すべての結果は?1
プラズマとリカは残されてしまった。スズはアヤを心配している。
アヤはまだ目覚めないが元に戻っていた。
「プラズマさん、子供になった時の記憶、あります? 私にめっちゃ絵本読ませてたこととか」
リカに言われ、プラズマは首を傾げた。
「俺、リカに絵本読ませてたの? まあ、そういうの好きではあったけどなあ」
「覚えてないんですか……。栄次さんは暗いのが嫌いだし、夜が明るいってプラズマさんは喜んでるし、オムライスを初めて食べて感動してたし、倉に閉じ込められるって泣くし」
「倉……ねぇ。未来見を嫌がると閉じ込められたな。俺だって暗いところは苦手だったぜ。俺の場合さ、更夜みたいに子供を叱るって感じじゃなかったんだ。従わせるって感じだった。まあ、だからさ、かか様みてぇな雰囲気で優しくされれば調子に乗るさ、俺なら」
「なるほど……」
リカはなんだかプラズマが少しかわいそうになった。
「今回は俺は全然わからん。一体、何があったんだか。俺達はなんで子供になって、大人にまた戻ったわけ?」
「……全然覚えてないんですか」
「……ああ。記憶がごっそりない。ただ……なんだか……」
「……どうしました?」
リカが尋ね、プラズマは小さく言葉を発した。
「立花こばるとって知ってるか? あいつ、どこ行ったかな」
「……えっと、誰ですか?」
リカの言葉、表情を見たプラズマは首をかしげたまま、口を閉ざした。
しばらく二人は話さず、止まっていたが、プラズマに神力電話がかかってきた。
「ん……なんだ?」
『プラズマ! 冷林が高天原会議に出てるけど、連れてかれているみたいだった! 罪神……みたいな……』
プラズマの元になぜか集まっている高天原北所属の稲荷神の一柱の少女、ウカからだった。
「……よくわからねぇな……。どうなってんだ。俺は呼ばれてないが……行くか」
『あー、あたしが直接見たわけじゃないの。ミノさんがね、そう言ってて。ね、ミノさん』
ウカの後に焦った青年の声がした。
『お、おう! なんかそんな感じに見えたんだが……おたくは高天原に行ってねぇのか?』
「冷林からの連絡はなかったぞ」
『連絡がつかなかったのかな』
ウカがつぶやき、プラズマは頭を抱えた。
「さっきまで子供だった……つまり人間の皮を被った状態で神じゃなかったから神力電話が通じなかったんだな。わかった、向かう」
『気をつけてね』
ウカからの電話は切れた。
彼らは百合組地区の稲荷達だ。
稲荷神は全国で信じられており、それぞれ形を変えて個々で存在している。
百合組地区稲荷はプラズマをなぜか慕い、集まっている。
彼がアマテラスの神力を持っているからかもしれない。
「プラズマさん、どうやって高天原に?」
リカが怯えつつ聞いてきた。
「誰かが帰ってくるまで待つしかないか?」
渋い顔でそう言った時、ルナの声がした。
「帰ったよ!」
ルナ、トケイが戻ってきた。
「あ、トケイに連れていってもらいなよ!」
スズが思い出したようにプラズマに言った。
「ん? トケイ?」
「弐の世界を飛び回れる特殊な時神だよ!」
「弐の世界を飛び回れる……」
プラズマはなにかを思い出そうとしている。
「ま、まあいいや。まず、現世まで行ってもらおう! 緊急なんだ」
ルナとトケイが顔を出し、プラズマはすぐにトケイに頼んだ。
トケイは戸惑いながらも頷く。
「僕、現世の手前までなら行けるよ、えっと、トケイです。プラズマ……えっと、ひさしぶり……」
トケイも何か引っ掛かるようにプラズマに挨拶をした。
「ひさしぶり……? あ、ああ、プラズマだ。よろしく頼む……。緊急で……話は後でしよう」
トケイとプラズマはすばやく部屋から出ていった。
スズはプラズマとトケイを心配しつつ、ルナに目を向ける。
なんだか、スッキリした顔をしていた。
「ねぇ、大丈夫?」
「うん、大丈夫……だけど、プラズマ達、大人になったの?」
「そう、歴史神がなんかやったみたい」
スズがルナに小さくそうつぶやき、ルナは唸った。
「ナオはどうなったんだろ? それと、おじいちゃんは……」
「更夜は花畑にいるよ」
「花畑……」
ルナが遠くを見るような目をし、部屋から飛び出した。
過去を見たのか、更夜達が墓を作りに行ったのがわかったらしい。
「ちょっと!」
スズがルナを止めた。
「ルナも行ってくる」
ルナのせつなげな瞳を見たスズはそのままルナを行かせた。
憐夜とルナは少ない時間だったが会話をし、仲を深めていたに違いないと思ったからだった。
「今日はお別れする人がいっぱいだね……ルナ」
スズは走り去るルナの背中に言葉を投げかけた。
「二人になったけど、なにしてる?」
スズがリカを見る。
「えっと、皆が帰ってきたらお腹がすくと思うから何か作ろうか。本当は寝たいけど」
「私が見習いで料理を振る舞う!」
「えーと、とりあえず応援!」
リカはとりあえず、スズと料理をすることにした。