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進む先は5

 栄優はため息をつくと、振り返り、サヨを見た。

 「ワシはナオを天記さんに渡すよ」

 栄優は地面に寝かせておいたナオを天記神の元へ転送させようとしていた。


 「転送ってどうやってるわけ?」

 サヨは不思議そうに栄優を見ていた。


 「天記さんはだいたいワシらの動きを把握している。天記さんの神力と高天原で買ったらしいワープ装置で天記さんの図書館なら一方通行だが送れる。


 動けない天記さんだからこそか、ワシら歴史神には図書館に帰るワープ装置が渡されているんだ。ほとんど使わないがなぁ。今回はナオさんを連れてこいと命じられているんで、図書館への回線が繋がっているのよぉ」


 「相変わらずよくわかんない神の世界」

 サヨがつぶやいた刹那、慌てて更夜達が現れた。


 「……っ!? 栄次……」

 更夜はサヨを確認した後、栄優にそう言葉を発していた。


 「いんや、ワシは栄優だ。なんで皆さん、栄次と間違えるかねぇ」

 「……顔が同じだからだ……。えー……あなたは栄次ではないのか」

 更夜は眉を寄せながら栄優を見据える。確かに栄次とは何かが違う。


 「ワシは栄優だ。歴史神ナオを止めたからテンキさんに返すところだったんだが」

 「本当に栄次にそっくり……」

 一緒に来ていたスズも驚き、トケイと壱のルナは首を傾げていた。


 「先にやっていいかね? 仕事なんでね」

 栄優はナオにワープ装置を使い、図書館へ転送した。

 神々が電子データであることを使った、腕時計型のワープ装置で高天原東の技術である。


 「これでよし。ああ、そちらさん、厳しそうな顔、してるな? 何さんで?」

 栄優はナオを転送してから更夜に目を向けた。


 「……望月更夜だ」

 「望月家かあ。色々やらかしてくれんなァ……」

 「なんだ?」

 「ああ、いや、サヨのお嬢さんの祖先かね」

 「まあ、そんなところだ」

 更夜が栄優の性格を掴もうと探りを入れていたところに横からスズが声をかけてきた。


 「更夜……ルナがいない」

 「……ああ、歴史神が倒れていたところを見ると何かあったな……」

 更夜は栄優を観察する。

 サヨと共にいるということは、今のところ協力者か。


 「で、君は?」

 栄優は今度、不思議な神力を纏っているトケイに目を向けた。


 「え! ぼ、僕? 僕はトケイです!」


 「『僕』とはご丁寧に。何の神さんなのかな? 中身はやや『幼い』ようだねぇ、君」


 「ええっ……その……十六ですが、中身を聞かれると……たぶん、『十二』くらいかも……ははは。一応、時神です……」

 トケイが、はにかみながら怯えつつ答え、栄優は表情を柔らかくした。


 「時神ねぇ……しかし、トケイ君か。どっかで聞いたな……」

 「それより! ルナを追いかけないと!」

 サヨが栄優に声をかけるが、栄優は呑気に更夜の影に隠れていた少女に目を向ける。


 「ルナちゃんだな。さっきの子と顔が同じだねぇ」

 「あ……はい。双子……です」

 「そうかい。女の子はかわいらしいわなァ。頭の髪飾り、似合ってるぞ。とっても美人さんだァ」


 「あ、リボン……? ありがとうございます」

 栄優の優しい声でルナは顔を緩めた。更夜は栄優の対応を見て、さらに眉を寄せた。


 「失礼な質問をするが……子がいたか? ずいぶんお若そうに見えるのだが」

 更夜は栄優の発言で自分に似ているものを感じた。子と向き合う父親は子がいない男性とは子供の対応、雰囲気の柔らかさが違う。


 「ああ~、いたよ。かわいい息子がねぇ」

 「そうか」

 栄優が少しせつなそうな表情をしたため、更夜は踏み込まないようにした。


 「話は脱線したが……ルナはどこだ」

 「それがね、ちょっと複雑で……」

 サヨが思い出しながら今までの内容を更夜に語る。


 「天記神(あめのしるしのかみ)にルナが世界を壊すグループの一団にいることを伝えられて、その主犯がさっき天記神の図書館に転送されたナオで、この……栄優サンが実は歴史神で、天記神に命じられてナオを止めに来たわけ。


 あたしは協力者としてルナを助けるため、栄優サンをこの世界まで運んだんだけど、ナオを倒してからルナともう二人が逃げちゃったの。その内のひとりが望月……憐夜(れんや)だと思う」


 サヨは更夜の顔色をうかがう。

 更夜は悲しげに少しだけ下を向いた。


 「そうか、なるほどな。今からルナを追いかけられるか?」

 「たぶん……」


 サヨが先を続けようとした刹那、トケイの瞳が赤色に変わった。


 「エラーが発生しました。弐の世界の一部崩壊。対象を消却します。破壊プログラム発動。すみやかに弐を守ります」

 「え!」

 トケイは機械的に言葉を発すると表情がなくなり、そのままどこかへ飛び去っていった。


 「トケイ!」

 「エラーが発生しました。弐の世界の一部崩壊……」

 更夜はトケイを呼ぶがトケイは同じ言葉を機械的に繰り返し、反応しなかった。


 「破壊システムが作動したのか! サヨ、トケイを追えるか?」

 「うん! 皆連れていける!」

 サヨはすぐに皆を浮かせると、トケイを追って急上昇して世界から離脱した。


 「あのトケイって少年……何者なんだ……」

 栄優は気になっていた時神の状態を観察していたが、さらに不思議になった。


 歴史神が……天記神が、ナオが隠している『何か』を栄優は掴みかけていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 貮の世界、大丈夫でしょうか。どう考えてもルナとれんやの大暴れによるものとしか考えられないですが…。このまま追い詰められなければいいのですが…。高天原、ワープ装置を開発するとは…さすがの技術力…
2023/10/28 13:41 退会済み
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