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 「おじいちゃん! ルナの居場所がわかった!」

 サヨは高速で栄優と共に宇宙空間を飛んでいた。


 更夜に連絡をとる。


 『サヨ、どこだ? 俺達はまだ、見つけてないぞ。ルナの神力が急に消えたり、現れたりして場所が特定できないんだ』

 更夜の慌てた声を聞きつつ、サヨは興奮しながら話し出した。


 「あのね、ルナはヤバいことに巻き込まれてる! 歴史神が創造神を排除するつもりで、ルナはそれに連れてかれてる! えーと……、そのメンバーの中に望月憐夜っていう望月家に関係ありそうな人も……」


 サヨが話している中、更夜は無言になった。


 「ちょっと! おじいちゃん! 聞いてるの?」


 『ああ、すまん。聞いている。サヨの気を追いかける故、先に行ってくれ。無茶はするな!』

 更夜は慌てて声を上げ、通話を切った。


 「切れた……。おじいちゃん、なんか変だったな……。望月憐夜は間違いなく望月家だな……確信したわ」


 「サヨのお嬢さん、速すぎで気持ち悪くなってきたぜぃ……。もっと優しく労いを……」

 栄優が青い顔でサヨに連れられているが、サヨはかまえなかった。


 「こっちか。天記神が頭にどこを曲がるか指示してきているから、わかるけど、全然わからないな、もう」


 サヨが頭を悩ませながら高速で宇宙空間を飛んでいると、ルナの神力をわずかに感じ取った。


 ルナは神力を出すのを怖がっているのか、なるべく出さないように無意識に動いているようだ。


 「この世界か」

 サヨは真下のネガフィルムが絡む世界へ急降下した。


 「お嬢さん、キツすぎ!」

 栄優の言葉を流し、サヨは世界がなくなる前に世界に入り込んだ。


 弐の世界は常に変動しているため、同じ場所に存在していない。


 すぐに世界は移動する。

 二人は森の世界に足を着けた。


 太陽が輝き、すべて同じ大きさの木、生き物の気配がない世界。


 「ルナ! ルナいる!?」

 サヨは世界に入り込んですぐにルナを呼んだ。


 「アァ、ナオのお嬢さんがいる位置がわかった……先にいく」

 栄優はサヨを置いて走り出した。


 「栄優サン! なんだ、足はっや……。あの男、身体能力高いな……きっと」

 サヨはとりあえず栄優を追いかけて行った。


※※


 「誰か来る……」

 ナオは素早く反応した。


 「え?」

 ルナは首を傾げた。

 よく見ると草むらの奥から若い男が歩いてきていた。ルナはその男を見て驚く。


 「え、栄次!?」


 「えいじ……神違いだな。間違えられたのは二回目……かね? ワシは栄優だ。よろしくね」

 栄次と同じ声、同じ顔で全く違う言葉を話す青年。ルナはすぐに「ふたご」の文字が浮かんだ。


 「えいゆう……えいじのふたご?」

 ルナが尋ねると栄優は唸った。


 「それがわからんの。だがね、まあ、そうだろうねぇ」

 ルナが幼い少女であるためか、栄優の声音は優しい。

 栄優は子供好きなようだ。


 「さてと、ワシはチビちゃんに用はないんだよ。ナオのお嬢さん、ワシがなんで来たかわかるよな?」

 栄優は鋭い目をさらに鋭くし、ナオを睨んだ。


 「天記神に止めろと言われたのでしょう? ここまできてそうはできませんよ」

 ナオはライや憐夜に目配せをし、巻き物を取り出した。


 「ん?」

 「タケミカヅチ!」

 ナオが叫んだ刹那、強力な雷が栄優に落ちた。多数の雷がうねりをあげて栄優を襲う。


 「なんと」

 栄優は軽く雷を避けていき、一発も当たることなく飄々と地面に足をつけた。


 興味深そうに地面の抉れを見ている。


 「……やはり、栄次さんと同じ武神……天御柱(あめのみはしら)!」

 ナオは再び巻き物を読む。


 今度は強烈な台風、竜巻が栄優に飛ぶ。

 尋常ではない雨風にルナは目を閉じた後、身体中濡れながら目を見開いた。

 栄優は感心しながら風を利用し、ありえない身体能力で避けている。


 「歴史神らしく巻き物を読んで神の歴史を出す能力があるのか」

 栄優が分析していた刹那、憐夜がKの能力を解放した。


 「弐の世界、管理者権限システムにアクセス、『排除』」

 憐夜が栄優を目で捉えようとしたが栄優はすばやく動き、憐夜の視界から外れた。


 『排除』されたのはナオが出した竜巻の一つだった。


 「なんなの、この神……私より神力が低いはずなのに、私の神力を受けても動きが変わらない……」

 ライが神力で動きを縛ろうとしたが、なぜか栄優には効かない。


 「ワシの用はナオのお嬢さんだけよ。ナオのお嬢さん、アンタなんで怪我してんだね? 危険なことはお止めよ」

 栄優はナオが飛ばしてきた炎を避けながら軽く声をかける。

挿絵(By みてみん)

