表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/316

ルナはふたりいる1

 挿絵(By みてみん)


 「栄優(えいゆう)さん……、栄優さん……」

 弐(精神、霊魂の世界)にある神々の図書館内。

 ある時神と「同じ顔」の男が本を片手に閲覧席で眠ってしまっていた。

 「栄優さん……お疲れなのですね」

 この図書館の館長、天記神(あめのしるしのかみ)は優しく笑う。

 天記神は中身は女性だが体は男性である。物腰の柔らかい、優しい青年だ。

 「歴史神になってまだ、日が浅い……真実に気づき、時神について調べ始めましたか。あなたはまだ知らないでしょうが、双子だったために生き別れた弟がいるのですよ。当時の双子は嫌われてましたからね……。私は伝えませんよ。自分で知った方がいい。眠っていると……子供みたい……」

 天記神は毛布を栄優にかけてやる。栄優は幼さがわずかに残る顔で眠っていた。

 「彼は亡くなってから神になった。若くして亡くなった。十八だったのよね……。大変だったわね。同時期に栄次さんが時神に……。栄優さんの家系は初めから神格化していた、人間の皮を被った藤原氏だったのかもね」

 天記神は栄優の頭を優しく撫でると立ち上がり、テレパシー電話を始めた。

 「……ムスビさん、ナオさん、時神が新たに増えています。神力の確認に向かってくださいませ。え? ナオさんが寝ている? 起こしなさい! 真っ昼間で歴史書店が開店してるはずでしょう! 店長が寝ててどうするの! ……全くもう……」


※※


 サヨはルナを連れてお墓参りに来ていた。

 「ほら、ここが先祖様のお墓。で、ルナの片割れの双子の子がここにいる」

 サヨは夕焼けで橙に染まる山々を眺め、流れていく桜の花びらを手にとる。

 「桜ももう終わりだね」

 「……お姉ちゃん……」

 ルナは不安げにサヨを見上げた。

 「なに?」

 「小学校って楽しい……かな?」

 「まあ、幼稚園とは違うけど、あたしは楽しかったよ! こないだピカピカのピンクのランドセル、買ってもらってたじゃん。脇に宝石みたいなキラキラついてるやつ!」

 サヨは優しく笑う。夕日に照らされたサヨの顔は新しい気持ちで輝いていた。

 しかし、ルナの表情は暗い。

 「おともだち、できるかな。ルナ……おともだちに話しかけられるかな……」

 「そんなこと考えたってしょうがないじゃん? 大丈夫だよ、たぶん。ほら、ママとパパとお兄が待ってる行こ!」

 「……うん」

 ……あのね、お姉ちゃん……。

 ルナは幼稚園の時に、友達ができなかったの。

 ねぇ、お姉ちゃん……

 聞いてほしいの。

 ルナは言葉を発することなく、言葉を飲み込んでしまった。

 ルナはお墓をちらりと見ると軽く頭を下げてサヨを追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 幼稚園で友達ができなくて心配なルナ…彼女、心配でしょうね、本当に。友達はいなくてもいても、となれるのはだいぶ大人にならないとできないですから…。でも、ルナちゃんには友達ができないらしいことを…
2023/04/16 14:25 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