歴史神の隠し事4
リカは台所で作りたての味噌汁が入った鍋と三人分のオムライス、茹でたブロッコリーにバターコーン、付け合わせのトマトを見つけた。
三人分。
「私が子供になっていたさっき、作ってくれたんだ……。覚えてない……。本当に子供だったんだ」
「なんだ、これは。食べ物か?」
横から栄次が興味津々にオムライスを眺める。
「お料理だ。我は見たことなし。大陸のお料理か?」
さらに横からプラズマが顔を出す。
「そっか……栄次さん、プラズマさんは鎌倉時代と奈良時代なんだ……。オムライス知らないですよね。おいしいですよ。今はアヤのミルク作ってるから待っててください」
「先程、見たぞ。人肌だ。あったかいくらいが飲みやすいようだ。腕とか手に少し出して確認するのだ」
「乳は飲まないのか? 女は乳が出るのでは? 出ないのか?」
栄次とプラズマはミルクを作るリカを不思議そうに眺めていた。
「あちち……もうちょい冷やさないと……」
「アアァ!」
アヤの泣き声が大きくなる。
「ああ、待ってて……」
リカはオムライス一つをレンジに入れて温め、アヤの元へ走る。
アヤを膝に乗せて哺乳瓶を口に入れた。
「ヤバイ。この間、なんもできない! 動けないよ」
焦っていた時、サヨの声が元気に響いた。
「ただいまぽよ! 皆、大丈夫かなぁ?」
「サヨだ! サヨ、ちょっと栄次さんとプラズマさんにご飯、出してあげて!」
リカはミルクを飲ませながら叫んだ。
「えー? わかった! ちょいまち! 栄優サンはそこらに座っといて」
サヨの声が聞こえ、リカは少しだけ安心した。
「ん? ……栄優さん? え、誰?」
安心したのもつかの間、リカはすぐに初めて聞く名前に気がつくが、とりあえず後回しにする。
サヨは手早く味噌汁を温め、レンジに入れたオムライスを回収し、もう一つのオムライスの皿をレンジに入れた。
栄次とプラズマは子供らしく興味が尽きず、サヨの後ろをついてまわっている。
「お椅子に座ってなってば!」
サヨは栄次を抱えて椅子に座らせ、プラズマも抱えて横の椅子に座らせる。すばやく子供用フォーク、スプーンを机に置き、オムライスのお皿にトマトを乗せて机に置き、味噌汁もよそって横に置く。
「はい。オッケー! いただきまーす」
サヨが満足げに頷き、栄次とプラズマは美味しそうな匂いに喉を鳴らした。
「ど、どうやって食べる?」
「この食器はなんだ?」
二人はフォークとスプーンの使い方がわからないらしい。
「ウソ……子供用のこれ、逆に使い方がわかんないの? 箸のが良かった? フォークは突き刺して食べるんだよ。スプーンはこれ、オムライスを崩して食べたり……ほら、すくって口に入れる」
サヨの説明で二人はなんとなく理解し、慣れないながらも食べ始めた。
「美味だ! 美味だな!」
プラズマが感動し、栄次は黙々と食べ始める。
「うまい……」
思わず声が出ていた。
サヨが一息つくと、リカがアヤを抱っこして台所前の机にやってきた。
「哺乳瓶、からになった……」
「てか、リカはなんで元に戻ってるの? おじいちゃんは? ルナは?」
サヨが辺りを見回しながら尋ね、リカは困った顔で答えた。
「実は色々あって……そっちこそ、栄優さんって誰?」
「あー……ほら、あのひと」
サヨが軽く指をさした方向を見ると栄次そっくりの男が子供になった栄次の顔をじっくり覗き込んでいた。栄次は顔にケチャップライスをつけたまま、栄優を不安げに見返す。
「おお……ワシのチビッ子の時と同じ顔だぞ! 同じ顔だな!」
「どうなってるの?」
なぜか喜んでいる栄優を眺めつつ、リカは眉を寄せた。
「お互い、説明しよ」
「……だね」
サヨとリカはため息をつくと、それぞれの状態の説明を始めた。