 「と、とりあえず……トリックアート!」

 ライは筆を使い絵なのか現実なのかわからない絵を描いた。

 栄優を閉じ込める。


 「ナオ! あの神、何?」

 ライが尋ね、ナオは冷や汗を拭った。神力が高い神を三回も続けて呼び出したため、ナオは神力の消費が激しい。


 「こないだ歴史神になった神……ですよ。元人間なのですが、恐ろしい強さ……まるで時神の……」


 ナオが最後まで言い終わる前に栄優はライの神力がかかった結界のような絵を破壊してきた。

 

 「ウソ……私よりも神力が下なのに……こんな簡単に破ってくるなんて」

 ライは顔を青くした。


 「管理者権限システムにアクセス、『排除』!」

 憐夜が再び叫ぶが栄優はまたも憐夜の視線から外れた。排除されたのはライが描いた絵の一部。


 「はあ~、困った困った。ナオのお嬢さん、いい加減にしなさいな。怪我してんだから……」

 栄優があきれるのを見つつ、ナオが肩で息をしながら巻き物を取り出す。


 「天記神の命令ですか? アメノワカヒコ!」

 ナオの巻き物から多数の矢が飛んだ。神力を纏い、的確に栄優を襲う。


 「しかたねぇな!」

 栄優は手から霊的武器『刀』を取り出し、飛んでくる矢を次々に切り落としていく。


 「剣術は趣味だがね」

 栄優は神力を纏った矢を簡単に落としていき、かすり傷一つ負っていなかった。


 「さて、わりぃな。止める方法が思い付かないんで」

 栄優がすばやく近づき、動けないナオに峰打ちをした。

 ナオが呻き、崩れ落ちる。


 「よっと」

 栄優はナオが倒れる前に上手く支えた。


 「頭打ったら痛いからなあ……」

 「ナオがやられた! ライ!」

 憐夜がライに目を向け、ライは慌ててドアを描いた。


 「ルナ! 神力放出! ワールドシステムに入るわよ!」

 「え……えっと……」

 憐夜はルナにも命じ、ルナはよくわからないまま、神力を放出してしまった。


 憐夜はライとルナを引っ張り、ドアから別世界へと消えていった。


 「ありゃりゃ……とりあえず、ナオのお嬢さんは確保したからいいんかいな?」

 栄優はナオを抱え、一緒にきたサヨを探した。


 ちょうどサヨが栄優を追いかけて走ってきていた。


 「ちょうどいい頃に来たな。ナオのお嬢さんを捕まえた」

 「ルナは!?」

 サヨは息を上げて栄優に尋ねる。栄優は思い出したように口を開いた。


 「あ、さっき、憐夜ってお嬢さんとライってお嬢さんがチビちゃんを連れて行ってしまったよ」

 呑気な栄優にサヨは頭を抱えた。


 「なんで追いかけなかったの!」

 「……ナオが主犯だろ? 他は逃げただけなんじゃないか?」

 「ルナは葛藤してるし、子供! いいように使われてるんだよ! 連れ戻さないとヤバいじゃん!」

 サヨが怒鳴り、栄優は眉を寄せる。


 「あの子達だけでなんかできるかい? ワシは逃げただけに見えたがね」


 「ルナはね、すごい今、傷ついてるんだよ。双子の生存しているもう一人がいじめにあってて、助けようとしたんだけど失敗して時神を子供に戻しちゃってさ、自分が母親から産まれることができずに死んでいたことに気づいて……本当のパパとママの存在にハッキリ気づいて、どうしたらいいかわからなくなってる」


 サヨは栄優に切なげに語った。


 「……チビちゃんには辛い状態だな。まあ、ワシもそりゃあわかる。ワシは十八の誕生日あたりで病気で死んだから、死ぬために産まれたのかってだいぶん考えた。前々から体が弱かったんだよ。十七手前で妻が身籠ったんだが……ワシ、子供と妻をおいて死んじまったんだ。そんときにな、なんだろうな、この人生って思った」


 栄優は珍しく悲しそうな顔で空を見上げた。


 「不幸自慢みたいになったかな……」

 サヨは栄優の背中を見てつぶやく。


 「あのチビちゃん、双子なんだな。ワシも双子のようだし、なんだか似てる気がするねぇ」

 栄優ははにかみながらサヨに目を向けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 栄次と栄優、そして二人のルナ。何か共通点を活かせないものでしょうか…もうカオスなことになりすぎて、データシステムを一旦リセットしないといけないような状態になっているような…誰がリセットできる…
2023/10/01 20:43 退会済み
管理
[一言] そうか。栄優さんとは共通するとこがあるのか。 そこが突破口になるかもしれないですね。 ……また見失っちゃったけど。
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