ、ぶどうのデータを持っていたからだ」


 「なにそれ……?」

 リカはタケノコと桃とぶどうを持つ男性を想像したが奇妙でよくわからなかった。


 「リカ、君はすべてのデータを持っている。だから、栄次さんと栄優さんを導くんだ」

 「うーん……よくわからないけど、やるしかないか」

 リカは眉を寄せつつ頷くと、栄次、栄優と共に黄泉へ足を踏み出した。リカにはこばるとの心がどこにあるかわからない。


 「私がこばるとさんの心をこちらになるべく引いてきます。黄泉へ入ってください」

 ナオがそう言うのでリカは完全に黄泉に入り込んだ。


 黄泉へ入ってすぐに栄次が何かを目で追っていた。


 「栄次さん?」

 黄泉へ入ったらすぐに青空の世界だったが不思議と落ちることはなかった。


 「あちらに……こばるとの……」

 栄次がそうつぶやき、リカは栄次の通りに動くことにした。

 栄次が何かを掴もうとした刹那、栄優が何者かの攻撃を刀で防いでいた。


 「……っ!」

 栄優が刀で受け止めた相手は衣を着た女神、イザナミだった。


 「カグヅチ」

 イザナミはゼロ距離で栄優に強力な炎を放った。


 「燃える燃える!」

 栄優は慌てて結界を張った時、巨大な爆発がおこった。


 「あっぶね……」

 栄優は結界で爆発を防御し、終わったらすぐに飛んで避けた。

 栄優の足元に再び爆発が起きる。


 「カグヅチ! 燃やしておしまい!」

 「栄次、リカのお嬢さん、やるべきことをやんなせぇな。ワシはちょいと」

 栄優は炎を刀で斬り裂くとイザナミを見た。


 「醜い醜い! 見たな! あっはははは! ヤクサノイカヅチ! 黄泉から出られると思うなよ、私の醜態を見にきた男よ」

 イザナミは強烈な雷を多数落とし、栄優を仕留めようと動いた。


 「私を見たなぁ? 笑いに来たのか? イザナギのように泣いて帰るのか? 今回は逃がさぬよ」


 「イザナギじゃないわい、ワシは」

 栄優は雷を避けながら刀で雷を斬っていく。イザナミは遥か高い神力。対応できる栄優はやはり、タケミカヅチの力があるのか。


 「避けるな、避けるな、当たれよ、ねぇ?」

 イザナミは不気味に笑いながら栄優を炎で囲む。


 「なるほどねぇ、イザナギって男、あんたに会いに黄泉に行ったのに、あんたを見て逃げ出したのかぁ。まあ、なんだかねぇ」

 栄優の発言でカグヅチの炎が高くなる。


 「色々あるもんだぁね。このカグヅチさんを産んだせいであんたが死んで、イザナギがカグヅチさんをアメノオハバリで斬ったとな。その血から産まれたのがタケミカヅチさんってか」


 栄優はなんとも言えない顔でつぶやいた後、力強く炎を斬り、前をあけた。


 「ま、ワシには関係ないけどな」

 栄優はにやつきながらそう吐き捨てると神力を高め、刀を向けた。栄次とリカを確認する。


 栄次が何かを引っ張っていた。

 栄優には何も見えない。


 「うまくいってんのかいな?」

 あきれた声をあげた栄優はイザナミの雷を飛んでかわしながら刀で雷を斬って行った。

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