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新しい世界1

 プラズマと共に図書館に入ったリカは、すぐに近づいてきた女性に驚いた。動きが機械のようだったからだ。


 「な、なに? 司書? さん?」

 リカは戸惑いながら構えた。前はこうやって油断していたから殺されたことを思い出す。


 「右の歴史書の棚を左です」

 女性はそれだけ言うと、消えるように持ち場へ去っていった。


 「……? どういうこと? 意味わからないんだけど……。なんか不思議な人だね」

 リカが疑問がいっぱいの顔をしている横でプラズマが口を開く。


 「あー、あれはな、これから会いに行く神が作った人形だ。人間には見えない」

 「それ、中学生がよくやる妄想じゃないですよね?」

 「例え悪っ」

 信じていないリカにプラズマは頭を抱えた。


 「ごめんなさい」

 「ま、まあいいや、行けばわかるしな」

 「行けばわかる?」

 リカが眉を寄せ、プラズマが強引に手を引っ張る。

 女性が言った通りに、右の歴史書の棚を左に曲がった。入ってすぐの歴史書棚は人がまるでいない。


 「ち、ちょっと! そっち壁なんじゃ……」

 リカは外からの雰囲気で図書館の大きさをなんとなく把握していた。


 「見てみろよ」

 プラズマはリカの背を軽く押し、確認させた。


 「え……本棚がある。壁がない?」

 「あー、やっぱり、あんた、神か。二重で神か判断できたな。霊的空間が見えるんだろ?」

 「え?」

 リカは訝しげにプラズマを仰いだ。


 「ああ、だから、ここは壁なんだ。人間には壁に見える。人間は物理的なもの以外は見えないんだ。神は霊的なものだから見えるわけ」

 「……っ。私はやっぱり神なんですか?」

 「少なくとも人間ではないね」

 「……本当に時神なの……私」

 リカが小さく漏らした言葉にプラズマの眉が跳ねるが、プラズマは顔には出さずに笑顔で続けた。

 「まあ、気にすんな。とりあえず霊的空間に入れ」

 「気になりますよ……。気にすんなって無理です。これでトラブルが起きてるんですからっ」

 プラズマに強引に霊的な空間に押し込まれつつ、リカは必死に言った。ただ、図書館なので、声を落とす。

 「ナオがダメなら、ここの神に聞いてみりゃあいい」

 プラズマは霊的空間内の本棚から、一冊しかなかった真っ白い本を取り出した。

 本には『天記神』というタイトルが書いてある。

 「てんき……じん?」

 「いや、『あめのしるしのかみ』だ」

 プラズマはそう言うと、前触れもなく白い本を開いた。

 霊的空間が真っ白に染まって、リカはどこかへ飛ばされた。


※※


 「う……?」

 光がおさまり、リカはゆっくり目を開ける。

 「ん!?」

 リカは目を開けて早々に思考を停止させた。

 戸惑いと動揺が一気に押し寄せ、慌てる。

 当然だ。


 先ほどまで図書館にいたのだが、今は霧がかかる森の中にいる。ジメジメはしていないが、気持ち良い木の香り、自然の匂いがリカの周りを回っていた。


 「ん? ちょっと……え?」

 「ああ、心配すんな。神々用の図書館がある庭にいるだけだ」

 ふと、横にプラズマがいた。


 「神々用の……図書館……」

 「そうだ。ここは()の世界と(いち)の世界の境なんだ。って言ってもわからねぇか」

 プラズマは軽く笑うと歩き出した。


 「()……ワダツミのメグがいたとこだ」

 ぼんやりそんなことを思い出したリカは、その後、唐突に叫んだ。


 「ええ!? 弐の世界の境目っ!? プラズマさん!」


 「うおっ! びっくりした! なんだ?」

 プラズマは足を止め、肩をびくつかせて振り返った。


 「弐の世界を知っているなら、ワダツミのメグって神を知らないですか!?」

 「ワダツミ……海神だな。会ったことはないが、名前なら知ってるぞ」

 「そうですか」

 リカは肩を落とした。


 知っていたらどんな神なのか、聞くつもりだったのだ。今は何でも調べて情報を手に入れる。

 栄次方面のようになるのは、もう嫌なのだ。


 「……待てよ」

 リカは今までの会話を良く思い出してみた。最初のアヤとの会話だ。


 たしか、アヤがワダツミのメグを知ってると言っていなかったか?


 ……ワダツミのメグは知っているけど、そこから先はまるでわからないわね。


 あの時、アヤにいきさつを話した時、彼女は確かにそう言っていた。


 「言ってたぞ……。確かに言ってた! しかもアヤのところは太陽神サキを見させられて元に戻るだけ。プラズマさんと、この図書館に行ったら、メグについて聞きに行って、一回向こうに戻って……」


 「おーい……とりあえず、行かない?」

 プラズマがぶつぶつ言っているリカに痺れを切らし、尋ねてきた。


 「え、あ……はい」

 リカはとりあえず、頭を図書館へ戻し、歩き出した。

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[一言] やることが見えてきた! とりあえず、先に行ってみないと!
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