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こばると救出作戦1

 図書館でしばらく待っていると海神(わだつみ)のメグが現れた。


 青い髪のツインテールにスカーフ、紫のベストにオレンジのスカートを履いた少女だ。


 「来た。ワールドシステム内の黄泉に干渉したいと。今回は異例。許可しよう」

 「頼む」

 栄次は短く答え、栄優とリカに振り向いた。


 「大丈夫か?」

 「はい」

 「いつでも行けるぜ」

 二人の返答を聞いた後、栄次は天記神とナオを見た。


 「こちらも問題なく。ナオさんはこちらでこばるとさんの神時代の歴史修正をおこない、後にワールドシステムに干渉させます」

 「はい……よろしくお願いします」

 天記神と天記神に支えられたナオは弱々しく頭を下げた。


 「……ナオ、無理はせず、休みながら作業を頼む」

 栄次に優しく言われたナオは目に涙を浮かべると「お気遣いありがとうございます」と再び頭を下げた。


 メグの誘導で図書館外へ出た栄次、栄優、リカは来た道とは逆の山道へ入り、進む。次第に白い霧が深くなり真っ白になったが、メグが誘導してくれるので進める。


 「この辺、どうなってんのか、さっぱりよぉ」

 栄優が興味深そうに辺りを見回し、リカは疑問に思ってメグに尋ねてみた。


 「えーと……メグさん? メグ、ちょっといいかな? この周辺、どうなっているの? ここは弐ということでいいのかな?」


 「弐という明確な答えは出せない。ここはすべての世界が混ざりあってしまう。オモイカネ……ワイズが天記神を幽閉した空間。この白い霧は結界で、来るものも一本道、帰るものも一本道。天記神のみ、この唯一の道すら閉ざされている。ただ、こちら側は弐に入る方面なので、一般神は来ない」


 メグはただ真っ直ぐに真っ白な空間を歩いているだけだ。


 「天記神さんはずっと図書館周辺から出ていない……」

 「そう。出ていない。彼女の……彼? の世界を知る方法は本と木のみ」

 メグは淡々と進み、気がつくと宇宙空間を飛んでいた。


 「宇宙空間になってる……」

 「弐に入ったんだろうねぇ」

 リカは驚き、栄優は下方に絡まるネガフィルムを見据えた。

 宇宙空間を進んでいる時、テレパシー電話……神力電話が栄次の頭に響いた。


 「……プラズマか? 今はどこに?」

 栄次の回線に叫び泣くアヤの声も響く。


 「アヤになにがあった? 大丈夫なのか!」


 「とりあえず、聞いてくれ。こばるとを助ける前にこばるとはアヤの神力で縛られている。だから今、アヤの神力を最低にした。今なら引っ張り出せる。こっちは心配するな。現在はアヤの世界に落ち、トケイが行動不能となっている」

 プラズマの報告に栄次は眉を寄せた。


 「まさか、アヤの神力を逆流させたわけではあるまいな?」

 「……近いことをした。アヤの神力を最低に落とせない事情があったため、物理的に神力を低下させた」

 それを聞いた栄次は顔色を悪くした。


 「アヤを苦しめたのか」

 「殴り合いになっちまった」


 「殴り合いだと! 相手はアヤだぞ!」


 「……罪悪感はあるよ。二発殴って一発腹にいれた。思い切りはできなかったよ。アヤも俺を殺しにくるからさ……。やるしかなくて。アヤは小柄で華奢な女の子……やりにくかった」


 「なんだと。一体何が……」

 栄次が絶句していると、プラズマはさらに言葉を付け加えた。


 「アヤの世界内のアヤに過干渉してしまってアヤの感情が爆発した。今は大泣きしてるから、寄り添っている。こちらは心配しなくていいからこばるとを救ってくれ。以上だ」


 「……わ、わかりました」

 栄次はとりあえず返事をし、通話を切った。


 「栄次さん、アヤに何が?」

 「プラズマとアヤが殴り合ったらしい……。アヤの神力を最低まで落とせなかったためだというが……」


 「え……プラズマさんと殴り合い? アヤが?」

 リカは顔色悪く栄次を見上げた。


 「よくわからぬが……大丈夫とのこと」


 「あの赤髪の兄ちゃん、そんなに攻撃できそうにねぇから、小柄な彼女が兄ちゃんを攻撃したんだろ、最初に。アヤのお嬢さんは自分の心に踏み込まれて怖かったんだろうね。自分の主で高身長の男に殴りかかるなんて尋常じゃあないよなぁ」


 「……アヤは生活環境からプラズマのような背の高い男に睨み付けられることに恐怖を感じている。暴力とは無縁の彼女が豹変したと兄者は思うのか」


 「ワシら人間派生の神は人間臭いもんよ。心の中なら理性がきかないだろうねぇ。人間の心なら、被害者の世界にもし、加害者が入ってしまったら永遠に苦しまされたり、猟奇的なことになるだろうさ。何度も殺されるかもしれん。そういうもんだ。色んな感情がおさまらなかったんだろうぜ」


 「確かに、そうかもしれませぬ」

 栄優の言葉に栄次は頷いた。


 「……そりゃあそうだよね……。アヤがこばるとさんを殺してしまったようなものだし……」

 リカは目を伏せ、こばるとを救出した後のことも考え始めた。


 「ここ。ワールドシステムの端」

 メグが何もない空間で立ち止まり、指を滑らせる。


 「……?」

 一同はメグが指先で何かを描いているのを訝しげに見つめた。

 メグは五芒星を描いていたようだ。指を離した瞬間に光が五芒星からもれる。


 続いてメグはワダツミの矛を出現させ、五芒星をつついた。


 「あと、リカ、あなたの血を」

 「アヤの血じゃなくてもいいのかな」

 リカが尋ねるとメグは小さく頷いた。


 「アマノミナカヌシが楔だから……大丈夫かなと」

 「わかった。……いたっ……」

 リカは霊的武器「ナイフ」を出すと指の皮を薄く切った。


 「リカ、切りすぎだ……」

 栄次が慌ててリカの指を抑え、止血をする。血が五芒星に落ちた瞬間、リカ達はワールドシステムに飛ばされていた。

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