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選択肢4

 「う……」

 再びリカはあの深海にいた。辺りは暗い。人工的なタイルの床に寝ていたので、ゆっくりと起き上がる。蛍のような淡い光があちらこちらに舞い、深海魚が通りすぎた。


 そして……

 「結局、あなたはなんなの?」

 青いツインテールの少女にこう問いかけられる。


 それから……

 「私はワダツミのメグ……」

 青いツインテールの子がこう自己紹介をする。


 リカにはすべてわかっていた。何度もやっていた。何度も会話した。いままでは何一つ覚えていなかった。でも、今は今までの会話を思い出すことができる。


 「出会って早々なんだけど、『(いち)』の世界に行くのは待ってくれませんか? あ、えーと、私、違う世界から来ましたが、()の世界の門に……」


 「……?」

 リカが矢継ぎ早に話すのを聞きながら、メグは眉を寄せ、首を傾げた。


 「あなたは()から来たの? ならば……」

 「待って! 私、時神には会えないの! 違う方法を考えたいの!」

 先へ先へ話すリカにメグはさらに眉を寄せた。


 「どういうことなの? とりあえず、向こうに返してあげる。弐と伍の境界へ連れていく」

 「だから待って!」

 必死のリカにメグは落ち着かせようと言葉を発した。


 「大丈夫。帰れるから」

 おそらくメグはリカを安心させようとしただけだ。実際にはリカが「帰れないプログラム」とやらがあって、帰れないはずだ。


 もうリカは半分理解していた。あの境界へ行く部分は「運命」に組み込まれている……。


 メグはリカを浮かせると、深海から宇宙のような場所へ飛んでいった。


 なんだかんだ言う前にリカの頭で記憶だと思われる、ネガフィルム状のなにかがハサミのようなもので切り刻まれはじめた。シュレッダーにかけたような感覚。


 これは何をしているのか。

 弐の世界とやらを進んでしまっているリカは戻ることをあきらめ、この現象について冷静にメグに尋ねてみた。


 「ねぇ、このネガフィルムがバサバサ切られていくような感じはなんなのかな?」


 「……それはあなたが向こう(伍)の人だから、この世界の記憶を世界がなくそうとしてる。こちらの世界の内容を向こう(伍)に持ち込むのは世界が許さない。アマノミナカヌシと『ケイ』が許さない。弐から壱へ行っても弐の記憶は消去される仕組みなはず」


 メグの言葉にリカは頭を捻った。


 「おかしい……私は記憶を失っていない」

 「……」

 リカの独り言にメグは弐の世界を進むのをやめた。


 「どういうこと?」

 「言葉通りだよ。記憶はある。こちらから壱に行った時、あなたの名前も場所も状況も全部頭にあった。私はね、何度もあなたに会ってる」

 リカは必死にメグに言い放つ。

 表情のあまりないメグは珍しく困惑した顔をした。


 「それはおかしい。弐から壱に行っても目的しか覚えていないはず。例えば私が『時神のアヤに会うといい』と言えば、その言葉のみしか覚えていないはずなの」


 「……おかしいんだ。そう、じゃあ、あなたは私を時神がいるあの世界に捨てたってこと。時神に頼むといいとか言って……」

 リカはメグを軽く睨んだ。


 「……なにを言っているかわからないが、それは例。例えばと言ったはず」

 メグはなぜ、リカがそこまでつっかかってくるのか、わからなかった。当然だ。リカは何度もやっているが、メグは未来のことなのだ。


 「じゃあ、予言してあげる。あなたはこれから弐の世界の門とやらにいく。そして私が帰れないプログラムが書かれていると言い、時神に会えば良いと言う」


 「……まあ、私はこの世界からは出られないから、伍に入れる結界で弾かれるのならば、壱に送るだろう」

 メグは宇宙空間のネガフィルムが絡まる世界を背にし、リカにそう言った。


 「じゃあ、わかった。もう壱に行く以外なさそうだから、壱に連れていって。あとは私がなんとかする」

 「……そう? では、壱へ送る」

 メグは戸惑いつつ、リカを連れて引き返した。


 ……次は……時神アヤさんには会わない。そしてその先にいる「サキ」だけは絶対に会ってはいけない。


挿絵(By みてみん)

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