新しい世界2
図書館だと思われる建物は古い洋館のようだった。明治あたりにありそうな雰囲気だ。
ただ、それをぶち壊しているのは沢山ある盆栽園だ。
なぜだかはわからないが盆栽がいっぱいある。盆栽があることで和風なのか洋風なのかわからなくなっていた。
「不気味なんですけど……」
「まあ、中は書庫って感じだけどな」
プラズマはリカを進ませて古びたドアを開ける。
錆び付いた音がしたが、扉はすんなり開いた。
「いらっしゃいませ」
扉を開けた瞬間に男の声がした。
「こちらへどうぞー! あら!?」
星形の変な帽子に紫の水干袴のようなものを着た謎の男性が、きれいな青い長髪をなびかせたまま、リカ達を迎えた。
「……えーと……」
「ああ、あれが書庫の神、『天記神』だ。ちなみに心は女だよ」
格好からプラズマの説明まで、情報が多すぎてリカは機能停止をおこしかけた。
「こ、こんにちは」
かろうじて返事はできたが、頭は真っ白だ。
「私は天記神。この図書館の館長よ。理由があってこの図書館から出ることができないので、外で私に会うのは不可能なの。あ、盆栽園までなら行けますわよ。盆栽見ていかれます?」
何かの機械のように次から次へと言葉が生成されていくので、かなりおしゃべりな神のようだ。
「い、いえ……えー……なんでしたっけ?」
頭の機能停止中のリカは何をしにきたのか、まるっと忘れてしまった。
「なんか、調べたいんじゃなかったのか?」
プラズマに言われ、ようやくやりたいことを思い出したリカは、慌てて天記神を仰ぐ。
「『この世界』の神様について知りたいんです。あ、あと、避難場所として……」
リカの発言に天記神は眉を寄せた。
「この世界って弐の世界のことかしら?」
「……え?」
なんか話が噛み合わない。
弐の世界……。
海神のメグが説明していた。
弐は想像や霊魂の世界だと。
「ああ、彼女はたぶん、壱について聞いてる」
呆然としていたリカにプラズマが助け船を出した。
「そっ、その前にっ、ここは弐なんですか?」
「そうですよ」
頭が割れそうだ。先程の場所(壱の世界とやら)とは世界が違うというのか。
リカは額を指で叩きながら頭痛を追い出す。
「ま、まあ……今はそれは良くて、私の記述とか、スサノオの記述とか壱の世界の歴史書はありますか?」
リカはなんとか声にだし、天記神に言った。
「ええ。ありますよ。あなたの記述は……ないですけど」
天記神は人差し指をわずかに動かした。すると、高い位置の本棚から本が八冊ふわふわと飛び、閲覧席の机に並んだ。
「こちらがそうですね。細かい一柱の神を調べたいのなら、神の名前を言っていただけたら、その記述の本を出しますが、全体ならこちらですね」
リカは八冊の本を見て、激しく震え出した。
「……おい、どうした?」
プラズマが心配して背中をさするが、リカは本から目が離せなかった。
机に並べられたのはマナが書いた小説「TOKIの世界書全七巻」と「古事記」だった。