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月が隠れる2

 更夜、スズ、壱のルナはトケイに掴まり、ルナを探す。


 「見つからんな……。そんなに遠くに行くとは思えないんだが」

 「更夜……ルナはワイズってやつに責められていたから、何かに巻き込まれたかも……」

 更夜の横でトケイに掴まっていたスズは不安そうに答えた。


 「他の霊魂さんにルナちゃんを見てないか聞いてみる?」

 トケイは高速で動きながら、ネガフィルムが絡まる二次元の世界を眺めていくがルナはいない。


 「……いや、神力で見つけよう。穏やかに過ごす霊魂を不安にさせてはいけない」

 「更夜、じゃあ、前にいる女の子に聞かなくていい? あの子、ただの霊魂じゃなさそうなんだけど」


 トケイの発言で更夜は慌てて前を見た。宇宙空間で着物姿の銀髪少女と目があった。

 少女は十歳程度の年齢に見える子供だった。


 「……なぜ……こんな近くに?」

 少女を視界に入れた刹那、更夜が意味深な言葉をつぶやく。


 「……え?」

 トケイだけでなく、スズや壱のルナも首を傾げた。


 「トケイ、止まれ」

 更夜に言われ、トケイはとりあえず止まった。

 「れんっ……憐夜(れんや)……なのか?」

 更夜がそう尋ねると、少女は目を見開いてこちらを見た。更夜の手は震えている。


 「お兄様……」

 更夜に憐夜(れんや)と呼ばれた少女は更夜を見ると酷く震え始めた。


 「お兄様……?? えーと……」

 トケイは二人を交互に見て困りながら、最後になぜかスズに目を向ける。


 「トケイ、あたし見てもわかんないって。どういうこと? 三きょうだいだったんじゃ……? 更夜、妹がいたの!?」

 スズが驚きの声を上げ、更夜は辛そうな顔で目を伏せた。


 「……憐夜は望月ではないんだ。抜け忍になって、俺から逃げた」

 更夜は唇を震わせる。

 「だから……だから……」

 更夜らしくなく、先が続かない。

 「俺が自由にしたんだ……」

 更夜は壱のルナがいたため、残虐な事が言えなかった。


 本当は……自由にしてやりたかったが正解だ。


 更夜はあの時、彼女を逃がしてやった。今は亡き、すべての父、望月凍夜(とうや)は妹を逃がした更夜を罰するだけでなく、連帯責任という独自ルールにて兄の逢夜、姉の千夜にも、罰を与えた。


 抜け忍となった憐夜を、一番きょうだいを大事にしている逢夜に殺させるため、千夜を拷問し、逢夜に「憐夜を消すのが先か、千夜が死ぬのが先か」と脅し、殺しにいかせた。


 逢夜は気性が荒いが、優しい男である。

 更夜は逢夜が泣きながら妹を殺すのを震えながら見ていたのである。


 望月を抜けた妹を死後、望月に縛りたくないと、墓を立てた三きょうだいは彼女を望月から外した。


 憐夜はおそらく、三きょうだいに起こった事情は知らずに亡くなったのだろう。


 「お前は……絵描きになりたかったんだよな。夢を応援できず、すまない」

 更夜があやまり、憐夜は唇を噛みしめ下を向いた。


 「何を今さら……お兄様に会うとは思いませんでした。まだ、こちらにいらしたんですね」

 憐夜は冷たく更夜に言い放った。


 「……話しかけられたくは、ないよな」

 更夜はつぶやくと、さらに続けた。

 「もう、会うことはないかもしれない。会えて良かった」

 更夜の言葉に憐夜は一瞬だけ悲しげな表情をすると、頭を下げて去っていった。


 「更夜、これで良かったの? 彼女、ただの霊じゃなさそうだったけど」

 トケイが更夜に尋ねるが、更夜は何も答えなかった。


 「更夜……あの子、たぶん『K 』だよ。ルナについて知ってるかも……」

 スズも話しかけるが更夜の返答はなかった。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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