抜け出せ! 2
メグに出会った。
メグは「いつも」の会話をした。
全く変わらない。
リカはてきとうに聞き流して壱の世界とやらにいく……。
「……また来ちゃった……」
リカはとぼとぼと公園から遠ざかった。夏の日差しはやや収まり、秋に近い雲が流れていく。
「こっちも……いつ夏が終わりかけたんだろ……」
商店街とは逆の住宅街へ進んだ。とんぼがリカの横をかすめていく。
「それで……」
リカは蒸し暑い中、住宅街の億物件近くで佇む男性を見つける。
「栄次さんがいるわけ」
「……? 今、俺の名を……」
栄次は眉を寄せたままリカに近づいてきた。
「栄次さん……私はリカです。助けてください……」
いつも時間経過はしているのに、状況と状態だけがなぜか巻き戻っている。栄次はリカを覚えていないし、きっと同じことを言うのだろう。
「……リカ、お前は何かの神なのか? 何の神だ?」
「知らないです」
「そうか、ではナオに……」
「ナオさんには会いたくない!」
一連の会話の中、リカは必死に言った。
「しかし……『ナオ以外に何の神かを知ることは……』」
「ああ……」
それを聞いたリカは何かを悟った。
……これは運命に食い込まれているんだ。
「なぜ、会うことを拒む」
栄次は戸惑いながらリカを見据えた。
「たぶん、私はナオさんに会う過程で変な男に斬られるんです」
「変な男だと?」
「はい、剣王っていう名前だったと思います……」
リカが出した名前に栄次の眉が上がった。
「剣王……か。それは不思議な予知夢だ。予知夢の話で良いのか? リカを斬るとは思えん……。そういう男ではないぞ……。ただの悪い夢を見たのではないか?」
リカは剣王という人物を知らない。栄次にハッキリそう言われると、自信がなくなってきた。
「いきなり斬りかかってきたような気がするんだけど……」
頭を抱えるリカをよそに、栄次は困惑しながら口を開いた。
「とりあえず、ナオに会ってみないか? 夢の話は正しいかわからぬ」
「……そ、そうですかね……」
二回目は違うかもしれない。
そういう期待があった。
とりあえず、リカはもう一度ナオの場所へ行くことにした。
しかし……。
リカは再び自室のベッドの上にいた。
時刻は午後十一時半。
「……はあ……公園にいかないと」
結果的にリカは剣王という男に斬られた。そして再度、向こうの世界に行く話をマナにされたところだ。
「まじか……」
ため息をつきつつ、リカはベッドから起き上がる。
昼間はセミが鳴いているが、夜は秋の虫の声が響いている。
リカはまた公園に立った。
滑り台の近くで、笑顔のマナがこちらに向かい、手を振っていた。